第2話 元カノ雪子
でも、彼女の実家は覚えてる。千葉県○○市にある酒屋だ。
電話番号がわからないから、インターネットで調べて電話した。誰も出ない。もう、引っ越したのかも知れない。
彼女の名前は雪子。名前にぴったりのきれいな子だった。一月生まれで、クリスマスのすぐ後だったから、プレゼントをすぐに準備するのが、経済的に大変だった記憶がある。俺は大学を出たてだった。
何であの子と結婚しなかったんだろう?自分から別れるはずなんかない。きっと、俺が振られたんだ。もし、あの頃に戻れるなら、どんな努力でもする。俺は最近、結婚を心から後悔していた。
俺は妻を全く愛してない。顔はブルドックみたいにぺちゃんこで、頬が垂れ下がっている。ボクサーかそれ以上に鼻がつぶれていて、化粧をしてもわかるくらい、肌が変色してる。体は太っているし、体型が崩れていて、胸が垂れ下がってて力士みたいだった。
何であんな女と結婚したんだろう。俺は自分の判断力がおかしくなっていたとしか思えない。俺は人生を通じてずっとイケメンと言われていたから、何であんな人と結婚したのかと遠回しに聞かれたこともあった。俺は妻と一緒に歩くのが恥ずかしかった。だから、ほとんど一緒にはでかけない。
でも、子どもはかわいい。2人いて、どちらも中学生。男と女。性格がよくて明るくて、部活を頑張ってる子達だ。子どものことを思い浮かべて、何とか持ちこたえている。
多分、でき婚だったんだ。きっとそうだ。酒に酔った時に間違ってやってしまったんだ。
その時、スマホが鳴った。
「パパ。そっちはどう?」
妻の言い方はきつい。
「大丈夫だよ」
「9時には帰るから」
「うん」
俺は一言、雪子の声が聴きたくなった。
あの優しい、女らしい、上品な声が。
「聡史!」
ビデオの中の雪子が俺を呼んでる。
今すぐその時間に戻りたい。
戻れたら絶対に雪子を話さない。
俺はダメもとで雪子の実家に電話を掛けた。
何回か電話がなる。
「はい。〇〇です」
70くらいのおばさんの声だった。
「突然お電話してすみません。私は江田と申しますが、雪子さんと昔お付き合いさせていただいていた者です。雪子さん、まだそちらにいますか?」
俺の声は震えていた。
その人は、戸惑っているようだった。
電話越しながら、変な顔をしているのが伝わった。
「はい。今かわりますね」
俺の胸は高鳴った。雪子はまだ俺のことを覚えているだろうか。
迷惑だろうか?今は旦那と二世帯同居してたりして・・・。そうだったら面白いかもしれない。俺はそのうち雪子の前に現れて、びっくりさせてやりたい。もしかしたら、あちらも今の結婚生活に不満があるかもしれない。お互い、やけぼっくりに火がついて、また、恋の炎がメラメラと燃え出すかもしれない。
雪子・・・。
愛しい雪子・・・。
俺たちは愛し合っていたんじゃないのか?
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