第253話 様々なカレー
「いやあ、どのカレーも本当にうまいな」
「ええ。どのチームも様々な工夫を凝らしておりますね。中には自分では絶対に思いつかないようなアイディアもあって本当に楽しめました」
「それに皆さん、とても楽しそうに料理をしていました。お祭りみたいでとても楽しいですね!」
ソニアとサリアと一緒に他のチームのカレーをすべて回ってきた。
ソニアの言う通り、元の世界の俺にはとても思いつかないようなカレーも色々とあった。この世界特有の素材を使った黒い色のカレーや具材に芋虫を使ったカレーなんかもあったな。2人はあまり気にしていないようだったが、さすがにあれは俺には見た目が受け付けられなかった……
他のお客さんも気にしていなかったし、こっちの世界では普通に虫なんかも食材として扱うのだろう。日本でもイナゴやハチの幼虫なんかを食べたりするしな。
とはいえ、サリアが言うようにどのチームもとても楽しそうに料理をしており、審査員としてカレーを食べに来たお客さんたちもおいしいカレーを食べられてとても楽しそうだ。まさにお祭りのような様子で、ここにいるだけでウキウキしてくる。
「みんなが作ったカレーを楽しむという意味でも、みんなに料理の楽しさを知ってもらう意味でも今のところは大成功だな」
「そうですね。それにお客様だけでなく、私たち従業員も楽しむことができました。月に一度くらい開いてもいいかもしれませんね」
「……まあ、俺たち従業員も楽だからな」
ソニアが言いたいのはむしろそこだろ。いろいろと準備は必要だったが、当日は飲み物を提供したり進行をするだけで、おいしいカレーを楽しめるからだいぶ楽だ。
キャンプ場ではご飯とナンを準備するだけでいいし、審査もお客さんたちと一緒に行うから、そこまで気を負うこともない。とはいえ、参加者には料理を勉強する時間も必要だし、キャンプ場でしか手に入れられないものをあまりばらまきすぎるのも良くないだろう。
やはり数か月に一度くらいがちょうどいい気もする。そのあたりもみんなと相談いろいろと考えていくことにしよう。
「おお、ユウスケ殿!」
「ドナルマさん、お久しぶりです」
すべてのチームが作ったカレーを食べてからお気に入りのカレーをもう一杯食べ、ぼちぼち時間になったので戻ろうとしたところ、冒険者ギルドマスターのドナルマさんがいた。
どうやら今日は審査員として参加してくれているようだ。
「お久しぶりですね、ギルドマスター」
「おう、ソニアも相変わらず元気そうだな。サリアのお嬢ちゃんも久しぶりだな」
「お、お久しぶりです!」
相変わらず見事なスキンヘッドでちょっとだけ強面なドナルマさんは少し――いや、結構見た目が怖かったりする。実際には冒険者想いのとてもいい人だ。
「それにしても面白えことをしているな。このキャンプ場で出していたカレーも食ったことはあるが、どのチームもそれに負けないくらいうまい飯を作るもんだぜ」
「ありがとうございます。ドナルマさんは料理をしないんですか?」
「ああ。俺はあまり料理をしないから、今日は普通に楽しむ側として参加したぜ。それでも十分に楽しめているぞ」
「それは良かったです。ちなみにドナルマさんはどのカレーが好きでした?」
「う~ん、なかなか難しい問題だよな……どのチームのカレーも本当にうまかったぜ。あえて言うならアンリ――じゃなかった、エリザ嬢のカレーがうまかったと思うぞ。あれはすべての面でレベルが高かったな」
「なるほど。確かに俺もエリザさんのチームが作ったカレーは3本の指に入ると思いますね」
うん、貴族のエリザさんだからな。その辺は間違えないようにお願いしますよ、マジで!
確かに執事のルパートさんと女騎士のベレーさんたちが作ったあのカレーは絶品だった。少なくとも3位以内には入るだろうな。
「あと個人的には商人チームが作っていたエイベン虫のカレーも好きだったぜ。俺の票はあれに入れようかなと思っているところだ」
「……なるほど」
ちなみに商人チームが作っていたエイベン虫のカレーというのは例の芋虫のカレーだ。審査のためにちゃんと食べたが、どうしてもあの見た目が駄目だったんだよね。
衣を付けて揚げたようで、外はカリッとしていて中はトロリと柔らかく、カレーにもよく合うようにできていたんだよなあ……ただ、あの見た目がどうしても受け入れられなかった。まあ今回の投票は自分の一番好きなカレーに投票するわけだし、見た目は審査に含んでいいだろう。
「それにしてもエリザ嬢だけでなく、ジルベールやオブリ様にセオド殿まで参加しているんだから、とんでもねえ参加者だよな……そして何よりあの赤い服を着たお嬢ちゃんは何者なんだか……」
「そのあたりは秘密ということで」
言われてみると、ものすごい面子だよなあ……
そういえばドナルマさんは変異種討伐後の宴の際にサンドラと会っていたっけ。ドナルマさんのような強い人だとサンドラの強さが分かるらしいからな。
「まあ今日は一人の客として楽しませてもらているぜ。さて、もう何杯か食ってくるとするか」
「ええ、ぜひ楽しんでくださいね!」
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