第241話 シーフードカレーなんかも


「ユウスケさん、ただいま戻りました。今日は5組のお客様がいらっしゃっていますよ」


「お帰り、アルジャ。予想はしていたけれど、先週休んだ分、今日はお客さんが多いな」


 お昼前になり、アリエスと一緒に馬車で街までお客さんと迎えに行ってきたアルジャがキャンプ場に帰ってきた。普段の馬車だとだいたい2~3組のことが多いが、今日は5組もお客様がいらっしゃったようだ。


 それに常連のエルフ村のみんなや獣人冒険者のランドさんとバーナルさんも早い時間からキャンプ場に来てくれている。やっぱり1週間休むと、その分のお客さんも一気に来てくれるみたいだ。


「そういえばお客さんの中に、商業ギルドマスターのジルベールさんたちが来ていましたよ。いつも通り、カレーを頼まれてます」


「了解。久しぶりだし、カレーを持っていくついでにちょっと挨拶へ行ってくるかな」




「ジルベールさん、ルフレさん、いらっしゃいませ」


「い、いらっしゃいませ!」


 イドと一緒にジルベールさんたちがテントを張っている場所へ料理を持っていく。今日の昼時はお客さんが多くとても忙しくて、従業員も総出でこの時間帯から大忙しだ。


 ジルベールさんはいつものようにタープの下で、リクライニングするアウトドアチェアを横に倒して、料理を待ちながら漫画を読んでいた。今日はルフレさんも一緒で、管理棟にある小説を読んでいる。


 ジルベールさんが来る時はだいたい商業ギルドの職員と一緒に来ている。……たぶん、サボらないようにするための監視役なんだろうな。


「ユウスケさん、イドさん、お久しぶりです」


「やあ、ユウスケくん。久しぶりだね! イドちゃんが料理を運んでいるなんて珍しいね。相変わらずそのメイド服姿は可愛くてとても似合っているよ!」


「あ、ありがとうござます!」


 イドは褒められて少し照れているようだ。こういうことをシレっと言ってくるから、ある意味凄いよな。


「おかげさまで今日は忙しくて、従業員みんなに出てもらっているんですよ。お待たせしました、ご注文のカレー2つとビールとお茶、それと特別料理になります」


「待ってたよ! いやあ、やっぱりカレーのこの匂いはたまらないよ!」


「ええ、おいしそうな香りですね。このカレーは少し期間を空けると、たまらなく食べたくなってしまいます」


 うむ、カレー独特の香りにはたまに食べたくなる不思議な魔力があるよな。


「そういえばキャンプ場の休み明けの日に来るのは珍しいですね」


 ジルベールさんたちはキャンプ場の休み前に来ることが多い。今日は珍しく、キャンプ場が始まってすぐの日に来てくれている。


「ユウスケくんたちが先週ヴィオの街に行くって聞いていたからね。きっと今日はヴィオの街で買った食材を使った料理が出てくると思ってさ。以前ここで出していた特別料理と違って、保存が効かない海鮮料理は量が少なくて早めに来ないとなくなっちゃいそうだからね! あっ、ちゃんと休みは事前にとってあるよ」


「な、なるほど……」


「す、すごいですね」


 ……ものすごい分析力だな。イドも驚いている。


 確かに今回の特別料理や海鮮料理は数が少ないから週末まで持つか怪しいところだった。ソニアの収納魔法はそこまで容量があるわけじゃないからな。


「こちらのリッキム貝はとてもおいしいですね。この醤油の香ばしい匂いと、新鮮な海の香りのするリッキム貝がよく合っていますよ」


「ありがとうございます。ただジルベールさんの言う通り、ソニアの収納魔法の容量にも限りがあるので、ひとり1枚しか出せないことは少し残念ですね。他にも有料ですが、数日限定の料理もあるので、ぜひ試してみてください」


「それは楽しみだね。そっちのほうは夜にいただこうかな」


「ええ、おすすめです。あとカレーにはシーフードカレーというものもあって、蒸し焼きにした魚介類や衣を付けて揚げた魚介類をカレーに入れてもおいしいですよ」


 さすがに素材がなくてキャンプ場では出せなかったが、シーフードカレーもおいしいんだよね。他にもイカフライやエビフライなんかのフライを添えたカレーもうまいのである。


「なるほど。確かに美味しそうですね。カレーはこちらでも販売しておりましたし、今度子供を連れてきた時、一緒に作ってみるのもおもしろそうです」


「ええ、レシピもありますから、魚介類の食材さえあれば作ることができます。お子さんもきっと楽しんでくれると思いますよ」


 キャンプ場ではカレーのルーなどの食材も販売している。さすがに新鮮な魚介類は販売していないが、食材の持ち込みも可能なので、自分たちでシーフードカレーを作ることも可能だ。


 俺も子供の頃に家族でキャンプ場に行ってカレーを作ったのはいい思い出だ。きっとルフレさんのお子さんも楽しんでくれるだろう。どちらかと言うと、カレーを作るよりもご飯をうまく炊くほうが難しかったりするんだよね。


「へえ~シーフードカレーか。そっちもおいしそうだね。特別なメニューなんかもあるみたいだし、今日の晩ご飯も楽しみだなあ~」

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