第22話 母の捨て台詞
お母さんは、今にも煮えくり返りそうな表情を、ベッドに横たわる僕に向けていた。
「どうよ、これでご満足? お前のせいで、仲が良かった私達の関係まで、こんな風に崩れてしまったじゃない! こんな寝たままの身体になってからも、迷惑ばかりかけ続けて、本当に疫病神のような子だわ! このままずっと、目を覚まさなくていいからね!」
言いたいだけの事は全て言い切ってから、お母さんも病室を後にした。
今に罰があたる……
お母さんに対して、そう言った哲矢の言葉が頭に響く。
お母さんは、義理の息子である僕を養ってくれてはいたけど、それは、本当に、哲矢と比べて差別しか無い状態だった。
僕は、例え義理とはいえ、そんな状況で養ってくれていたお母さんに対して、感謝していたらいいのか?
それとも、哲矢が言ったように、この不思議な身体でいられるうちに、お母さんを罰した方が良いものか、分からずにいた。
「君が認識出来たこの状況だけで、まだ判断しなくてもいいと思うよ。その為に、こうして僕が現れて、君を導こうとしているのだから」
シアニーの言葉が無かったら、僕は、あのまま、無理して、家族の事が気になって、後を付けて行こうとしていたかも知れない。
本体となる僕の身体を病室に残して、幽体である自分が、そんな勝手な事をしたら、残された本体がどうなるかも知らずに。
「僕は、この寝ている本体のそばにいなくてはならないの? 離れて、家に帰る事は出来ないの?」
「不可能では無いよ。ただ、あまり離れると、君の本体が、この辺りをさまよう強い幽体に乗っ取られる可能性が有るから、それはお勧め出来ない」
近くをさまよう強い幽体?
僕の他にも、幽体なんているの?
シアニーに言われて、改めて、周りを見渡してみて、ハッとなった!
至る所に、僕よりもずっと顔色の悪い、見た目がもっと荒んでいる感じの幽体が数多く浮かび上がっている事に気付かされた。
もしかして、彼らも僕と同様、本体が命の危険に晒されているのかな?
「本体が有る幽体ばかりとは限らないよ。むしろ、本体が無い幽体も病院には多いんだよ」
本体が無い幽体の方が多い……?
確かに……
よく見ると、本体が有る場合は、本体と幽体がパイプのようなもので繋がれているが、太い細いがあったり、パイプが無い者達もいる。
多分、太いほど幽体が近くにいるとか、抵抗力が有る状態って事かな?
離れると、パイプはどんどん小さくなり、容易く、本体を奪われやすくなる状態なのかも知れない。
パイプが無い幽体達は、本体を失ってしまっているから、入り込める肉体を探している状態なのだろう。
もしも、僕が本体を病院に置き去りにして離れるのは、彼らにとって格好の餌食となってしまう!
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