第251話 シーフードカレーと本格カレー
「ふむふむ、この独特な味は初めて食べる味で面白いですね。魚介の臭みもないし、旨みだけがギュッと詰まっていてうまいですよ!」
「ふっふっふ、新鮮なエドマイア貝とタンガシュリンプを使ったからね! ユウスケくんから教えてもらった通り、魚介類を入れたカレーは普通のカレーよりも味に深みが出ておいしかったよ」
外見は中学生くらいに見える男が胸を張っているが、商業ギルドマスターのジルベールさんはハーフリングという種族で、これでも年齢は40歳を過ぎている。
「商業ギルドに勤めている者の中には収納魔法を使える者もおりますから、新鮮なままの魚介類が手に入ったのは大きいですね。若干公私混同な気もしますが、業務外のことですから多分大丈夫でしょう」
その隣にはメガネをかけた長髪のザールさんがいた。今日ジルベールさんたちは商業ギルドのチームで参加している。そもそもこのカレー大会のきっかけを作ってくれたルフレさんとケイシュくんはさっき見かけたから、今は他のチームのカレーを食べに回っているのだろう。
「……ジルベールは本当にいろいろと器用ですね。ええ、確かにおいしいです。普段からこれだけおいしい料理を作れるのですから、キャンプ場でも自分でいろいろと料理を作ればいいのに」
「いや、ここなら自分で作らなくてもおいしい料理とお酒が出てくるじゃん。それよりもここでは漫画を読みながらのんびりと過ごしたいんだよ。だけど今回は例の漫画が商品だから頑張らないといけないからね。絶対に僕はお気に入りの漫画を手に入れてみせるよ!」
ジルベールさんは普段いろいろとやる気がないように見えるが、本気を出すとかなり有能な人だからな。どうやらジルベールさんの狙いは漫画らしい。お気に入りの漫画をいつでも読めるというのはいいものだよな。
……そしてソニア、それをお前が言うのか。漫画が好きなところもそうだけれど、結構ソニアとジルベールさんって似た者同士な気もする。
まあ、ソニアの場合は楽をしたがるが、仕事はサボらず真面目にしてくれるから助かっているが。
「お味のほうはいかがですか、サリア?」
「すごい! とってもおいしいです、エリザさん!」
「それはよかったです。頑張って作った甲斐がありますわ!」
続けてやってきたのはこの国の第三王女……ではなく、貴族令嬢のエリザさんたちのテントである。
「……確かにこれはとてもおいしいですね」
エリザさんたちが作ったカレーの見た目はキャンプ場で提供している普通のカレーのようだが、その味はこちらの方が間違いなく上だ。具材も野菜と肉のシンプルなカレーなのだが、そのひとつひとつの質がキャンプ場のそれよりも遥かに高い。
今まで食べてきたチームのカレーは基本的にキャンプ場で提供しているカレールーをベースにして独自の味を付けていたが、これはまさか……
「もしかして、カレーのほうも自分たちで一から作ったのですか?」
「さすがユウスケ殿ですね。仰る通り、こちらのキャンプ場で提供されているカレーの味を基にして、様々な香辛料を混ぜ合わせて作ってみたカレーとなります。また、具材の方もこのカレーにあう様々な食材を試してみました」
「………………」
めちゃくちゃガチだった。どうやらエリザさんは本気で賞品の少女漫画を狙っているらしい。しかもあの街にはそこまでの香辛料は揃っていなかったから、遠くの街からわざわざ仕入れたんじゃないかな……
俺も一度くらいは本格的なスパイスとかを使ってカレーを作ってみたいと思ったことはあったが、実際に作ったことはなかった。元の世界だとガラムマサラのようなミックススパイスなんかが売られているが、たぶんこっちではそんなものは売っていないだろう。
カレーを一から作ってここまでの味に仕上げるとは、さすがは完璧執事のルパートさんである。
「ご飯も単品ではこちらのキャンプ場のものの方がおいしいのですが、こちらのカレーには別のご飯が合うようなので、別の国から仕入れた米を使っております」
「そこまでしているとは……」
日本のいわゆるジャポニカ米は粘り気と甘みが少しあって日本のカレーには合うとされている。
しかし、このカレーのようなスパイシーなカレーにはどちらかというとタイ米のようなインディカ米の方が合うらしい。もちろん人による好みの差もあるがな。
きっとこのカレーの味は様々な食材やご飯をいろんな組み合わせで何度も試して、試行錯誤した結果によるものだろう。う~ん、まさかここまで本気で参加してくれているとは思ってもいなかったぞ。
試作品に使った材料費とか、とんでもない金額になるんだろうなあ……まあ、おかげで異世界でおいしいカレーを食べることができたし、このカレーの味なら街で店を出せば間違いなく売れるから、元は取れるに違いない。
……あと配膳をしてくれるのが、ベレーさんたち女騎士っていうのもいいよね! なんか普段の凛々しい女騎士のみんながカレーをよそってくれるのは、ぐっとくるというか。
うん、審査はちゃんと味だけで決めるからな!
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