第262話 シーサーペントのカツ
「……よし、とりあえずこんなものでいいだろ」
「ユウスケさん、こっちもできあがりました」
「ありがとうなイド。それじゃあ持っていくとするか。ウドも悪いけれど持っていくのを手伝ってくれ」
「ああ、もちろんだ」
イドと一緒に管理棟での調理を終えて、外で楽しんでいるお客さんたちへできあがった料理をウドと一緒に持っていく。
「みなさん、お待たせしました。こちらは追加のトッピングで、そちらのサンドラさんが提供してくれたシーサーペントを一口大に切って衣をつけて揚げてみたので、ぜひカレーと一緒に食べてみてください!」
「「「おお〜!!」」」
イドとウドと一緒に持ってきた一口カツにみんなの歓声が上がる。
昼間のカレー審査の時もそうだが、シーサーペントは高級食材ということだけあって、みんなとても嬉しそうだ。
先ほどみんなと一緒に楽しく飲んでいると、サンドラとランドさんとバーナルさんが昼間に使っていたシーサーペントの肉を提供してくれると言うので、ありがたくいただいた。
昼間にサンドラたちのチームが作っていたステーキのように焼くのもうまいが、せっかくならカレーのトッピングにも合うように衣を付け、それを揚げてカツにしてみた。
「おお、これはこれでうまいのじゃ! 普通に焼くのとは違ったうまさじゃな!」
「ああ。サクサクとした食感がこっちのカレーとあっていてうまいな!」
「なるほど、それにカレーと肉の間に衣があることで、たっぷりとカレーのルーが絡んでうまいぞ! そうか、俺たちもこうすりゃよかったのか!」
サンドラもランドさんもバーナルさんもトッピングのシーサーペントカツをおいしそうに食べてくれている。
個人的にもカレーには揚げ物のトッピングが一番好きだ。食べ応えもアップして、サクサクとした衣の食感も加わってくれるからな。
とはいえ、今日はみんなすでにかなりの量のカレーを食べているので、一口大のサイズにしてある。
「……これは素晴らしいですね。焼くだけでももちろんおいしいのですが、揚げることによりこれとは一味違う味わいとなります」
「ええ、本当においしい! シーサーペントのカツなんて初めて食べましたわ……」
ルパートさんもエリザさんもシーサーペントの味に驚いている。というかこの国の第3王女様でも食べたことがない素材っていろいろとヤバいよな……
ちなみにエリザさんたちのチームのスパイシーカレーは早々に完売してもうなくなっている。もともと審査の時にも2杯食べるお客さんも多かったし、発表が終わったあとすぐになくなってしまった。
結構多めに作ってもらったんだけれど、やはりあのカレーは本当においしかったからすぐになくなってしまったみたいだ。今はまだ残っているチームのカレーを真ん中に置いて各自で自由に取ってもらっている。
「とってもおいしいです! こっちのゴートさんたちのカレーと合わせるとよく合いますね!」
「ええ。このフルーツの甘さとこのカツがよく合いますね!」
「そ、そうか……」
サリアとソニアはゴートさんチームのフルーツカレーの上にシーサーペントカツを乗せて食べている。
俺の方はというとドワーフチームの激辛カレーにシーサーペントのカツを乗せた。やはり好みは人それぞれで全然違うようだな。
「まさかシーサーペントの肉だったとは……」
「長年いろいろな場所を訪れてきましたが、これほど珍しいものは初めて食べました」
準優勝した商人さんチームもシーサーペントのカツに驚いている。う〜ん、やはりシーサーペントというものはとんでもない肉だったらしい。
「アリエスもアルジャもご苦労さま」
「ブルルルル!」
「はい、みなさんとても楽しそうですね」
アリエスとアルジャも無事に街までお客さんたちを馬車で運んでくれたようだ。
街とキャンプ場を往復2回行ってもらったけれど、どうやら問題なくお客さんを届けられたらしい。たとえ盗賊や魔物に襲われたとしてもあの馬車があれば大丈夫だろうけどな。
「こっちのカレーはとってもおいしいニャ!」
「ブルルル♪」
アルエちゃんもアルジャの上にちょこんと乗っかってゴートさんチームのフルーツカレーをもぐもぐと食べている。
なんだかとても癒されるな。やっぱり子供には甘いカレーがいいらしい。ルフレさんの息子であるケイシュくんもフルーツカレーが一番好きだったみたいだからな。
アリエスもテーブルに置いたカレーをおいしそうに食べている。どうやら魔物でもカレーを食べることができるらしい。
そろそろ20時を過ぎるから、キャンプ場の従業員の仕事も終わりだ。あとはいつも通りみんなでご自由にといったスタイルだな。
とりあえず酒の飲み過ぎには気を付けてもらうとしよう。さすがにみんなこのキャンプ場の酒の強さをもう分かってくれているとは思うが、こういう大勢で集まった時には飲み過ぎてしまうものだからな。
……本音を言うと、俺も明日の朝の準備がなければみんなと一緒に夜通し楽しんでいたかったがそれも難しい。まあ、今はキャンプ場のお客さんがみんなで楽しそうにしているこの光景を見ているだけで満足だ。
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