第245話 カレー料理大会
「はい、以前に他の街であったイベントのようなものなのですが、その土地の名産品である野菜を使って料理をして、誰が一番か決める大会がありました。今回はカレーをこのキャンプ場で提供して、誰が一番おいしいカレーを作れるかを競うようにしてみてはいかがでしょうか?」
「……大会か。なるほど、面白いかもな」
「それに料理でバトルする漫画もありましたよ!」
「………………」
確かにそういう漫画もあるな。まあ、実際にはああいったリアクションまでは取れないと思うけど。
「確かに面白そうです。カレーは具材や香辛料を加えれば、いろんな味になります。こちらで用意するのはカレーのルーとご飯だけで、残りは皆さんに作ってもらうようにすれば、いろんな味のカレーが楽しめると思いますよ」
イドの言う通り、元の世界でもカレーはバターチキン、キーマ、シーフード、グリーン、マッサマン、ドライ、スープなど挙げればきりがないほどのカレーの種類がある。トッピングなんかを合わせればそれこそ無限大だ。
それに異世界でみんなが作るカレーを食べてみたいという気持ちもある。
「とはいえ、このキャンプ場に来ているお客さんの中で料理をする人は少ないからな。何かしらの賞品を用意してみるか」
実際のところ、このキャンプ場で料理をしている人はまだまだ少ない。まだまだ、ここでは出来上がった料理を注文する人が大半だ。大会を開くのなら、何かしらの賞品を出してみんなのやる気を引き出さないといけないな。
「そうだな、このキャンプ場でしか手に入らないものを賞品にすれば、大勢のお客が参加するだろう」
「ダルガさんたちはお酒の制限を外してほしいと仰るかもしれませんね」
ふ~む、賞品を何にするかは少し悩むところだ。ウドとサリアの意見のどちらもありだな。
普段キャンプ場では販売していないケーキやお酒なんかを賞品にしてもいいかもしれない。あるいは数日間限定でお酒の制限を外すチケットなんかもありといえばありだ。
「お客様によってほしいものは違いそうなので、複数の賞品の中から選べるようにしたり、いくら分までといった形で制限を付けるのがいいかもしれませんね」
「アルジャの案は採用だな。お客さんによってほしいものが違うだろうから、いくつか候補を選んで、その中から好きな賞品を選んでもらおう」
賞金を渡すよりも、キャンプ場に来てくれるお客さんにはそっちのほうが喜んでくれそうだ。
「個人参加よりも、チーム戦にしたほうが参加者は増えるかもしれませんね。チームメイトにも同等の賞品を与えるようにすれば、料理の手伝いくらいしかできない人でも一緒に参加できますから」
「そうだな。せっかくなら大勢の人に参加してほしいし、ソニアの案も採用だな」
できるだけ大勢に参加してもらいたいし、カレーはみんなで楽しく作るものだ。手伝いであろうと一緒に楽しく調理することによって、自分たちで料理をする楽しさに目覚めてくれるかもしれないからな。
「うん、まだまだ決めることはいろいろとあるけれど、カレー料理大会は楽しそうだな。よし、いろいろと話を詰めていこう」
そしてみんなと一緒にカレー料理大会の詳細を相談していった。
開催日は2週間後にして、キャンプ場内と商業ギルドの有料掲示板に告知をする。参加費は特に取らないが、こちらから渡す材料費を超えた分は参加者持ちになるので、カレーを作る材料費が参加費扱いになるという形だ。
1組10人までのチーム戦となり、賞品はチームメイト全員に贈られる。審査員は俺たち従業員と、当日来てくれた大会に参加していないお客さんの投票によって決定されることとなる。
当日キャンプ場に来てくれた審査員からは銀貨2枚を徴収するが、みんなが作ってくれたカレーを食べることができるから、かなりお得である。そしてその銀貨2枚は参加者へ材料費として分配される。
参加者には参加証として、普段キャンプ場では出していないケーキか少し高級なお酒を一杯振る舞う予定だ。自分のチームへの投票権はないが、もちろん他の参加者のカレーを食べることもできるぞ。
そして肝心の賞品だが、3位まで賞品を準備するつもりだ。商品はこのキャンプ場で手に入る物の中から選んでもらうこととした。お客さんによってほしいものは様々だからな。
内容的には酒、スイーツ、シャンプーやリンス、テントやアウトドアチェアなどのキャンプギア、そして本である。普段はキャンプ場で販売していない物なので、金額的には少なくても十分に価値はあるはずだ。
出所だけは他の人に知らさないようにお願いするつもりだ。そのあたりは完全に制限することはできないが、キャンプ場に来てくれているお客さんを信じるとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「聞いたぞ、ユウスケ! ここでカレー料理大会を開くんだってな!」
「ああ。ダルガたちも参加するのか?」
いつも通りやって来たドワーフのみんなに料理を持っていったところ、早速テントを持って案内をしてくれた従業員から料理大会の話を聞いたみたいだ。
「おう、当たり前じゃろ。確かに儂は料理を作れんが、参加するだけでも1杯うまい酒がもらえるんだろ? それならば参加しない手はないわい!」
「儂も簡単な手伝いくらいしかできんが、こういった祭りごとに参加せねばな」
「なあに、今回は弟子のみなが頑張ってくれるはずじゃからな」
「が、頑張るっす!」
「せ、精一杯頑張るっす!」
どうやら参加賞の酒につられてドワーフのみんなも参加してくれるようだ。とはいえ今回は普段キャンプ場で酒のつまみなどを料理をしている大親方たちの元弟子が主導に料理を作る感じかな。
プレッシャーはありそうだが、ぜひ頑張ってほしいものである。
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