誰だろう。と考えていると、私のスマホが鳴った。初めて見る番号。

「はい。もしもし」

「もしもし。……夏川なつかわ、久しぶり」

"夏川"と私を苗字で読んでいたのは1人だけ。

「青山?」

何で私の番号知ってるの?あ……。唯衣だ。

唯衣を見ると、ニコニコしてる。やっぱり。

「夏川……空いてる日ある?言いたいことあるから。直接会って言いたい」

「うん……」

今月のスケジュールを思い浮かべる。

「2週間後の土曜日なら空いてる」 

「わかった。後でまた連絡する。じゃあ」

「またね」

青山爽一あおやまそういち。忘れたくても忘れられない、元彼氏。

そんな人と約束をしてしまった。

大好きだったから心の奥に閉まっていたのに。涙が出てしまうから声を聞きたくなかったのに。どうして……どうして今なの。


唯衣とは夕方まで出かけていたけど、青山のことが頭から離れなくて、あんまり楽しめなかった。

それでも久々の外出は疲れたようで、家のソファーに座った瞬間に瞼が重くなって、夢の中に入っていった。

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