ビデオテープ

連喜

第1話 ビデオテープ

 家を掃除していて、ビデオテープや現像していないフィルムが出て来ると、どきっとする。何が写っているんだろうかと気になる。フィルムは現像に出したとしても、変な写真が入っていたらどうしようと思うと、取りに行く時に恥ずかしい。今まで、ベッド写真を撮ったことはないから、最悪の事態はないけど、それでも現像に出すのを忘れるほどだから、必要な写真ではないんだろう。


 俺はある休日にクローゼットを整理していた。俺は整理整頓が苦手で、ものすごい疲労感を感じてしまう。しかも退屈。オーディオブックでも聞こうかと思っても、ガサガサ音が煩くて聞き取れない。無音でやる。静かだと、色々なことを考えてしまうという悪循環になる。


 俺は今40歳。DVDがいつ頃出て来たかは覚えてないけど、大学くらいの頃はまだVHSのビデオテープだった。それで、アダルトビデオや裏ビデオなんかをネットオークションで買って何本も持っていた。普通の映画のビデオも数本あったけど、大半がアダルト。でも、子どもに見られる前に捨てようと思っていた。どっちも全然見ないけど、捨てられなかった。好きなテレビ番組を録画したのもあったけど、それは相当前に全部処分した。多分、アダルトビデオは大金を費やしたせいで、捨てられなくなってしまうんだと思う。


 その日は家に誰もいなかったから、俺はクローゼットにしまってあったビデオデッキを引っ張り出して、パソコンとつないだ。そして、ビデオを再生して中身を確認する。できるだけ録画して取っておきたいけど、家族が出かけているのは今日の夜までだ。夜9時までには帰って来てしまう。すべてのデータを残すのは無理だから、最低限だけ保存することにした。


 みんな懐かしい映像だけど、さすがに画質が悪くて、今後役に立ちそうもなかった。だから、正規品でも全部廃棄。あとは、オリジナルからダビングしたものが何本もあったけど、さらに画像がさらに落ちるので、同じく廃棄。そのうち、一本懐かしい物が含まれていた。


 昔、付き合っていた彼女と一緒に旅行に行った時のビデオだった。二人で小笠原に行ったことがあった。そこで、ビデオを撮った時のものだった。亜熱帯の気候で、植生が違う。海もボニンブルーと呼ばれる濃い青で、水も空気も美しい。抜けるような青空で、俺は彼女の姿をビデオに収めていた。彼女は白いブラウスを羽織っていた。頭には麦わら帽子。まるで女優みたいだった。


 色白の清潔感のある美人で、自慢の彼女だった。性格も優しくて、聞き上手。いつも癒されていた。


 俺はビデオカメラを持っていなくて、彼女のを借りて撮影し、後日8mmのテープからダビングしてもらったものだった。


 俺たちは結婚約束していたのに、なぜ別れてしまったんだっけ?

 思い出せない。



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