第28話 家族3人で

「お兄ちゃん、僕が荷物持つよ!」


 退院の日、哲矢は嬉しそうに、入院中の着替えなどの衣類が入ったカバンを自分から申し出て持ってくれた。


功薙いさなはずっと、寝たままだったから、歩くとふらつくかも知れない。足元に気を付けるんだぞ」


 お父さんも、今までに聴いた事が無いくらい明るい声を張り上げている。


 僕が、中間層から三次元の現実という世界に戻って、継母を除いては、とても喜んでくれている!

 僕ももう一度、この状況からやり直せるような気持ちになれた。

 継母だけは、苦虫を嚙み潰したような表情で、僕の退院に関して何も言わず、これみよがしに何度も大きな溜め息ばかりしていた。


 エレベーターが混んでいて、なかなか来なかったから、階段で行く事になった。


功薙いさな、久しぶりの階段だから、踏み外さないように気を付けて」


 お父さんが僕を気遣いそう言い切ったかどうかの時、お父さんの真横で、すごい勢いで、足を踏み外した継母。

 お父さんが心配そうに、階下で倒れている継母の所へ駆け付けた。

 

「お母さん、大丈夫か?」


「お母さん、しっかりして!」


 お父さんの後を追い、哲矢も慌てて階段を降りて、継母に話しかけた。


 階段の最上段の位置から一番下まで転がって、頭を強打していた継母は、倒れたまま動かなかった。

 

 おろおろしているお父さんと哲矢にやっと追い付いた僕は、なぜか、妙に冷静でいられた。

 だって、漠然とだけど予感していたから……


 シアニー、もしかして、君が何かした?


 中間層から抜け出た僕には、もはや確かめる術は無かったけど、シアニーがあの時に発していた言葉を思い出し、それは確信に近いものが有った。


 僕と入れ替わるように、継母が意識不明で入院する事になった。


 継母の意識は何日も戻らなかった。

 その週の土曜日、家族でお見舞いに来た。

 

 この前までの僕とは逆の立場になっている継母。

 継母は、僕をどんな思いで見ていたのか分からないけど、僕は、この状態を楽観的に見ているよ。

 継母がいない事によって、僕と哲矢とお父さんは団結して家事をして、それはもう今までに無かったほど楽しい時間だったから。

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