第252話 シーサーペントカレー


「おっ、ユウスケさん。うちのカレーを食っていってくれよ」


「ユウスケ、妾たちの作ったカレーを食べていくのじゃ!」


 続いてランドさんとバーナルさんとサンドラのチームの仮設テントへとやってきた。バーナルさんがいないので、交代で他のチームが出しているカレーを食べ歩いているのかもしれないな。


「ああ、それじゃあカレーを3人分お願いするよ」


「おう、任せてくれ」


「ふっふっふ、妾たちが作ったカレーを食べたら驚くこと間違いなしじゃぞ!」


 そう言いながらドヤっとない胸を張る見た目は幼女の古代竜。ちなみにサンドラの服はいつものキャンプ場の制服のメイド服を模した赤色のメイド服だ。


 カレーは服に付くとなかなか落ちないことを伝えたのだが、どうやらあのメイド服は魔法で具現化している服らしいので、汚れても問題ないそうだ。相変わらずこの世界の魔法の仕組みは良く分からない……


「へえ~随分な自信だな。これは楽しみだ」


「サンドラさん、楽しみにしてますね!」


「おいしいカレーを期待しております」


「うむ、サリアもソニアも楽しみにしておくのじゃぞ!」


 そう言いながらカレーをよそってくれるサンドラ。他のみんなと同じように感想を聞きたいらしく、ランドさんが仮設テントの中にあるテーブルと椅子に案内してくれた。ご飯のほうがおすすめらしので、3人分ともご飯だ。


 さて、はたしてどんなカレーが出てくるか楽しみだ。




「待たせたな! こいつはサンドラさんが獲ってきてくれた魔物を使って作ったカレーだぜ!」


「おっ、これはなんとも豪勢な見た目だな」


 ランドさんが持ってきてくれたカレー、小さなお椀の中には少なめの白いご飯と茶色いカレーがあり、そしてその上に豪快にも焼いた白く分厚い肉が2枚ドーンっと乗っかていた。見た目は完全に男メシって感じだな。


「妾が海で獲ってきたシーサーペントをランドとバーナルが解体してくれたのじゃ! ちゃんと妾も解体した肉を焼くのを手伝ったのじゃぞ!」


「うわあ~とってもおいしそうですね!」


 どうやらサンドラが海で獲ってきたシーサペントという魔物をランドさんとバーナルさんが解体してくれ、それを焼いてカレーの上に乗せたようだ。


「……シーサーペントの肉ですか」


「やっぱり珍しい肉だったりするの?」


 ランドさんとサンドラからシーサーペントの肉と聞いた時、若干ながらソニアが引きつった顔をしていた。


 俺はこの世界の魔物には詳しくないし、サリアもエルフ村から出たことがほとんどないから知らないようだが、このシーサーペントという魔物は有名な魔物なのだろうか?


「シーサーペントは海に生息する巨大な蛇の姿をした魔物で、その肉は超高級食材として扱われています。シーサーペント自体の強さもあるのですが、海の中に生息していることもあって、その入手難易度は相当なものとなります。私でも過去に2度ほどしか味わえたことがありません」


「な、なるほど……」


 どうやらとんでもない食材のようだった……ドラゴンにコカトリスやらクラーケンやら、相変わらずよくこんな高級食材ばかりを調達できるものだな。長く生きたソニアですら、過去に2回しか食べたことがない食材か、はたしてどんな味がするのだろう。


「海を飛んでいたらたまたま見つけてのう。こいつは焼いて食べるとうまいのじゃぞ! じゃが、妾がブレスで焼くよりも、ランドやバーナルが焼いた方がうまかったのじゃ!」


「俺たちもあの巨大な蛇の魔物を見た時は驚いたぜ……まさかあんな大きい蛇みたいな魔物が海に存在しているとはな。見た目は少しグロテスクな感じだったが、その肉は本当にうまかったぞ。俺たちもシーサーペントなんて初めて食べたぜ」


 シーサーベントか、ウミヘビの巨大なやつみたいな感じなのかな。白い肉に綺麗な茶色い焦げ目がついている。それじゃあ早速いただくとしよう。


「……っ!? うわっ、うまっ!」


 シーサーペントの肉はカレーの上に二切れ乗っていたので、まずは肉を単体で味わってみた。


 海で暮らす蛇と聞いて、その身は淡白な肉を想像していったのだが、一口噛むとその肉からはこれでもかと肉の脂が溢れてきた。牛や豚とは違って旨みがたっぷりとあるのにあっさりとした味わいだ!


 今までこの異世界で様々なうまい魔物の肉を食べてきたが、その中でも5本の指に入るくらいにうまい。シーサーペントが超高級食材だというのもうなずける話である。


 というか、これは絶対に肉だけで渡す予定の材料費を超えているだろうな。まあ、サンドラが獲ってきたから、実質的には無料なんだろうけれど。


「サンドラさん、ランドさん、本当においしいです!」


「ええ、これほどの肉はなかなかお目にかかれないでしょうね」


「はっはっは、そうじゃろう!」


「よっしゃあ、優勝はもらったも同然だぜ!」


「………………」


 サリアやソニアも絶賛しており、自信満々のサンドラとランドさん。


 確かにこのシーサーペントの肉はものすごくうまかった。ただ、実際に肉をカレーとご飯と一緒に食べると、ものすごく合うというわけではないんだよな。


 某料理漫画風に言うのならば、ご飯とカレーが完全に肉の味に負けてしまっている。これはシーサーペントカレーではない、ステーキとカレーだ! とか言われてしまうやつだ。カレーの方はシーサーペントの肉を主役にしているため、他に具材も入れていないみたいだしな。


 とはいえ、もちろんそんな野暮なことは口にしない。たぶんみんなで楽しく料理をしたようで、サンドラとランドさんはとても楽しそうだ。今回の料理大会の目的から考えると、それが一番である。


 それにこの肉がうまいことは間違いないからな。2人が言うようにこのカレーが優勝しても全然おかしくはない。

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