第243話 サンドラの友達
「うむ、相変わらず見事な料理じゃったな。量は全然足りぬが、妾は満足じゃ!」
「ああ、満足してくれたようで何よりだよ」
これでも5~6人分くらいの量を食べたのだが、サンドラには物足りないらしい。相変わらず見た目に似合わず、もの凄い食欲だな。
「そうじゃユウスケ、ひとつ聞きたいことがあるのじゃが、少し先になるが、このキャンプ場に妾の友を連れてきてもよいかのう?」
「えっ、友達!?」
ば、馬鹿な! サンドラに友達だと!?
「驚き過ぎじゃ! 妾にだって友の一人や二人はおるわ!」
マジか! キャンプ場にやってきた時からの反応を見たら、何百年もの間一人きりの超エリートぼっちだと思い込んでいた。
「そ、そうだよな。サンドラにも友達の一人や二人はいるよな! うん、それは素晴らしいことだ!」
正直に言って、まともに話せるのはここにいる人たちだけだと思っていた。サンドラに友達がいるのは良いことには違いない。
「……今度は慈愛の目で妾を見ておるな。それはそれでなんだかムカつくのじゃ」
うん、ちょっとだけ友達のいない子供を持った気持ちになっていたのはさすがに秘密だ。それにしてもサンドラの友達かあ……
「ちなみにその友達はサンドラと同じ古代竜なのか?」
「いや、そやつはドラゴンとは別の種族じゃな」
「さすがにこのキャンプ場にいる人へ危害を加えたり、人に害を与える人なら難しいんだけど」
「ああ、そこは問題ないぞ。そやつは基本的には無害なやつじゃ。それにそやつが何かしようとしたら、妾が責任をもって止めるのじゃ!」
う~ん、サンドラがそう言うのなら大丈夫かな。結界の能力もあるし、サンドラやみんながいれば何とかなるだろう。
「わかった、それなら大丈夫だ。だけど、くれぐれもお客さんに害は与えないように伝えておいてくれよな」
「うむ、分かったのじゃ!」
友達を連れてこられるのがよっぽど嬉しかったのか、満面の笑みのサンドラ。一応は悠久の時を過ごしたはずの古代竜なのだが、その笑顔は年相応の女の子にしか見えない。今でもたまにサンドラの本当の姿が巨大な竜であることを忘れてしまいそうになる。
「それで、いつ頃友達を連れてくる予定なんだ?」
「う~む、そやつは一度寝てしまうとしばらくは起きないやつじゃからな。いつ頃起きるかは妾にも分からぬ」
「な、なるほど」
サンドラの言い方だと、しばらくというのはたかが数日くらいではなさそうだな……
「そやつが今度起きた時に連れてくるのじゃ。おそらく1月はかからんとは思うのけれどのう」
「……了解だ。まあ、気長に待っているよ」
逆に言うと、1月くらいは寝ている可能性もあるのか。さすが異世界、とんでもない種族もいるもんだ。
「うむ。ユウスケ、この日本酒のお代わりを頼むぞ。魚にはビールも良く合うが、日本酒もうまいのじゃ」
「ああ、日本酒だな。了解だ」
すぐに連れてくるわけじゃないみたいだな。とりあえず従業員のみんなにはちゃんと伝えておくとしよう。このキャンプ場に初めてサンドラがやって来た時みたいに、あの巨大な竜の姿を見たらみんながびっくりしてしまう。
サンドラの友達の大きさや種族くらいはあとで聞いておくとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ふう~さすがに今週は忙しかったな」
「先週休んだ際のお客さんも来てたようですからね。特にダルガたちは久しぶりのお酒にありつけて、ものすごく喜んでいたみたいですよ」
ソニアの言う通り、キャンプ場を1週間休んだあとの今週はいつも以上に忙しかった。やはり先週来られなかったお客さんたちが、あわせて今週に来てくれたのだろうな。
そしてドワーフのみんなの喜び方は特にすごかった。確かにダルガたちは、キャンプ場がオープンしてから毎週欠かさずにこのキャンプ場へ通ってくれていたから、酒を飲めなくなるのは初めての経験だったわけだ。
元の世界の酒はこの世界のお酒と比べるとおいしいが、まさかあそこまでとはな。さすがにドワーフだけを魅了するような変な成分とかは入っていないとは思うんだけど……
「ヴィオの街であれだけ買ってきた食材が1週間も経たないでなくなっちゃいましたね」
「ああ、確かにな。特別料理のために買ってきたリッキム貝はともかく、干物や燻製にしたものまで全部売り切れちゃうとは……」
まさかサリアの言うようにたった1週間で全部なくなってしまうとは思わなかった。やっぱり、みんな新しい料理には興味があるようだ。
このキャンプ場では日替わりのおすすめ料理などで、できるだけ新しい料理を提供するようにしてはいるが、そのレパートリーには限界があるからな。
たまにはどこかに旅行しつつ、その土地の食材を購入して、キャンプ場で提供するのもいいかもしれない。
「みなさんいろんな海鮮料理を楽しんでくれていましたね。先週はみんなで旅行できてとても楽しかったです!」
「またみんなでどこかに行きたいニャ!」
「そうだな。先週はイドとアルエちゃんも楽しんでくれたみたいだし、またどこかに旅行するとしよう」
従業員のみんなも、お客さんのみんなも楽しんでくれたようだし、俺も行ったことがない場所に行くのはとても楽しかった。また折を見て、みんなでどこかに旅行へ行くとしよう。
……まあ、その間お客さんたちは少し悪いが、その分旅行先で買ってきた食材を使って作った新しい料理を振る舞うとしようか。
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