第264話 帰るまでが大会


「ふむ、うどんですか。これはまたいろいろとアレンジできそうな料理ですね」


「ええ。のせる食材やつゆの味でいろいろと違ったものを作れますからね。うどんがのっているレシピ本もあったと思うので、ぜひ試してみてくださいね」


 相変わらず執事のルパートさんは初めて見るカレーうどんという料理に興味津々のようだ。


「ユウスケさん、こちらのカレーうどんという料理もとてもおいしいですね!」


 ルパートさんの横にはエリザさんがいらっしゃる。自前の大きなエプロンをして、カレーうどんが跳ねて服が汚れないようにしている。


「気に入ってくれたようでなによりです。昨日の夜は楽しんでいただけましたか?」


「はい! みなさんとても良い方々でした。面白いお話もいっぱい聞くことができましたし、とても楽しめました! それにおいしいお酒までいただいてしまって……」


「ああ、ドワーフのみんなは大勢でおいしいお酒を飲むことがなによりの楽しみみたいですから、彼らの言葉通り気にする必要はありませんよ」


 結局ダルガたちは昨日渡したちょっと高級な酒を昨日中にみんなですべて飲み干してしまったらしい。豪快なところもドワーフのみんならしいっちゃらしい。


「それに皆さんみたいな綺麗な女性たちと一緒に話ができて、他のお客さんたちもとても楽しそうでしたからね」


 昨日の宴にはエリザさんの護衛部隊の女騎士の方々も参加してくれていた。最近では結界の能力をだいぶ信用してくれたみたいで、キャンプ場内では武装を外してくれるようになった。


 部隊長のべレーさんを含めて、隊員の女騎士の方々は綺麗な人がとても多い。男たるもの、綺麗な女性たちと飲む酒はより一層うまいものなのである。


「まあ、ユウスケさんはお上手ですね!」


「いえいえ、本当にお世辞ではないですよ。楽しんでいただけたようで何よりです」


 これについてはこのキャンプ場にいる男性陣が全員同意してくれそうだけれどな。


 エリザさんも普段は身分のこともあって、キャンプ場のお客さんとそこまで交流する機会がなかったみたいだが、今回の料理大会で他のお客さんとより仲良くなれたようで良かったな。


 ……もしも第一王子のレクサム様も一緒にいたら、もっと面倒なことになっていただろうから本当に危ないところだった。レクサム様を無理やり連行してくれたクラスタさんたち護衛騎士の人たちに感謝だな。






「それではユウスケさん、本当に楽しかったです」


「楽しんでいただけて何よりです。賞品の寝袋は来週までに用意しておきますので、お手数ですがまたいらしてくださいね」


「よろしくお願いします。それにしても昨日は本当に大勢の方と楽しませていただきました」


「ドワーフの方々にはとてもおいしいお酒をいただきましたし、まさかシーサーペントの肉が食べられるとは思っていませんでしたからね!」


「朝のカレーうどんという料理もすごくおいしかったです!」


 2位となった商人さんチームも楽しんでくれたようだ。昨日話を聞いたところ、一人で行商をしているとたまにどうしようもなく寂しくなることがあるらしい。


 まあ、何日もひとりで旅をしていたらそういう気持ちになるのも当然か。


「それは良かったです。しばらくしたら料理大会をまた開くと思うので、もしお時間が合えばまた参加してくださいね」


「ええ、もちろんですよ!」


「今度こそ1位を取ってみせますからね!」


「今度はテントやイスも欲しいところですからな!」


 なかなかタイミングよく集まるのは難しいかもしれないが、商人さんチームもまたぜひ参加してほしいものだ。


 できれば次回は別の食材を使ってほしいところではあるんだがな……


「もう他のお客さんも出るようなので、途中までは他のお客さんと一緒に移動することをお勧めしますよ」


「ええ、そうさせていただきます」


 今はキャンプ場の入り口まで大勢のお客さんたちが集まっている。このキャンプ場のお客さんたちの大半は近くの街に帰るので、大勢でまとまって帰るようにみんなに勧めておいた。


 ……まあ、うちのお客さんたちは戦闘能力だととんでもない方々ばかりだからな。




「それじゃあ、ゆっくりと頼むな、アリエス、アルジャ」


「ブルルル!」


「ええ、お客様たちを安全に街までお送りしてきます」


 今回は大勢のお客さんがいるので、体力の少ない子供や女性や年配の方に優先的に馬車に乗ってもらい、他の歩きの方々と一緒にゆっくり街へと戻ってもらう。


 エリザさんたちはお忍びで来ているということもあって、少し先にこのキャンプ場をあとにした。エルフ村のみんなはそのまま村に帰るので、少し後に出発するようだ。


 Aランク冒険者パーティのゴートさんたちやBランク冒険者パーティのランドさんたちも一緒なわけだし、心配する必要はまったくなさそうだ。むしろこのタイミングで盗賊や魔物に襲われてしまったら、相手に同情をしてしまうぞ……


 さあ、お客さんたちを見送ったら、残りの従業員でキャンプ場を綺麗にしないとな。いつもみんなキャンプ場を綺麗に使ってくれているが、さすがにこれだけ大勢で宴会をしたら多少は汚くなってしまうものだ。


 洗い物なんかもいっぱいあるし、大会自体は終わってもまだまだやることは多くあるのだ。

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