第263話 カレーうどん


 ジリリリリリッ


「……ふあ~あ。さて、みんなは大丈夫だったかな」


 目覚ましの音が鳴って目が覚めた。


 昨日は無事に料理大会が終了し、大会のあとはお客さんたちで楽しい宴を楽しんでいた。俺は今日の朝の準備があるから、日付が変わるくらいで管理棟に戻ってきて寝たけれど、みんなは大丈夫そうかな。


 このキャンプ場に来てくれているお客さんはここで出すお酒に慣れているが、昨日は普段出していない高級なお酒を出していたし、大人数で楽しく飲んでいると普段よりお酒も進んでしまうものだからな。




「おはよう」


「「「おはようございます」」」


 着替えて下の階に降りると従業員のみんなもほとんど揃っていた。


「ユウスケ。さっき見てきたが、酔いつぶれて寝てしまったお客様はいなかったみたいだぞ」


「おお、それはよかった。ありがとう、ウド」


 俺も確認しようと思っていたところだが、すでにウドが見てきてくれたらしい。一応寝る前にちゃんと注意はしてきたが、どうやらみんな酔いつぶれて地獄絵図とはならなかったみたいだ。


「昨日は楽しい宴だったから、心配していたがよかったぞ。俺も昨日はとても楽しかった」


「僕もです!」


 どうやらウドとイドも昨日は楽しんでくれたようだ。今回は大会中も大会が終わったあとも、従業員のみんなにも楽しんでもらえるようにしていたからな。


 うちのキャンプ場は従業員もお客さんに混ざって楽しめるホワイトな職場だ。みんなも気を遣わないように責任者の俺が率先して楽しんでいるのである。うん、うちはそういう緩い職場でいいのだ。


「だけどまだ今回の大会は終わっていないからな。お客さんたちを見送るまで頑張っていこう」




「みなさん、おはようございます。朝食の準備ができておりますので、各自で中央まで取りに来てください」


 いつものキャンプ場の朝食はホットサンドだが、今日はせっかくのカレー大会のあとということで、カレーうどんにしてみた。


 またカレーかよ、と言われないようにめんつゆの割合を少し多めにしてある。うどん自体は従業員のまかないで作ったことはあったが、お客さんには出していなかったから、多少は喜んでもらえるだろう。


 昨日余ったカレーはもうほとんど残っていなかったので、そちらをすべて混ぜたものに新たにカレールーを加え、それにめんつゆと水、野菜などと加えて味を整えた。みんなが作ってくれたカレーもベースは同じカレールーを使っていたから問題ない味に仕上がった。


 材料費はほとんどかかっていないし、料金は取らないようにしておいた。朝から財布を取り出してお金の勘定とかって面倒くさいもんな。


「ほう、こいつはうまいな!」


「昨日のカレーに麺を加えた料理か。なるほど、カレーは米やナンだけでなく、こういった麺にも合うんじゃな!」


 ダルガもアーロさんもおいしそうにフォークですくいながらズルズルとカレーうどんを食べてくれている。


「あえてカレーを多めに作っておいて、次の日に出汁と野菜と麺を加えれば朝食にもなるからな。スープはカレーを出汁で割ってあるから、あっさりしていてすんなり入るだろ」


「うむ、麺の方は小麦粉を練って作った少し太めの麺のようであるな」


「へえ~小麦粉があればできるのか」


「ええ、オブリさん、ランドさん。小麦粉と水さえあれば簡単に作れますよ。うちの故郷ではうどんと言います。うどんはカレーだけじゃなくていろいろなスープで食べられますからね」


「おお、こっちのシーサーペントのカツともよく合うのじゃ!」


「シーサーペントの肉をありがとうな、サンドラ。ちなみにこれは天ぷらと言って、カツとは衣が違うものなんだ。こっちのうどんも揚げ物にはよく合うんだよ」


 赤いメイド服にカレーうどんの汁を盛大にこぼしながら、サンドラがフォークでカレーうどんを食べている。一応みんなにカレーうどんのつゆは服に付くと落とし難いと伝えてあるが、サンドラのメイド服は魔法によってできているらしいので、すぐに綺麗にすることができるようだ。


 昨日サンドラからもらったシーサーペントの肉はかなり多かったので、今日の朝もトッピングとして使わせてもらっている。


 やはりうどんには天ぷらの方が合うということで、今日はカツではなく天ぷらにしてみた。まあ、カツも天ぷらも同じ揚げ物ではあるが、うどんには天ぷらだよな!


 シーサーペントの肉を提供してくれたサンドラが満足そうにしてくれていているのでなによりである。


「サンドラさん、とてもおいしかったです。本当にありがとうございました」


「サンドラお姉ちゃん、おいしかったです!」


 商業ギルド職員のルフレさんと息子のケイシュくんがサンドラにお礼を言いに来てくれた。さっきカレーうどんを配る時にシーサーペントの食材はサンドラから提供してもらったと伝えていたからだろう。


「うむ、いっぱい食べて妾のように大きく育つのじゃ!」


「うん!」


 ない胸を張りつつ、ドヤるサンドラ。お礼を言われてだいぶ嬉しいようだ。


 サンドラも子供は可愛いようで、ケイシュくんの頭を撫でている。なんだかとても微笑ましい光景ではあるが、ケイシュくんが古代竜の大きさ並みに育ったらちょっと困るぞ……

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