第23話 シアニーの提案

 僕が、本体を失わずに済むよう、ここに残る選択しかなくて落ち込んでいた時、シアニーが声をかけて来た。


「家族の事が気になる君の気持ちは、よく分かるけど……そこをガマンして、今は、僕に付いて来てもらいたい」


「えっ、僕は病室を離れても、大丈夫なの?」


 ここから離れてしまうと、乗っとろうとしてさまよっている幽体に本体を奪われないかと心配だった。


「三次元的に離れるのは、本体の管理面で危険だけど、僕が案内するのは、中間層での事だから、大丈夫! つまり、三次元と距離的な感覚が全く違って、離れているようでも、重なり合っているようなもので、実際にはそんなに遠退かずに済んでいるんだ。君に伝わるように上手く説明出来て無いかも知れないけど……」


 僕に伝わるように話せているかどうかで、シアニーの口調は、少し疑問が含まれているような感じだった。


「それって……つまり、中間層では、距離的なものが存在していないって事なのかな……?」


「そうなんだ、もう1つ、ついでに言うと、時間すら関係していない」


 距離だけではなく、時間すら存在していない世界?

 そんな世界が、本当に存在しているなんて、たった今、自分が接している状態に有るのかも知れないけど、まだ信じられない。


「君のいた3次元とは、あまりにも感覚的に違い過ぎるから、納得するのが難しいと思う。ここでは、何十年も前に亡くなった人も、つい最近亡くなった人も、何か思い残す事が有った場合、一緒にここに待機しているんだ」


 シアニーの言葉に、僕はピーンときた......


 シアニーがここにいるのは、僕の本当のお母さんに会わせてくれる為だと!


「シアニー、君は、僕と本当のお母さんを会わせてくれようとしているんだね!」


 自分でも図々しく感じるくらいに、嬉しくてつい言わずにいられなかった。


「そうだよ。既に、君は幽体になってしまったけど、例え幽体にならない状態でも、この旧七夕のお盆の辺りなら、色んな条件が上手く重なり合っているから、会わせる事が出来たはずなんだ! 今更だけどね、ゴメンね、僕の力量が足りなかったせいだ」


 シアニーは、僕に自殺未遂させた事を悔やんでいる口調だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る