第21話 取り残された継母

「そうかそうか、良かった! お父さんも、功薙いさなは大丈夫だって信じているんだ! 功薙いさなは、僕らに心配しないように、その事をどうしても伝えたかったんだな」


 涙ぐみながら、哲矢の肩に手を置いて言った、お父さん。

 いつも、お父さんはお母さんの手前、何も声をかけてくれてなかったけど、こんなに、僕の事を思ってくれていたんだ!

 

 僕の事を疎ましく思っていたのは、やっぱり、お母さんだけだったんだ!


「なによ! 哲矢もお父さんも、功薙いさな功薙いさなって、こんなに迷惑な真似しでかした子の事ばかり心配して! おかげで、私が世間から、どんな目で見られるかという事も分かりもしないで!」


「だって、それは……お母さんが、お兄ちゃんに対して、いつもヒドイ事ばかりしてたからだよ!」


 哲矢の発言でカッとなったお母さんは、哲矢の左頬を引っぱたいた。


「痛い……」


「何をするんだ! 哲矢は何も悪くない!」


 お父さんは、哲矢を庇って抱き締めた。

 

 僕のせいで、哲矢がお母さんに叩かれた。


 こんな事になるんだったら、哲矢に話さなければ良かった……

 僕は話す相手を間違えたのかも知れない……


 もしも、お父さんだったら、お母さんからあんな仕打ちされずに済んだだろうか?

 その可能性が強いけど、お父さんだったら、誰かにその事を打ち明けずに、空耳とか当たり障りないように扱われてしまいそう。


「いいえ、悪い事をしたのよ、哲矢は! もう二度と、そんなバカらしい事は言わないでちょうだい!」


「僕は、ホントの事を言っただけなのに……もう、お母さんなんか、キライだ! きっと、今に罰があたるよ!」


 そう言い残して、病室から走り出た哲矢。

 反射的にすぐ、その哲矢を追ったお父さん。

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