第9話 サイン

♠♠♠


「——ここなんだが」

「ここって……」


 パパに手を引かれ辿り着いた場所……見覚えのある看板と入り口。

 クラブなんちゃら……さあやの職場じゃん! 留守番してないのがバレる!


「ここ、入るの?」


 パパは微笑んでコクリと頷く。


「ホントにここ?」

「ここ」

「ぜったい?」

「どこでも付き合うと言ったろう?」

「言ったっけ……言ったかも……」

「では行こう」


 手を引かれ、後ろめたさ満々で店内へ入ってしまった。すぐに黒服の店員がやってくる。


「あ、お疲れ様です」

「おいおい、私は客だよ?」

「し、失礼致しました。いらっしゃいませ! ご指名はいかがなさいますか?」

「さあや君で頼む」


 げ!


「かしこまりました。では、お席までご案内致します」


 店員に案内され、フロアの奥のテーブル席に着く。


「ドリンクはいかがなさいますか?」

「悪いが今日は酒は遠慮したいんだ。車で来ているし……」


 パパがオレの顔を見ながら言う。店員もオレの顔を見て何か察したのか、小さく「マジすか」と呟いた。


「ウーロン茶とコークを。あと適当な菓子類を貰えるかい?」

「か、かしこまりました」


 黒服はオーダーを受け、すぐに飲み物と食べ物を用意して去っていった。


「なぁ、オレってミセーネンだからここ入っちゃダメって言われたんだけど」

「そうだね。事が知れたら私は罪に問われるし、店も営業停止になるかもしれない」

「メチャクチャやべーじゃん!」

「そうなんだ。だから秘密で頼むよ」

「えー……」


 パパは余裕の笑みで茶を口に運ぶ。オレもシュワシュワのコークって飲み物をストローでちびっと飲んだ。ウマー!

 もう店に入っちゃったんだ。なるようになれと思いお菓子も堪能しようと手を伸ばす。その時、さあやの姿を遠目に確認して手を引っ込めた。見つからないよう俯いて体をできる限り縮こませる。さあやは指名されてるから、当然このテーブルに近づいてくる。


「ご指名ありがとうございます。さあやです……あれ、指名したのって楓パパ?」

「あれ? 知り合い?」


 思わず顔を出し、さあやと目が合った。二人して「あ」と声が出る。


「……あんたなにやってんの?」


 キレてる!


「えっと……パパかつ?」


 さあやの目が細く鋭くなっていく。完全にプッツンしそうな顔だ。背後から赤黒いオーラが見えだし、怒りに暴走したスモックが今にも誕生しそうだ。


「さあや君」


 カエデと呼ばれたパパがソファをポンポンと叩き、さあやに座るよう促す。さあやは我に返り、縄張り争いに威嚇する獣染みた顔から元の顔に戻る。少し恥ずかしそうに顔を伏せ、パパの隣、オレの対面に座った。


「失礼しました。改めて……さあやです。今日はよろしくお願いしますね。お連れ様も」


 ジトッとした視線を向けられ、背中にゾクリと寒気が走る。オレは顔を背け、だたストローを咥えてコークにコポコポ息を送った。


「お久しぶりですね、楓さん」

「一ヶ月ぶりかな」

「出張はいかかでした? 大変だったでしょ」

「なぁにそうでもないさ。北海道は食べ物がおいしくてね。これから夏も本番になっていくし、もう少し居てもよかった。しかし、あのまま居たら海鮮や野菜の煌めきも、馥郁な大地も、肌を撫でる清涼な風も無味で色褪せたものになっていただろう。君に会えない日々がそうさせるのさ」

「ふふっ嬉しい。じゃあ私も楓さんと北海道を感じたいから、野菜スティックとか頼んでもいい?」

「構わないよ」

「はーい」


 怒りが消え去ったように楽しそうな会話を聞く。オレの背中の寒気も消え去り、さあやにゆっくり視線を戻した。

 さあやの濃い化粧はあまり好きではなかったが、なるほど服と合わさると映えて純粋にキレイだと思えた。まぁそれでもすっぴんのほうがいいと思うけど。

 服はスリットのある左右で丈の違う赤のドレスだ。タイトなサイズでさあやの細いラインがよくわかる。胸はある程度露出があり谷間も見える。個人的にはもう少し控えたほうがいいと思う。両腕には薄手の黒いフィンガーレスのグローブをしている。二の腕までの長いグローブだ。以前、一緒に風呂に入った際に見えた右腕の傷をすっぽり隠していた。髪型は後頭部の少し上で纏め上げ、下ろしてる時と違って快活な感じだ。


「それで、お連れ様とはどんなご関係ですかー? 留守番してろって言ったのにー」


 会話を眺めていたら、ぐりんっとさあやの顔がオレへ向いた。目がまったく笑ってない。思わずストローに思いっきり息を吹き込んでしまった。コークがゴポゴポ溢れる。


「おおおオレはその——」

「あゆ君は囚われの城から抜け出そうともがいていてね。私はそのほんの手助けをしたまでさ」

「そんなお姫様みたいなもんじゃないですから」

「人知れず困った人を救いに行きたかったんだろう? 魔法使いの使命だものね」

「魔法って……あんたまさか」

「見られちった! てへっ!」


 あえておちゃらけてみる。さあやは「ふー……」と長い息を吐いて眉間を摘まんだ。あぁ、また魔力が大きくなってる……。


「楓さん。最近はいろんな手品グッズがあるみたいですし、本気にしないほうが……」

「さあや君、君も知っていたんだね。隠す必要はないさ。喜ばしいことじゃあないか。君と私は、よし子ちゃんとすみれちゃんのポジションを賜ったわけなのだから」

「だれ?」

「さぁ?」

「使い魔はいないのかい?」

「ツカ?」

「使い魔だよ。カブやポロンみたいな。最近の作品は小動物のような見た目のかわいい妖精だそうだが」

「かわいい動物……いるいる! 【タオパ】って細長い四足の生き物で足がものすごい短いんだ。身体がスポンジみたいで撫でたり揉んだりすると『パオン』って鳴いておっきくなって、怒ったりビビったりすると『ピエン』って鳴いて逆に小さくなるんだ。一度おっきくなるとビビらせるか満足するまで撫で続けないと元の大きさに戻ってくれない、かわいいヤツなんだ」

「ほう……魔法界の生物か」

「なんとなくフェレットとか想像したけど……生態がなんか……ヒワイ」

「ヒワイってなに?」

「というか、あんたの魔法って鳴き声から取ってんの? こっちの流行語まんまだから嘘くさいんだよね。すぐ廃れるから変えたほうがいいよ。なんならもう廃れてるし」

「魔法のコトバはなんだっていいんだ。まぁある程度連想できるのが形にしやすいけど」

「じゃあ傷を治したアザマルって魔法は?」

「それも動物。【アザチュー】って水辺にいるでかくて毛深いヤツなんだけど、いつもだらだらの唾液に傷の再生促進作用があって、薬草とかと調合すると高濃度の薬になるんだ。あのネトネトが美容にいいとかで、体に塗りたくるとメチャメチャ気持ちーぞ!」

「ヒワイ」

「だからヒワイってなに!?」

「あんたの世界ってもっとまともな動物いないの? ファンタジーらしいの。例えばドラゴンとかさ」

「なにそれ?」

「こんなの」


 スマホって便利板を叩き、画面を向けられた。翼の生えた動物ががおーって威嚇している。


「あーいるいる似たのが。【ハト】ってやつ」

「いるんだ……ってか鳩って……火とか吐く?」

「火? 吐かない吐かない。こいつら子供は地上で走り回ってるけど、大人になると翼生やして飛び回るから渡りの時期は糞害がヤベーんだ。でっけーうんこ落としてくるから増えたら駆除対象だよ」

「夢―。死んだー。じゃあこのグリフォンとかピクシーとか——あっ」


 オレらのやり取りを微笑ましく眺めているパパに気付き、さあやはさっきまでのスマイルに戻った。パパは「ふっ」と軽く息を漏らして首を振る。


「構わないよ。ここからは普段通りの君が見たい」

「あはは……ごめんなさい」


 さあやは長めに息を吐き、スマイルをやめて凛としたいつもの顔になる。自然に見えたけど作り笑いだったみたいだ。


「あー笑顔って疲れる」

「自然体が一番さ」

「楓パパはいつもクール笑顔じゃん」

「大切な人の前だけさ。今みたいにね」

「もー」


 ぽんぽんと言葉が飛び出す。明らかに客と店員の雰囲気ではなかった。あんな楽しそうに……自分の中で魔力の高まりを感じる。なんだこの気持ちは。


「二人はどんな関係なんだ?」


 ズバッと聞いてみた。二人は特に表情を変えない。


「一言で表すのは難しいな。私たちの始まりから語ろうか。あれはそう……黄昏時の、地を焦がす夏の暑さの中だというのに、真冬の寒空の下にいるように震え、雑多な足音に怯えていた。星明り一つも見失った迷子の子猫のように。瞳を交わし、そして奪われていた。心の奥底にある、存在しなかったはずの——」

「楓パパは銀次ママの奥さんなの」


 話の終わりを待たずさあやが答えた。パパは構わず語り続けている。


「ママの……奥さん? ……パパが?」

「そう」

「女なの?」

「そう」

「パパが?」

「そう。ちなみにこの店の所属グループ会社のお偉いさんね。ってわかんないか」

「わかんない……ぜんぶ」


 確かに楓パパは全体的に細い。肩幅も男と言うには狭く、キレイ目だと感じた顔も今思えば中性的だった。


「——そうして私は言ったのさ。幸福とは、愛とは掴み取るものだと。失ったのなら手繰り寄せよう。持っているなら差し出そう。そうしてさあや君は、私の手を掴んだのさ」


 楓パパはまだ語っていた。


「ふふっ……どうだい? 簡潔に話したが、私たちの輝きを少しでも感じてくれただろうか」

「あぁ、おっさんじゃなくておばさんだったんたな」

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

「バカ! 失礼でしょ!」

「ふふふ……事実さ。老いることも噛み締められる幸福の一つ。そしてあゆ君。君との出会いもまた巡り合わせ……運命は、私に二人も祝福を運んで来てくれた。神の御許へ行く際は菓子折りを持参せねばならないな。ふふ……だが、神は試練も与え給う者」


 楓パパが温和は笑みを溢しつつ、しかし鋭い視線を店の入り口へ向けた。オレも視線の先をなぞる。

 すらっと背の高い女が一人と、楓パパと同じような服装の男三人が入店したところだった。オレたちの隣のさらに隣のテーブル席に案内され男三人は座った。女は男たちに小さく手を振りながらフロア奥へ向かい、更衣室だろう部屋へ入る前にオレたちのテーブルを見て、人差指の先をくるくる。ウインクしてから部屋へ消えていった。


「リオさん、今日同伴だったんだ」

「ヘルプを頼まれていたね」

「うん。でもパパの本指名だし」

「気にする必要はない。リオ君も私に気付いたからサインしたのだろう。ボーイには私から伝えておく。彼女から多く学び、盗み、いつか頂を奪い取る様を見せてくれ」

「そんなんじゃないから」


 話についていけず二人の顔を交互に見ていると、リオと呼ばれた女が部屋から出てきた。肩を大きく露出させた青が基調のドレスだ。さあやのドレスよりも丈が短く膝が見えている。腰かけたら向い席だとパンツ見えるんじゃないか?

 踵の高い靴でカツカツ音を立て歩き、さあやを見ながら両手の拳を擦り合わせている。さあやは理解したのか頷いて「ごめんパパ」と言い残して席を離れた。一度黒服の店員に話しかけ、何か受け取ってからリオという女と合流し、男客三人のテーブル席へ着いた。


「だれ?」

「リオ君はここのナンバーワン嬢さ。気さくないい子だよ。そしてさあや君の師匠でありライバルだ」

「ライバル! いーな、そーゆーの!」

「あゆ君にはいなかったのかい? 競い合い友情を育むような誰かは」

「んーマホは違うしノーラも……あいつだな。【ヨル】って奴で王子なんだけど、立場関係なく話してくれたし、魔法も上手いし剣もなかなかでよく一緒に修業したんだ。ま、剣はオレのほうが上だけど!」

「ほう、魔法の国の王子様か。好きな子だったりするのかい?」

「スキ? んーまぁスキだよ。いい奴だ」

「ふふ……野暮だったかな」

「それよりさ、さっきのなに? 手をこう……」


 楓パパにリオがやっていたジェスチャーを真似て見せる。


「両手の爪を擦り合わせるサイン。冷たいおしぼりを持ってきてほしいという意味さ。今日も猛暑日だったからね。他にも両手で絞る動きをしたら温かいおしぼり。丸を作ったら灰皿。L字を作ったらグラスの追加。まだまだたくさんある」

「へーこんな手の動きだけで伝わるんだな」

「あらかじめ決めておいたサインさ。店により変わるだろうが、お客様の前でおしぼり一丁! ……なーんて言ってられないからね。少しでも不快ととられることは避けるべきさ。守るべきルールは多いが、このクラブは比較的軽い。お客様との距離が近く、キャストたちも素でいられる時間が多いだろう」

「きゃすとって?」

「店の従業員のことさ。ここでは主に女の子たちのことだね」

「ふーん……確かに堅苦しい感じはないな」


 周りの席の客や女たち——キャストを見ても笑顔が多い。客の中には沈んだ顔の奴もいるけど、相談に乗っているキャストの顔は慰めの微笑みや励ましの笑顔だ。もちろん愛想笑いとかも混じってるだろうが、冷たさは感じなかった。

 だからものすごく目立って見えてしまう。接客するさあやの顔が強張っているように感じるのだ。さっき楓パパに客対応した時の笑顔とも違う。対面する客たちは何も気付いてないようだが、全体的に小さい。表情とか、話し方とか、仕草とか……。


「怯えているように見えるかい?」


 楓パパが核心を突き、「そう!」とオレはパパを指差した。


「あゆ君、なかなかの観察眼を持っているね」


 楓パパは少し身を屈め小声で言った。オレも同じように身を屈める。


「なにに怖がってんの?」

「それは……私にもわからない」


 一瞬だが、楓パパの視線が下を向いた。しかし間を置かず口を開く。


「見る限り男性が怖いわけでもないだろうしね」

「ふつーに話してるよな」

「そうなのよねんー……」


 いつの間にか隣にあった巨大な何かに慄き「ひゅえっ」と変な声が出てしまった。ワンテンポ遅れてから仰け反り、背もたれに身を預け深呼吸。恐る恐る見ると、未だに見慣れないでかい顔があった。


「なんだ銀次ママか……岩壁かと思った」

「あら~じゃあ二人で夫婦岩にでも加工してもらおうかしらん」

「久しいね、銀ちゃん」

「楓さーん! 二カ月ぶりねん! 会いたかったわ~ん!」

「ふふ、メールや電話、ラインでのやり取りもいじらしく、想像の中で膨らんでゆく君を日々の糧にしていたが、実物に勝るものはないと改めて感じたさ。私の中で育った君は、まだまだ小さかったようだ」

「確かに。今より今朝見た顔が二回りくらいでかかった気がする」

「それはただのム・ク・ミよ~ん!」


 大口開けて笑っているとさらにでかい。


「ハルキちゃんもぐっすり寝てるから様子見に来たのよん。すぐ戻るけどねん。店内カメラでバッチシ未成年連れ込むところ映ってるわん。これはお仕置きが必要ねん」

「ふふ、楽しみにしているよ」


 銀次ママは店の責任者だそうだが、店内に現れても変な空気にならず、店員もお客も気にしてないようで珍しいことではないみたいだ。店全体の雰囲気が柔らかいのは、たぶん銀次ママの手腕ってことなのだろう。


「それでさ、さあやが怯えてる理由って? 銀次ママも知らねーの?」


 オレはまた声を潜めて尋ねた。


「そうねん……」

「仕事が嫌だったりすんのかな? さあやってこの仕事長いの?」

「一年くらいよん」

「へー。その前はなにやってたんだ?」

「それはん……あたしたちも知らないのよん」

「さあや君が怯えているのは今に始まったことではないが……」

「そうなの?」

「まぁそれはそうねん。気付いてんのあたしと楓さんくらいだと思うけどん」

「今日の彼女は普段以上に怯えが見える。それは想像がつくがね」

「なんで?」

「その、ハルキという赤ん坊の件だろう。銀ちゃんがくれたメールでは、さあや君が不審な男から無理矢理預けられたとのことだが?」

「あぁ、クソ兄貴の話か。そっか、勤め先がわれてるからそいつが来るかもって思ってビビってんのか。でも、元々ビビってたって理由も気になんだけど——」


 理由を尋ねようと思ったが、銀次ママと楓パパの顔を見て言葉を呑んだ。二人ともオレの顔を凝視して口が半開きだ。


「兄?」

「兄貴から預かったって言ってたぞ」

「さあやが、ホントにそう言ったのん?」

「うん」

「名前は言ってた?」

「えっと、確か【シイナ】って……」


 何かを示し合わせたように二人が目を合わせる。再びオレの顔を見て、楓パパに手を優しく握られた。


「あゆ君。君はどうやらさあや君の信頼を勝ち取っているようだ」

「それはパパもママも同じだろ?」

「少し違う。さあや君は私たちを慮るばかりに自身の思いを言えないでいる。過去のことや未来のことも……私たちは彼女の言葉を待つしかないが、君は一歩先を歩いている」

「そうかな? でもオレ会ったばっかだぞ?」

「それでもさあや君は話した。そして君を未だ身近に置いている。一度出会ってそれっきりの人間とは違う。君に何かを感じたからだ」


 オレに感じること……一応危険から守った形になるから、恩……なのか?

 もしくはオレが異世界人で、この世界のことなんも知らないから?

 それとも……マホ?


「それにさあや君は基本内にこもりたがる心の持ち主だ。感情を出さないわけではないが、必要以上に言葉にはしない。君にしたような振る舞いは私たちにはしない。しかしさっきの会話でもわかるが、君はさあや君を困らせ、怒らせ、振り回している」


 耳が痛い。考えなしに行動したり、喋ったり、マホにもよく怒られていた。


「それが信頼なのさ。歳が近いからということもあるだろうが、君には感情をぶつける。不満を言う。怯えもなく、言葉を選ばない。気兼ねのない心の根を、君が掴んだのさ。まだ端っこだが、辿って行けば彼女の想いが見えてくる」

「あたしたちも力になりたいのん。でも、そう思えば思うほどあの子には枷になっちゃうみたいでねん。ふとした時、言葉もなくどこかへ行っちゃうような気がするのよん。働く場所を作ってあげてちょっと強引に引き留めてるんだけどねん」

「君が家に帰るまでの間で構わない。どうかさあや君を支え、助けになってほしい」


 家に帰るまで……そういえば、旅行に来てるって設定だった。

 楓パパの握る手が強くなる。同時にオレの胸に、なんだか熱いものが注ぎ込まれた気がした。 


「あったりまえだ! 任せとけ!」


 マホにはいつだって助けられてきた。今度はオレがマホを……さあやを助けるんだ!


♠♠♠

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