第266話 畑と堆肥
「よし、場所はこの辺りにするか」
「そうですね、この辺りならお客様の邪魔にはならないと思いますよ」
キャンプ場のお客様対応はみんなに任せて、ソニア、イドとウドと一緒にキャンプ場の結界の柵がある一番奥へとやってきた。
この辺りなら、普段お客さんがテントを張ることはないから邪魔にはならないはずだ。それに太陽の光も当たる場所だから、日照時間も問題ないだろう。
「初めは簡単な野菜から初めて、少しずついろいろな種類の野菜を増やしていくといいと思いますよ」
「ああ。土質の問題で野菜が育たないような土地もあるらしいから、まずはすぐに収穫できる野菜を育ててみるのがいいだろう」
「ふむふむ、なるほど」
イドとウドは昔住んでいた村で農業をやっていたから、いろいろとアドバイスをもらえそうだ。サリアもエルフ村で農業の手伝いをしていたそうだから、いろいろとアドバイスをもらってきた。
「エルフ村のみんなにも聞いたけれど、畑を作る時は土魔法を使えるらしい。最初に畑を作るのは土魔法で基を作っておいて、最後に鍬で耕せばそれでいいみたいだな」
このキャンプ場の整地を行った時と同様に土魔法を使うと時間がかなり短縮できるらしい。ただし、一番最後の仕上げは自分たちで畑を耕した方が野菜は良く育つらしい。鍬で耕した方だ土が柔らかくなるようだ。
「それじゃあソニア、早速これくらいの広さで頼むよ」
「ええ、任せてください」
ソニアが地面に両手を付けるとすぐに地面がうねうねと動いて、あっという間に元々この場所に生えていた雑草がここからここまでと俺が指定した長方形の場所から離れていって、地面が掘り起こされた。
……相変わらずこの世界の魔法はとても便利だな。このキャンプ場の整地や雑草を刈るのもソニアの土魔法と風魔法のおかげだったんだっけ。
「さすがソニアだな」
「これくらいお安い御用ですよ」
胸を張ってドヤるソニア。実際のところ、風魔法と土魔法を使えるソニアがいるととても助かっている。
「よし、あとは任せておいてくれ」
「ああ、頼むぞウド」
ソニアの土魔法で軽く地面を耕してから、鍬で耕していく。鍬で耕す役についてはウドが自ら買って出てくれた。
「ふん!」
ウドがその4本の腕で2本の鍬を器用に持って畑を耕していく。4本腕なのもそうだが、相変わらずすごい力だ。ウド一人に任せておいたらすぐに終わってしまいそうだな。
「よし、それじゃあ畑の横のこの辺りに穴を頼む」
「ええ、任せておいてください」
ソニアに頼んで、畑の横に土魔法で2メートル四方の大きな穴を掘ってもらった。
畑を作るのと同時に堆肥もこのキャンプ場で作っていこうと思っている。堆肥とは落ち葉や枯れ葉や家畜のフンなどの有機物を元に土の中にいる微生物が分解、発酵したもので、土壌に栄養を与える効果があるらしい。
堆肥を作るのにも時間が掛かるようだから、最初に野菜を育ててみる時にはストアの能力で購入したものを使用する予定だ。堆肥の材料は落ち葉とキャンプ場の料理を作る時に出てくる生ごみを使用する植物性の堆肥となる。
動物の糞などを使用して作った堆肥は動物性堆肥と呼ばれている。魔物であるアリエスの糞を使用することも考えたのだが、このキャンプ場では料理を扱っているし、アルエちゃんを介してだが俺たちと意思疎通ができるアリエスにとって、自分の排泄物を使うのはあまり良い気がしないと思ってこちらの植物性の堆肥にしてみた。
「ええ~と、こんな感じで良いのかな?」
「はい、雨が入らないようにしてもらえるといいと思います」
ソニアが掘ってくれた穴に雨の水がしみ出さないように2重の巨大なブルーシートを入れる。ここに土を少し入れたあとにキャンプ場の森にあった落ち葉を入れて、キャンプ場で出た生ごみを入れていく。それをひとつの層として、これを何重にも重ねていく。
さすがにまだ生ごみと落ち葉はそれほどの量がないので、少しずつ層を増やしていく予定だ。そして雨が入らないようにその上からブルーシートをかける。たまにそれを混ぜながらジョウロで水を撒いて、数か月熟成させると堆肥が完成するらしい。
堆肥があると土をフカフカにして排水性や通気性を高め、土に栄養が与えられたり水分保持能力が向上して植物が育ちやすくなるようだ。もちろんストアの能力で堆肥を購入することも可能なのだが、こういうのは多少手間でも自分たちで作っていくことが面白いのである。
それにキャンプ場で料理をするとどうしても出てしまう生ごみを再利用することもできて節約にもなるからな。こちらの堆肥ができるのまで結構な時間が掛かってしまうが、のんびりと長い目で見ていくことにしよう。
「よし、まずは小さいながらも畑ができたな」
ソニアとウドとイドのおかげで、たった一日で小さいながらもキャンプ場に畑ができた。せっかくなら異世界の野菜を育ててみたいので、今日の夕方に馬車で街へ行く時アリエスとアルジャと一緒についていって、苗や種を購入してくるとしよう。
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