第17話 透明な身体を移動させて

 僕が力を振り絞って、僕の声を聞かせたいと思うのは……

 多分、お母さんが一番効果的かも知れないけど、それはもっと後での、とっておきにしたい気がする。


 だから、今、一番話したいのは、哲矢!


「どうやったら、話せるの?」


「まずは、その人の耳元まで、今の体を移動させてみて」


 この透明感の有る体を移動させるって……?

 一体、どうやって……?


 うううううっ......


 力を込めて移動させようとしているんだけど、いた場所から全く動いてない。


「だめだ~! シアニー、移動って、どうやったら出来るの?」


 降参!

 この透明な身体は、見た感じはすごく軽そうなのに、動きたいと思っても、僕の意思ではビクともしないんだから!


「理屈じゃなくて、必要なのは想像力なんだ! 出来るという事を信じる気持ちと、移動している自分を強くイメージする事だよ」


 イメージと言われても……


 どうやったら、そんな事を信じて移動させる事を想像出来るんだろう?


 でも、取り敢えず、シアニーが教えてくれた通りにしてみよう!


 うん、そうだ!

 信じて、イメージしてみよう!


 この透明な身体は、見た目通り、とても軽くて、僕は簡単に哲矢の所まで移動出来るんだ!

 すごく簡単に哲矢の所まで移動出来るんだ!


 その事しか思い浮かべずにいると、不思議なんだけど……

 まるで、磁石で引き寄せられるような感じだ……


 実際は、自分がコントロールしているのかも知れないけど……

 今は、その調整法も分からないまま、いつの間にか、僕の透明な身体は、哲矢に近付いていた!

 

「本当に、こんな事が出来るんだ!!」


「幽体を動かすのは、3次元の肉体を動かすより、最初は難しいかも知れないけど、慣れてくると、もっとスムーズに動かせるようになるよ」


 シアニーのアドバイスは、普通の人が聞いたら理解出来ないかも知れないけど、成し遂げた僕には、とても分かりやすい!

 そして、その言葉は、3次元の人々の言葉よりもエネルギーが高いというのか、希望に満ち溢れているような温かさが含まれている感じがしてくる!

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