第259話 賞品の引き換え
「おう、ユウスケ。待ちかねたぞ!」
「ああ、待たせたなダルガ。早速賞品の交換か?」
「おう、もちろんじゃ! 早くうまい酒を味わいたいからな!」
管理棟へ戻るとダルガやアーロさん、セオドさん、元弟子のみんなが俺を待っていた。
どうやら早速3位に入賞した賞品を受け取りたいようだ。まあ、予想通りドワーフのみんながほしがっているのはお酒のようだ。
「了解だ。だけど、すぐに出せないお酒も結構あるからな。それらは1~2週間くらいはあとになると思うぞ」
俺のストアの能力については従業員以外のみんなには秘密にしている。本来ならばすぐに購入することが可能だが、取り寄せるまでに多少の時間が必要だとも伝えてある。
……とはいえ、このキャンプ場を開いてからずっと通っているダルガたちドワーフのみんなやオブリさんたちエルフ村のみんな、そして頭のいいジルベールさんたちなら、俺が結界の他に能力があることに気付いているかもしれないけれどな。
「ああ、分かっているぞ」
「それじゃあ、さっき渡した賞品のリストの方からこっちの紙にほしいお酒と本数を書いておいてくれ。その中で今出せそうなものがあったら持ってくるぞ」
「おう。それにしてもどの酒にするか本当に迷うな。ビールにウイスキー、日本酒、ワイン、焼酎など多くの種類がある上にその中でも多くの種類があるから困るわい」
「まったくじゃな。一度ユウスケ殿の故郷を訪れたいものだ。そうしたら、飲みたい酒を飲めるだけ飲めるのにのう」
「うむ。それに酒に合う飯も多くあるからのう。数か月は飲んで食って寝るだけの生活になりそうな気がするぞ」
「はは、確かに俺の故郷にみんなを連れていけたら面白いんだろうけどな」
確かに元の世界にはドワーフのみんなが当分の間は働けなくなるほど多くのお酒があるからな。ドワーフのみんなを元の世界の居酒屋なんかに連れて行ったら、それはそれで面白そうだ。
きっと飲み放題とかでも元を取れるくらい飲んでそうだな。……下手をしたら店中のお酒を飲みほして出禁になってもおかしくないかもしれない。さすがにそれは叶わぬ願いだから、今は元の世界の酒を味わってもらうだけで我慢してもらおう。
ダルガたちは賞品のリストに書かれたお酒を見ながら、ワイワイと自分たちの好きなお酒を選んでいる。何事もそうだけれど、こうやって好きなものを仲間と選んでいる時間は楽しいものだ。
ちなみにリストに書かれているお酒は普段このキャンプ場では出していないちょっと高価なお酒だ。普段このキャンプ場ではそこまで高価なお酒は出していないし、例のイノシシ型の変異種が出た時に少し振舞っただけのお酒ばかりだから、きっと満足してくれるだろう。
「いやあ~まさか入賞できるとは思っていませんでしたよ」
「ああ、発表された時には本当に驚いたものな」
「おめでとうございます、とてもおいしいカレーでしたよ」
「はい。エイベン虫とカレーがあんなに合うとは思いませんでした!」
「……ええ、とてもおいしいカレーでしたよ」
続けて2位の商人さんチームに賞品を選んでもらっている。ソニアもサリアも商人さんチームの芋虫カレーを絶賛しているようだ。
……確かに味はとてもおいしいカレーであったことは完全に同意する。
「それでは賞品は三人とも寝袋でよろしいですね?」
「ええ、私たちはいろいろな街を訪れることが多いですからね。馬車で眠る時にこのキャンプ場の柔らかくて温かく、小さく収納できる寝袋がずっとほしかったのですよ!」
「それにかなり寒い温度にも耐えられると聞きましたからね。寒い時期はここから北の街へ行くのは本当につらいですからね」
商人さんチームの3人は普段個別に商売をしているが、このキャンプ場で知り合っていろんな話をしているうちに仲良くなってこのチームで参加したようだ。表彰の時にも言っていたが、すでに賞品は寝袋を選択することに決めていたらしい。
こっちの世界の寝袋のような寝具は大きくてかさばる上にそれほど温かくないので、寒い時期には何枚も重ねないとまともに眠られないそうだ。
確かに長く商売をする以上、寝具はとても大事である。元の世界の寝袋は素材によってもピンキリだが、いいものだとかなり寒い気温の中でも快適に過ごすことができるからな。
それにそれほど寒くない日では下に敷いたり、かけ毛布としても代用できるし、何より元の世界の寝袋はとても軽くて小さく収納できるからすごいのである。
……まあ、その分諭吉さんもたくさん必要なわけだ。本当にいいやつだと、10万を超えるから寝袋は恐ろしいんだよね。さすがにそこまで良い寝袋を商品とすることはできないので、ほどほどの寝袋を用意してあげるとしよう。
「承知しました。それでは来週までに準備をしておきます」
さすがに寝袋はお酒と違ってすでに用意していたとはいえないから、商人さんチームには手間をかけて申し訳ないが、来週以降にもう一度来てもらうことになった。
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