【SOS】

♣♣♣


 体は資本。心も資本。

 ただいま二二時をまわりました。今宵も始まります【ゼロのグチ金】。ラジオパーソナリティの【グッディ浜岡】です。

 吊革とお友達のあなた。ラップしたおかずと睨めっこのあなた。お疲れ様です。

 月から金、溜まった鬱憤吐き出して、不満をゼロにしてから煌めく週末を迎えましょう。時に共感し、助言し、物申していきます。

 今週もたくさんのおハガキ届いてますねー。それだけ世界にはグチが溢れているってこと。いつかゼロにしていきたいですねー。そしたら番組終わるかーあはは。

 悪口不満自虐、些細な相談でも結構です。抱え込まずお便りくださいねー。軽いも重いも受け止めて、素敵なナンバーで助けになれればと思います。

 おハガキ紹介された方は、大きな口と青筋がチャームポイントのカエル【ガマぐッさん】のぬいぐるみをプレゼントしちゃいます。番組オリジナルキャラクターなんでね、気になる人は公式HPやSNSチェックしてねー。

 それでは巨大ガマぐっさんのガマ口に手を突っ込んで〜〜っと。

 ハイ! 今夜の一枚目はこちら! ラジオネーム【ポメぴ】さん。早速読んでいきましょー。


「こんばんはグッディさん。いつもラジオ楽しみにしてます」


 こんばんはー! ありがとう!


「グチの前に質問です。グッディさんは自分の好きなところたくさん言えますか?」


 お! 僕に興味があるリスナーは貴重だねー。調子乗っちゃいますよーイイかなー? 

 好きなところね、いっぱいあるよー! やっぱりまず声だね! 芸人だけどイケボが浸透してラジオDJに抜擢されたしね。

 それから顔ね! 個人的にはイケメンだと思うよ。なんせ目と眉の間が狭いからね。狭いと言っても眉尻の部分なんだけどね。テレビの仕事が全然来ないのは世間のセンスが少し古いからだね、間違いないね。いいね? 

 後はねー……え、もういい? あ、そう。


「どんなグチもさらっと受け止めるグッディさんは、きっと好きなところも好かれるところもたくさんあるんだと思います」


 いやー照れますなー。


「私は……」


 ……えっとすみません。一気に読みますね。


「私は自分の好きなところ、一つもありません。本当に見つかりません。

 いつもやることが裏目に出る。たくさんの人たちを私の勝手に巻き込んで、取り返しのないことをしてしまいました。謝りたくてももう遅くて、ちょっと考えればわかることなのに、選択を間違えてしまう。

 いつも押し潰されそうで、いっそ消えてしまいたいけどそれもできません。忘れて、無かったことにして、やり直すことだって許されません。償う方法も思いつきません。

 どうすればいいかもわかりません。でも、教えてほしいわけでもありません。ただ、もう私の声は絶対に届かないから、この電波に乗せて少しでも多くの人に謝りたかったんです。ごめんなさい、なんのことかわからない人ばかりだと思います。

 私は許されないことをしました。本当にごめんなさい。私は罰せられるべき人間です。それなのに誰からも咎められることもなく、今日まで生きてしまいました。死んでも許されないでしょう。でも、もうそれしか——」


 この先は読みません。辛いことと番組に対する謝罪なので。

 正直ね、リスナーさんのほとんどは「なんのこっちゃ」って感じだと思います。僕もそう! イタズラのお便りもよく来るからね。

 でもね、ホントに辛い思いをしてる人だって当然いるし、どんな言葉も聞いて答えるのがこの番組だから全力で受け止めてくよ!


 【ポメぴ】さん! 君が君の好きなところをなに一つとして無いと言うなら、僕の君の好きなところを見つけていくよ!

 まず、字が丸っこくて可愛い! 君は女の子だね。バレたくなかったならごめん。でも性別は僕だけでなくリスナーさんたちの共感にも大事な要素だ。許してね。

 それにこのハガキはとても綺麗だ。イタズラに関わらず悲観的な内容のものだとね、涙で字が滲んでたり乾いた跡があったりで演出されていることが多いんだけど、君のはそれが一切無い。だから、君はとても真面目な子だと思うんだ。

 それから謝罪のことだけど、なんのことなのか、どんな人に対してなのかが全く書いてない。本当にただ謝りたいだけで、自分勝手だと思うよ。でもさ、裏を返すと真意がわかってしまったら困る人がいるんじゃないかな、とも思うわけ。【ポメぴ】さんのしたことに相手は気づいてないとか、ずっと昔のことで相手は蒸し返されたくないだろうとか。謝りたいけど、相手に迷惑かけたくない。そんな君は、ドが付くほど臆病だけど、同時に優しい気もするな。もちろん、君の過ちがなんなのかによるだろうけどね。


 どうかな?

 僕の勝手な妄想だけど、君は可愛くて真面目で優しい。このハガキだけで君の好きなところを三つも見つけたよ!

 僕は君が好きだ。だから消えたいなんて悲しいことは言っちゃダメだ。いいね? それでも落ち込んじゃうなら、これから言うことを試してみて!

 君の好きなところじゃなくて、君が好きになれることを探そう!

 散歩でも読書でも動物愛でるでも、もちろん恋愛だっていい。些細なことなんでもいいからさ。そして好きになれたら、一生懸命やってみて! やり切ったら鏡を見てよ! 疲れてても汗や泥に塗れてても、映った君は綺麗なはずさ!

 そしていろんなこと好きになって、やり続けて、その先で鏡に映っているのは君だけじゃない。好きなことをがんばる君を、好きになった誰かがきっといるんだ。振り返って話をしてさ、改めて鏡を見なよ。たくさんの人と映る君を、君はきっと好きになる。

 好きなことなんて見つかりっこないって? それは嘘だよ。ハガキに「いつもラジオ聞いてます」って書いてあるもん。君はこの番組が好きだ。極論僕のことも好きだよ! そして必死にハガキを書いてくれた君を、僕は好きになった。ほら、さっそく鏡に一人映ったよ?

 毎週この番組のリスナーになる。他に見つからないならまずこれだ。約束だよ!


 それからリスナーのみんなにもお願い!

 人込みの中のSOSは声にならず埋もれていってしまうもんだ。でも、聞こえなくてもきっと発信されている。受け取ったら、ちょっとだけ気にかけてみてよ。誰かの中に飛び込むのは怖いかもしれないけどさ、「どうしたの?」って声をかけてみてほしい。手を引いたら、自分が沈んだ時に引っ張り上げてくれる人になってくれると思うんだ。

 勇気はおすそ分けしていこうぜ!

 そんなわけで今日の一曲目はこれ! 


【オブデメキン/cheap burn】。


♣♣♣

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