第260話 1位の賞品


「お待たせしました、エリザさん」


 そして最後に栄えあるキャンプ場第1回目の料理大会の優勝者であるエリザさんの賞品を渡す番となった。執事のルパートさんと女騎士団の団長であるベレーさんに他の女騎士団の方々も一緒だ。


「いえ、とんでもありません。私もみんなとどの少女コミックにするかとても悩んでおりましたから」


「なるほど……」


 どうやら少女コミックにすることは確定で、どの本にするのかを悩んでいたようだ。まあ、参加する前から少女コミックがほしいと言っていたからな。


「姫様、それと例のものもお願いいたします」


「ええ、ベレー。ユウスケさん、それとこちらのシャンプーとリンス、それと石鹼についてはどれが良いのか教えてほしいのですが」


「シャンプーとリンスと石鹸ですね」


 どうやら少女コミックだけでなく、このキャンプ場の温泉で使用しているシャンプーとリンスと石鹸もご所望のようだ。


「こちらの温泉にあるものは髪がとてもツヤツヤになって、肌はスベスベになりますからね! 騎士団の者も騎士であると同時に女性ですから、殿方とお会いする前はこのシャンプーなどでおめかししたいのです」


「なるほど、承知しました」


 おっと、もしかしたら賞品は全部少女コミックにするのかと思ったけれど、他に美容グッズなども選ぶようだ。どうやら、賞品はエリザさんと女騎士団の人たちで分けて選んで共有をするようだ。


 キャンプ場に来ている間も姫様と護衛という立場ながらとても仲良く楽しそうに過ごしているから、さすがにエリザさんが賞品を独り占めにすることはないと思っていたが、俺の想像以上に仲が良いんだな。


「そちらでしたら俺よりもサリアやソニアの方が詳しいと思うので、ちょっと聞いてみますね。それと今回は普段キャンプ場の温泉に置いてある物よりも高品質な物も用意できるので、そちらの方も候補として加えておきます」


「本当ですか! ありがとうございます!」


 キャンプ場に置いてあるシャンプーやリンスなどはストアで購入できる物の中ではかなり安めの物を使用している。というのも、安めの物でもこちらの世界では十分に高品質で効果のある代物らしい。


 せっかくの賞品だし、もう少し高級なものがあればそちらの方がいいかもしれない。とはいえ、俺にその辺りの違いはサッパリなので、あとで同じ女性であるサリアやソニアにその辺りを実際に確認してもらうとしよう。


「ユウスケさん、私はこちらのキャンプ場にあるレシピ本をいくつかお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」


 執事のルパートさんはキャンプ場にある料理のレシピ本を希望している。


「はい、大丈夫ですよ。自分たちで使う分だけなら大丈夫ですが、商売にしたいなどありましたら一度ご相談ください」


 一応このキャンプ場に置いてある元の世界のレシピ本にある料理は自分たちで楽しむ分には自由にこのキャンプ場の外で作っていいと伝えてあるが、商売なんかで使う場合には相談してもらうように伝えてある。


 実際のところこれについては強制力を付けるのは難しいが、少なくとも今のところはあの街でレシピ本の内容の料理が勝手に売られているなんてことはないみたいだ。


「ええ、もちろん他で販売することなどしませんのでご安心ください」


 確かに料理のレシピ本なんかは実際に手元にある方がいいもんな。ルパートさんは普段スイーツも作っているらしいから、料理とスイーツのレシピ本を用意してあげるとしよう。


 さすがに料理やスイーツのレシピなんかはかなり貴重な情報にもなるから、金額換算したら少し少ないかもしれないが、数冊ほどを用意しておけばよさそうだな。


「少女コミックとレシピ本の方はしばらく時間が掛かるかもしれないので、しばらくお待ちくださいね」


「はい、今から楽しみで仕方がないです!」


 本にかんしては、もしも仕入れ先に在庫がなければ、そう簡単に手に入るものではないと伝えてある。あれをさすがに他の物と同じように1週間で用意するとは言えないからな。


 とりあえず、これで1位から3位までの賞品の引き換えは無事に終了できたようで何よりだ。とはいえ、大半の物は1週間以上あとに引き渡すことになりそうだがな。




「……おう、すでにだいぶ出来上がっているな」


「おお、ユウスケ殿! いやあ、これらの酒は本当にうまいのう!」


「こっちの方のウイスキーもいつものよりも一味も二味も違って、本当にうまいっす!」


 俺がキャンプ場の外に出ると、ドワーフのみんなが参加賞の酒や今回の賞品で今日引き換えた分の酒を片手にすでに宴会モードだ。


「うわっ、確かにこっちの日本酒というお酒はだいぶおいしいね! 普段はワインばかりだけれど、この日本酒っていうお酒も本当においしいや」


「そうであろう、ジルベール。だが、この日本酒は普段のここで飲める日本酒よりもうまいがな」


「おおっ、確かにこっちの酒はいつもここで飲む酒よりもうまいのじゃ!」


「サンドラの嬢ちゃんもいけるクチだな! ほれ、もっと飲んでいいぞ!」


 そしてここにはドワーフのみんなだけでなく、ジルベールさんやサンドラ、オブリさんたち、ランドさんたち、ゴードさんたちと、このカレー大会に参加していた大勢が集まっていた。


 どうやらダルガたちが今日引き換えた酒をみんなにも振舞っているようだ。

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