第250話 フルーツカレーと焼きチーズカレー


「はい、うちらの特製フルーツカレーだよ」


 自信満々にシャロアさんが出してきたカレーは茶色いカレーの上に色とりどりのフルーツが乗っていた。


 なるほど、カレーの中に果物を入れるわけではなく、そのまんまカレーの上に果物を乗せているわけか。


「ご、ご飯よりもナンの方がおすすめです!」


「なるほど、それじゃあナンの方でお願いするよ」


 確かに果物と合わせるのなら、ご飯よりもナンの方がおいしいかもしれない。元の世界でリンゴを隠し味に使うカレーは知っているが、直接果物をカレーに乗せて食べたことはないな。どんな味がするのかとても興味がある。


「うわあ~甘くてとってもおいしいです!」


「ええ、これはとてもおいしいです。カレーというよりもデザートに近いかもしれませんね」


「おお、さっきのドワーフチームのとは真逆だな。上の果物だけじゃなくて、カレー自体も甘くしてあるのか。確かにこれはご飯よりもナンの方があるかもしれない。うん、初めて食べる味でおいしいよ」


 先ほど食べた激辛カレーの余韻を除いても、だいぶ甘いカレーに仕上がっている。酸味と甘みのあるフルーツがカレーの辛さを抑えつつも、香辛料の味を引き出している。


 これは子供や女の子には受けそうなカレーだ。意外と甘めのカレーというのもうまいかもしれない。元の世界で食べたことはないが、もしかしたらフルーツカレーなんてものがあってもおかしくないな。


「ありがとうございます。ユウスケさんにそう言ってもらえると自信が出てきますよ」


「よし、このまま優勝を目指すわよ!」


「は、はい!」


 どうやらチームワークも良いようだな。やはり冒険者は普段料理をすることが多いから、有利になるのかもしれない。



 

「おお、ユウスケ殿。いらっっしゃい」


「どうも、オブリさん。早速ですがカレーを3つお願いします」


「うむ、了解した。アルベ、カレーを3つ頼むぞ」


「はい、村長」


 続けてエルフ村チームのテントへとやってきた。1チームのカレーの分量はほんの数口分しかないため、2チーム食べた時点で、むしろよりお腹がすいてきた気がする。


 今日はサリアの両親や友達も来ているようだ。テントの奥の方にお邪魔すると見知ったエルフ村の面々がいた。


「昨日から皆さんにはいろいろとお手伝いしてもらって、本当に助かっています」


「なあに、これくらいお安い御用じゃ。いつも儂らが世話になっているからのう。役に立てて何よりじゃ」


 エルフ村のみんなには収納魔法を使って、炊き立てのご飯とナンを収納してもらっている。管理棟に保温したご飯とナンを置いており、各チームに補充をお願いしている。そして管理棟のご飯やナンが少なくなったら、エルフ村のみんなにお願いして、収納していたものを出してもらうわけだ。


「そう言っていただけて良かったです。とはいえ、審査の方は別ですからね」


「うむ、もちろんじゃ。悪いがこの勝負はもらったぞ。儂ら長寿のエルフは味にうるさいから、料理でその辺りの者に負けるわけにはいかんのう」


「おお、それは楽しみです!」


 審査は別と百も承知だと胸を張るオブリさん。確かにエルフの寿命は人のそれよりも長いから、様々な料理に触れてきたのだろう。これはとても楽しみだな。


「ユウスケさん、お待たせしました。焼きチーズカレーになります」


「ありがとうございます、カテナさん」


 サリアの母親であるカテナさんが持ってきたカレーは上に2種類のチーズが乗っていた。そしてその2種類のチーズには綺麗な焦げ目がついている。カレーのおいしそうな香りと、チーズの焦げた香ばしい香りが合わさって、なんとも言えない良い香りが漂っている。


「カレーの上に儂らの村で作った2種類のチーズを乗せ、それを火魔法で軽く焦がしたチーズカレーじゃ」


 エルフの村で作られているチーズを前面に押し出してのチーズカレーだ。やはりチーズとカレーの相性の良さに気付いたようだな。エルフは寿命が長い分、料理に研鑽してきた時間も他の種族よりも長いのだろう。


「香りも見た目もとてもいいですでね。それではいただきます……うん、チーズとカレーが絶妙にあっていて、とってもおいしいですよ! それに2種類のチーズは味が違っていて楽しめますね」


 少し濃厚に味が付けられたカレーと、表面が少し焦げた香ばしいチーズにその下の柔らかくとろけたチーズが絡み合って見事な味に仕上がっている。


 そしてコクのある濃厚な風味のチーズと、あっさり目で柔らかめのチーズの2種類のチーズの味が楽しめるようになっている。カレー自体はカレールーを少しだけ多めに入れてとろみを強くしてあり、チーズとより合うように味付けされている。


 短い準備期間なのに、いろいろと研究をしつつ様々な工夫を試したようだ。さすがにエルフ村のみんなである。


「これは素晴らしいですね! 普通にチーズを乗せるだけよりもおいしいです」


「少し焦げたチーズがとってもおいしいです!」


 このキャンプ場のまかないでカレーを出す際もチーズをトッピングで付けたりもするが、こちらの方が圧倒的にうまいな。今度はチーズ部分をバーナーで軽くあぶってみてもうまいかもしれない。


 ソニアとサリアも満足しているみたいだし、チーズカレーは万人受けしそうだ。惜しむべきは、1人分の量が少ないということだな。エルフ村チームも優勝候補の一角のような気がする。



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