第257話 大会の終わり


「それではこちらのカレーに投票をしてくれた人たちの感想となります」


 他のカレーと同様に、投票用紙に書いてあった感想を読み上げていく。


「『香辛料がたっぷりと使われていて贅沢な味だった』、『カレーとご飯と具材のすべてが一体となって、とてもうまかった』、『肉、野菜、カレー、米すべての食材のレベルが高かった』、『このキャンプ場のカレーよりもおいしかった。お金を払ってもいいから、街でも食べたい』以上となります。それでは皆さま、優勝チームにより一層大きな拍手をお願いします!」


 パチパチパチパチ


 実際のところ、エリザさんのチームのカレーの美味しさは今回の大会の中でも群を抜いていた。このキャンプ場で用意したカレー粉をあえて使用せずに、香辛料などを混ぜ合わせて作ったカレーだ。


 俺の知らないような異世界産の香辛料も数多く使われていたが、ちゃんとしたスパイシーなカレーに仕上がっていた。そしてそのカレーに合う肉や野菜、そしてお米の種類にまでこだわったこのカレーは本当に美味しかった。


 感想でもあったが、これはぜひまた食べたい味なんだよな。とはいえ、香辛料がそこそこ高価なこの世界ではきっと結構なお値段するに違いない。もちろん、かかる費用だけでなく、その試作にかけた時間もよっぽどだっただろう。エリザさんたちのそこまでする執念勝ちといったところだな。


 おそらく、みんなも俺と一緒で、このカレーと自分の好みのカレーのどちらにするかを迷っていたんじゃないかな。エリザさんチームは投票総数の5割くらいの得票率で、残りのチームはそこまで大きな差はなかった。


 ちなみに俺はドワーフチームの激辛カレーとエリザさんのカレーのどちらにするかを迷った挙句、エリザさんたちのチームに票を入れた。同じ料理を作る者として、その執念は本当にすごいと思う。


「ぬわ~なんでじゃ! 妾たちのカレーが一番ではなかったのか!」


 ……ちなみにサンドラとランドさんとバーナルさんのチームの高級食材を使用したシーサーペントのカレーの感想はこんな感じだ。『こんなうまい肉は初めて食った』、『シーサーペントの肉を食べられたなんて感動した!』、『どのチームの肉よりもおいしかった』


 こんな感じで、シーサーペントの肉はとても美味しかったと評価されていたが、カレーを美味しいとは誰も言っていなかった。みんなこれがカレー大会であるということを分かっていたようだな。


 それとサンドラたちが入賞できなかったことにもうひとつ理由があるとすれば、ここのキャンプ場のお客さんは結構おいしい肉に慣れてしまっていることだ。


 なんだかんだでサンドラが持ってきてくれたドラゴンの肉やクラーケン、変異種の肉などを食べた経験があるため、みんな肉に対する舌が肥えてしまっているんだよね。


「3位までの結果は出ましたが、本当にどのチームもとてもおいしいカレーを作ってくれました。正直に言って、このキャンプ場の従業員の想像よりもおいしいカレーばかりでした。今後はまた料理大会を開くと思いますので、今回は出場を見送った方もぜひ参加してみてください。それではこれにて第1回カレー料理大会を終了とさせていただきます」


 パチパチパチパチ


 大きな拍手が巻き起こり、無事に料理大会が終了した。


 実際のところ、今回の料理大会ではエリザさんのチームが5割くらいの票を取り、残りの票はそこまで大きな差はなかった。エルフ村チームの焼きチーズカレーも、ゴートさんチームのフルーツカレーも、ジルベールさんチームのシーフードカレー、その他のチームのどのカレーも3位までに入る可能性があった。


 俺が想像していた以上に美味しい異世界のカレーを食べることができて大満足だ。それにみんな自分たちで料理をする楽しさを感じることができただろうし、この料理大会は大成功だな。


 とはいえ、ここで気を抜いてはいけない。むしろここからが気を引き締めなければならなくなる。


「それではこれ以降はお酒の注文と限られてはおりますが料理の注文が可能となります。また、参加した者にお渡ししました参加チケットの引き換えが可能となります」


「「「おおおおおお~!!」」」


 先ほどの結果発表の時と同じくらいの大きな声が上がる。そう、これからの時間はお酒が解禁だ。そして参加賞であるケーキか少し高級なお酒を一杯引き換えることができるようになる。


 お酒が入ると間違いが起こる可能性も一気に上がる。ただでさえ今日はお祭りのような雰囲気だ。さっきまでは従業員も楽しむモードだったが、ここからは気を引き締めないとな。


「街へ戻られる方はすぐに馬車が出ます。本日は人が多いため、2~3度往復しますので、順番にお乗りください。また、本日お渡しした参加チケットにつきましては後日でも引き換えが可能となっています」


 今日キャンプ場に来ている人たちの大半はキャンプ場に泊まっていくが、今日中に街へ帰らなければならない人もいる。そのため、何度かに分けて街まで馬車で人を運ぶ予定となっている。


 アルジャとアリエスはちょっと大変だが、頑張ってもらうとしよう。


 そして残りの従業員たちは飲み物と料理の提供だ。これだけのお客さんの数となると、普段通りのメニューは出せないため、飲み物も料理もいくつかに絞ってある。


 今大会に参加したチームのカレーもまだ少し残っているし、先ほどまでたくさん食べてきたからそこまで料理は出ないと思うが、飲み物やケーキはたくさん注文されるだろう。

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