第15話 継母の焦り

 僕の周りには、お父さんとお母さんと哲矢がいた。


「お兄ちゃん大丈夫? どうして寝たままなの?」


 大好きなゲームに目もくれず、僕の顔を覗き込んでいる哲矢。

 

「心配しなくても大丈夫だよ、哲矢。功薙いさなはきっと目を覚ますから!」


 哲矢の肩をポンと叩いて、元気付けているお父さん。


「自殺なんて、何考えてるの! 世間体悪いったらありゃしない! さっさと目を覚まさせて、その分の償いをさせなきゃならないわね!」


 お母さんは、こんな事態でも、僕の体の事より体裁の方がずっと大事なんだ!


 成績が優秀で、学校生活での悩みなんか何も無さそうな僕が自殺したとなると、まずは、家庭での虐待が疑われそうだから。

 それで、お母さんは焦っているんだ。


功薙いさなは、自殺するくらいに悩んでいたんだ。目を覚ましても、しばらくは、そっとしておいてくれないか」


 お父さんが、お母さんをたしなめた。

 ちゃんと僕の気持ち、分かってくれていたんだ、お父さん!


 その事がこうして分かっただけでも、自殺未遂になった意味が有ったかも知れない……


「なによ、私を悪者扱いするつもり? それじゃあ、功薙いさなが自殺したのは、私のせいだって言いたいの?」


 お母さんは、他に何か理由が有るとでも思っていたのだろうか?

 こんな状況になってもまだ、自分の責任ではないと言い張りたいなんて……

 どれだけ自分を正当化していたいのだろう?


「お母さんは、いつだって、お兄ちゃんには冷たいよね。どうしてなの?」


 いつもは黙っている哲矢が、お母さんに疑問をぶつけた。


 哲矢、気付いていたんだ……


 ゲームばかりして、気付いてなかったと思っていたのに。

 お父さんだけじゃなく、実は、哲矢もお母さんの冷たい仕打ちに気付いてくれていたんだ!


 腹違いだって事が分かってしまったけど、その事を知らない哲矢は、こうして僕に暖かい気持ちを抱いてくれているだね。


「哲矢、何言ってるの? 私がいつ、功薙いさなに冷たくしていたというの?」

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