第175話 大金


「……しかし改めて考えてみても、すごいメンバーだったよな」


「変異種の攻撃をも防ぐことができる、そのメンバーの筆頭であるユウスケが何を言っているんですか?」


「ソニアの意見には僕も同意せざるを得ないね」


 ガタゴトと揺れる馬車の中にはソニアとジルベールさんとルフレさんが一緒に乗っている。


 無事に変異種との戦いが終わり、大勝利に終わったことを祝っての宴会も終わった。ジルベールさん達商業ギルドが素材買取のために用意してくれた馬車のうちの一台に乗って街へと向かっている。


「ダルガ達もそうだし、オブリ様達や高ランク冒険者が大勢、あの女の子にも秘密があるようだし、それになんと言っても……あの貴族様も来ていたからね」


 ……うん、改めて考えてみても凄かったな。それに宴会では商業ギルドマスターのジルベールさんと冒険者ギルドマスターのドナルマさん。キャンプ場のお客さんの中でも特に凄い人達が勢揃いしていた。


「今回は相手も相手でしたからね。それにしてもあの変異種はとても美味しかったです。しばらくあの肉を食べられると思うと幸せですね」


「確かにあの肉はとても美味しかったです。昨日キャンプ場にお邪魔できたのは幸運でした」


「僕達は食べることができてラッキーだったね! これも日頃の行いのおかげかな」


「「「………………」」」


 日頃の行いのおかげかどうかは置いておいて、単純に動きの早かった商業ギルドマスターの手腕としてだと思うが……


「本当は変異種の肉がもっとほしかったけれど、収納魔法を使える職員がそこまでいないからなあ。まあこれだけの素材と牙まで購入できたんだから満足だけどね」


 変異種の大量の肉については討伐に参加してくれた人達で分けた。とはいえ生の肉はそれほど日持ちしないので、自分で食べる分を除いて収納魔法を使える職員がいる商業ギルドに売却した者も多くいた。


 そして残りの肉はめでたくサンドラの収納魔法へと収納された。かなりの量の肉がまだ余っていたのだが、それもすべて収納魔法に入ってしまった。どうやらサンドラの収納魔法はかなり大きいようだ。


 それとは別に空いた時間にみんなでひたすら作っていた変異種の燻製肉はみんなに配っておいた。温燻で調理したので、そのままツマミとして食べることもできるし、しばらくの間は持つからな。しかも街ではそこそこ高価な香辛料で味付けしておいたから、みんな喜んでくれていた。


「変異種の牙のほうもなんとか運べてよかったですね」


「さすがにダルガ達の牙は運べなかったけれどね。まさか馬車を3台がかりで運ばないといけないほど大きい牙とは思ってもいなかったよ」


 巨大な変異種の牙はジルベールさんが用意してくれた馬車3台を使ってなんとか運んでいる。さすがにダルガ達の分を運ぶことはできなかったが、ダルガ達はダルガ達で街に戻れば、あの巨大な牙を運ぶ手段があるそうだ。


「ダルガ達はダルガ達で大丈夫って言ってたからね。それにしても馬車はやっぱりあると便利だね。キャンプ場で購入するのもありかなあ」


 街へ戻るダルガ達や冒険者達は、馬車に乗せてもらい、俺達と同様に馬車の中で変異種の素材に囲まれている。元の世界の車と違ってガタゴトと揺れるが、普通に歩いて街へ行くよりもだいぶ早い。


 オブリさん達はエルフの村へと帰り、エリザさん達はキャンプ場にやってきた馬車で、みんなとは少し時間をずらして帰るらしい。サンドラはサリアともう少し遊んでから帰るそうだ。


「僕の場合は普段机仕事ばかりだから、運動も兼ねて数時間歩くのはそこまで苦じゃないかな。それに街からここまで歩いてきたからこそ、ご飯やお酒が美味しいっていうのもあるしね」


「そうですね。疲れた後にキャンプ場で飲む冷たい飲み物は本当に美味しいですからね」


 なるほど、確かにジルベールさんとルフレさんの言うことにも一理あるな。空腹や疲れは最高のスパイスであることはこちらの世界でも変わらない。それに確かダルガ達も街からキャンプ場までの道のりは良い運動になると言っていた。

 

「とはいえ、街へ仕入れに行く時に馬車はあったほうが便利でもありますね。私の収納魔法は容量がそれほどあるわけではありませんから」


「確かにソニアの言う通りかな。無事に借金も返せることになったし、ちょっと考えてみるか」


 馬車の御者をできるアルジャもいることだし、街に行ったらそのあたりも見てみるとしよう。






「それでは変異種の牙の代金として金貨3000枚と変異種の骨や毛皮の代金として金貨300枚となります」


 馬車の御一行は無事に街まで到着し、街の人の注目を集めながらも商業ギルドまでやってきた。特にあの巨大な変異種の牙を街の門に通す時は大変そうだったな。馬車の中にいたので、俺達が討伐したということはわからないだろう。


「ありがとうございます」


 そして商業ギルドで少し待つと、ジルベールさんとルフレさんが大量の金貨を持ってやってきた。金貨3300枚ってものすごい光景だな……


 骨や皮だけでも金貨300枚になるのか。そりゃ一攫千金を求めて冒険者になる人も大勢いるわけだ。たった一回の戦闘でこれだけの報酬が手に入るのなら、確かに冒険者は夢があるな。俺は絶対にごめんだけど!


 そして代金を受け取った足で、ダルガ達の工房へ寄って、借金をすべて返し終わった。借金を差し引いても、今俺のショップには金貨2500枚近くのお金がある。


 一気に金持ちになってしまったぜ、ヒャッハー!!

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