エピローグ
「またなの?!」
平田に大仰に驚かれ、優人は眉を寄せた。
「学ばないねえ」
想定内だなと思いながら、アイスティーのストローに口をつける。
「何回目よ」
聞かなくても知っているくせに、わざとらしくため息をつく平田。
「そもそも、元カノちゃんのせいで毎回上手くいかないこと忘れた?!」
平田は結愛のことを良く思っていない。
自分のことを良く見せたことがないのに。
”会ったこともないクセに”と毎度のことながら、心の中で悪態をつく。
「そんなに好きなら、より戻せばいいじゃない」
と言われ、優人はむせた。
「彼氏がいる」
むせたせいで涙目になりながら、そう返答すると、
「だからよ」
と言われる。
──
「そんな脈もない相手にいつまでも振り回されるのはなんなの? バカなの?」
平田のハッキリしているところは嫌いじゃない。
「で、手紙の子はどうなったわけ」
「友達になった」
これからも結愛に振り回され、平田に怒られ続けるんだろうかとぼんやり思いながら、返答する。
「はあ?! 何がどうしたら、そうなるわけ?!」
頭痛がすると言われ、そんな平田を横目で見ながら近くを通りかかったウエイトレスを呼び止める優人。
オーダーをし、ニコッと微笑めば彼女は嬉しそうに去っていく。
そんな優人を見つめ、呆れ顔の平田。
「お前ねえ」
「なに?」
優人が平田に向き直ると、彼は一瞬般若のような顔をした。
「行く先々でフラグ立てるの
会計を済ませレジから去ろうとすると、先ほどのウエイトレスに連絡先の書かれた名刺のようなものを渡され、優人はお礼を述べる。
店から出ると当然のごとく、
「またかよ」
と平田から嫌な顔をされた。
「何が?」
と聞き返しながら、貰った名刺をスマホケースの内側にしまう優人。
「そういうとこだぞ!」
平田の血圧は大丈夫だろうか? と思いつつ、結愛との会話を思い出していた。
『お前はそうやって、
その問いかけは、ただの嫉妬だったに違いない。
『優人にだけだもん』
結愛の言葉に安堵しつつも、彼氏とはきっとやることやっているに違いないと思うと、胸の奥がキュッと痛んだ。
理性は美徳だ。どんなに迫られようが、
『俺が理性の塊なことくらい、知ってるくせに』
と返せば、
『優人の鉄壁の理性なんて、ギッタギタのズタボロにしてやるんだから!』
と宣戦布告される。
”どういうこっちゃ!”と思いつつ、
『やれるもんなら、やってみろ』
売り言葉に買い言葉は二人にとって
それが心地よく、離れてはくっついてを繰り返してきたのだ。
だが、もうその選択肢はないのだろう。
**
これからも自分は彼女のことが好きで。
ずっと振り回されていくのだろう。
それが、どんなに間違いだとしても。
それでも良いよと、声が聞こえた。
────『世界で一番愛しい君は』
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