第228話 海の街の朝食


「おお、これはうまそうだ!」


「とってもおいしそうです!」


「お腹がペコペコだニャ!」


 目の前のテーブルにはいろいろな店で買った料理が並んでいる。市場のこの一角は調理された料理を販売している屋台が多く、買った料理をここにあるテーブルで食べられるフードコートのようになっている。


 いろんな屋台で購入してきた料理をずらりとテーブルに並べる。さすがは海の街だけあって、新鮮な魚介類ばかりだ。朝っぱらから海鮮料理? うまけりゃなんでもいいんだよ!


「おお、これはうまい! やっぱり海で獲れる魚は川魚とはちょっと違うな!」


「ええ、それにこっちの貝や甲殻類は海でないと食べられませんからね!」


「昨日の宿の料理もとてもおいしかったですが、こうやってシンプルに焼いて塩や魚醤で食べるのもおいしいですね!」


「ああ、普段キャンプ場で食べられない分、余計においしく感じるな!」


 ソニアやサリアの言う通り、海の近くで食べる料理はこういうのでいいんだよな!


 もちろん昨日の宿で食べたソテーや包み焼きなんかもとてもおいしいのだが、浜焼きのようにシンプルに焼いて塩や魚醤なんかで食べるのも本当においしい。塩味もうまいし、独特の香りがする魚醤も思ったより悪くないぞ。


 やはり魚介類は鮮度が本当に大事だ。いつもの街で購入できる魚や貝は街に運ぶまでにどうしても鮮度が落ちてしまっているから、ソニアの収納魔法を使って保存をしても、獲れたばかりのものにはどうあがいても敵わない。


「このハーマクラブは初めて食べましたが、とてもおいしいですね」


「こっちのもおいしいニャ!」


「ブルル♪」


 この世界にはエビやカニや貝なんかも存在するようだ。やっぱりエビやカニの殻が焼ける香ばしい香りもいいよね!


 さて、ここのフードコートは食材や飲み物の持ち込みもオッケーとなっている。つまりは醤油を使うこともできるし、こいつが飲めるというわけだ!


「ぷはあ~やっぱりこれには冷えたビールだよな! 朝っぱらから酒を飲む背徳感がヤバいぜ!」


「やはり暑い日はエールよりもこちらのビールがよくあいますね!」


「ああ、日本酒もいいが、焼いた魚介類には冷えたビールがうまい」


 男性陣は昨日飲めなかったキンキンに冷えたビールを楽しむ。他のみんなには冷えたお茶とジュースだ。ちなみにアリエスも酒は飲めるのだが、酔っ払いやすいので、人が多いここでは飲ませないようにしている。


 シンプルに焼いた海鮮に醤油を垂らした料理にはキンキンに冷えたビールが良く合うぜ! 脂がたっぷりと乗ってふっくらと焼き上がった魚の味を楽しんでから冷えたビールで喉を潤す。


 朝っぱらから酒を飲むという背徳感も合わさって、この上なくうまく感じてしまう! 性格は悪いかもしれないが、他の人が働いている日の朝っぱらから自分達だけ酒を飲むのって最高だよね!


「まだ朝なのですからほどほどにしておいてくださいよ。酔っぱらいはその場で放置していきますからね」


「ソ、ソニアさん!? あの、もしもお酒に酔ってしまったら宿まで送りますからね」


 ソニアは相変わらず厳しくて、サリアは相変わらず優しいな。とはいえ、今回はソニアの言う通りだ。せっかくの旅行で朝っぱらから酔っ払ってしまうのはもったいない。


「わかっているよ。1本……いや、2本だけにしておくから大丈夫だよ!」


 とはいえ、これだけビールの合う料理を前に飲まないのも酒に失礼だ! 2本くらいまでなら大丈夫だろう。




 朝食を食べたあとはみんなで市場を回っていく。普段の街での買い物は数人で回ることが多く、従業員みんなで市場を回るのは初めてだが、やはりこれはこれでとても楽しい。


「ちょっとそこの格好いいお兄ちゃん! うちの店を見てってくれよ!」


「あら、そこの綺麗なお姉さん、今朝揚がったばかりの新鮮でピチピチの魚だよ!」


「おっとそこの4本腕のいかしたお兄さん! うちの店の商品を見ていきなよ!」


 市場を歩いているとたくさんのお店の人達に声を掛けられる。こういう活気のある雰囲気も嫌いじゃないんだよなあ。お世辞とは分かっていても、おっさんがお兄さんと呼ばれるのは悪い気がしないんだよ。……チョロい客であることは自覚しているから大丈夫だ。


 そういえばこの街では亜人であるウドやイドに対して、露骨に嫌な顔をする人達が少ない気もする。昨日の宿の人達はそこそこ高級な宿の従業員だから分かるが、街の人達もあまり気にしていないようだ。俺としてはこういう雰囲気の街のほうが好きである。


「だけど本当に見たことがない魚介類ばかりだな。それに市場もとても広いから、昼まではゆっくりと市場を回りながらいろいろと勉強しようか」


「賛成です。それにこちらの通りでもちらほら屋台は出ているようですね。おいしそうなものがあれば買っていきましょう!」


「さっき朝食を食べたばかりなんだけれどな……」


 とはいえソニアの気持ちは分からなくもない。目の前でジュウジュウと焼かれている魚介類を見ると、食べたばかりとはいえ、また食べたくなってしまう。どうやら今日の昼は市場を回りながらの食べ歩きになりそうだな。

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