第239話 久しぶりの酒
「「「いらっしゃいませ、ようこそイーストビレッジキャンプ場へ!」」」
キャンプ場の営業を1週間休んで、従業員と一緒に海の街へ旅行に行ってきた。俺自身もそうだが、従業員たちにもいいリフレッシュになったと思う。また1~2か月後にはみんなと一緒にどこかへ遊びに行くとしよう。
そしてキャンプ場の営業を1週間休んだこともあって――
「酒じゃ、酒! 早く酒をよこすんじゃ!」
「ビール、まずはビールを十本くれ!」
「頼む、早くあの冷えたビールを持ってきてくれ!」
「「「………………」」」
予想通りというべきか、休み明け一番にキャンプ場へ来てくれたのはドワーフの大親方たちとその元お弟子さんたちだった。まだキャンプ場に入る前から、いきなり酒を注文する大親方たち。
……というか、セオドさん、うちのキャンプ場で酒は5本までだからな。
出迎えに来ていた俺、ソニア、サリアの3人はさすがにあきれ顔だ。
「お、大親方がすみませんっす!」
「先週からキャンプ場の酒が飲みたいと、ずっとイライラしてたっす……」
どうやらこの休みの1週間はキャンプ場の酒が飲めずに悶々と過ごしていたらしい。
……いや、確かにこの暑い時期のキンキンに冷えた缶ビールはうまいけれど、そこまでの状態になるものなのか? さすがに繰り返し飲みたくなるような変なものは入っていないよね……
元弟子たちのみんなは休みの日に交代でキャンプ場にやってくるから、そもそも数週間に一度しか来られないこともあって、大親方たちほど暴走はしていないらしい。
「とりあえず落ち着いてくれ。ある程度準備はしてあるから、いつも通り先払いの料金とテーブルと椅子の組み立てをしてからだな」
「わかっておるぞ! ほれ、先払いの料金だ。テントや寝袋は儂らでやっておくから、今すぐにビールとつまみを持ってきてくれ!」
「……ありがとう、ダルガ。いつも通りの場所だよな。とりあえずビールだけは先に持っていくから、いろいろと組み立てておいてくれ」
「おう、つまみも適当でいいから早くできるやつを持ってきてくれ! それじゃあ儂らは先に準備しておくからな!」
そう言い残し、大親方たちはソニアとサリアが持ってきたテントや寝袋を受け取ると、走りながらいつもの場所へと去っていった。元弟子たちは俺たちに謝りつつも、大親方たちのあとを追っていく。
「み、みなさんはよっぽどキャンプ場のお酒を飲みたかったんですね……」
「本当にダルガたちは酒に目がないですね……」
「まあ、そんなにうちのキャンプ場のご飯とお酒を楽しみにしてくれていたのなら、嬉しい限りだ」
ソニアとサリアもさすがにあきれている。さすがに1週間キャンプ場を休みにしただけであんな状態になるのはさすがのみんなも予想外だったらしい。
う~ん、ドワーフの酒への執念を少し舐めていたようだ。
「ほい、お待たせ。とりあえずビールと簡単なつまみだ」
まずはビールと出来合いの燻製料理をウドとアルエちゃんと一緒にダルガたちの元へ持っていく。
「うおおおおお、待ちかねたぞ!」
「これじゃ、この金色に輝く美しいこいつを待っておったのじゃ!」
「そして久しぶりに聞く、この蓋を開けた時のプシッという音がたまらんわい!」
……うん、いろいろと限界だったようだ。というか1週間でこれなら、キャンプ場を1か月とか休んだらどうなるんだろうな。
「かああああ! これじゃ、これじゃ! このために生きてきたと言っても、過言ではないわい!」
いや、絶対に過言だと思うぞ……
「キンキンに冷えたこのビールがたまらんわい! 最近は暑くなったから、なおのことうますぎるぞ!」
「というかアーロさん、たった1週間ビールが飲めなかったからと言って――」
「何を言っておる、ユウスケ殿! 今日で9日間もビールが飲めなかったんじゃぞ! まったく、あと1日この酒が飲めなかったら、どうなっていたことか!」
言われてみると、元々休日の2日間があったから確かにそうなるんだけれど、細かいところにまでツッコんでくるな……
それに10日間ビールを飲めなくても、どうにもなったりせんわ!
「まあ、それだけ楽しみにしていてくれたなのなら、何よりだよ。今日は海の街のヴィオで仕入れてきた海鮮料理も出しているから楽しんでくれ。それとこれはたまにやっている特別メニューだ。ソニアの収納魔法で保存しておいた獲れたてのリッキム貝だぞ。このままコンロで焼いて醤油を垂らして食べたら、なかなかうまいからな」
「ほう、そいつはうまそうじゃな!」
「ヴィオの街で仕入れた海鮮料理か、そいつは楽しみであるな!」
このキャンプ場でたまにやっているお客さんへの特別料理として、大量のリッキム貝をヴィオの街で仕入れておいた。俺たちも浜辺で食べたが、こいつはいいつまみにもなるんだよな。
他にも日持ちする干物なんかも大量に購入して馬車に積んで帰ってきた。少しだけではあるが、今週はキャンプ場に来てくれたみんなにも、ヴィオの街で購入した海鮮料理を楽しんでもらうとしよう!
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こちらは男女比が1:9で冒険者メインの話となります。
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『男が少ない貞操逆転世界に転生して冒険者になったら、簡単にハーレムを作れると思っていた時期が俺にもありました…』
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