第14話 中間層

「シアニーは、夢を操る天使さんなの? それとも、妖精さんとか精霊さん? 」


 人間達の夢を操る事が出来るんだから、さぞかし位の高い存在に違いない。


「正確に言うと、どちらでも無い。私は、中間層からの使者だから」


「チューカンソー? アメリカに確かアーカンソー州って所が有るけど、その中間辺りに、そういう都市が有るとか?」


 僕は、社会は得意で、特に地理は得意なんだけど、『チューカンソー』なんて地名は聞いた事が無い。


「わざわざ、その言葉を地名に置き換えなくていいよ。中間層というのは、君達の生きている下界と、死者の集う冥界の中間地点に有る場所の事なんだ」


 なんだ……

 チューカンソーっていうのは、カタカナの表記ではなく、漢字変換しなくてはならない言葉だったんだ。


 中間層……


 見えないシアニーの話す中間層という場所は、僕からは、やっぱり不可視の世界なんだろうな。


「その中間層の使者のシアニーが、どうして僕の前に現れているの? 僕は、今、どうなっているの?」


 もしかして、これこそが、幽体離脱という状態なのだろうか?

 生きている人でも、そういう事を出来る人がいるっていうのを聴いた事が有る。

 確か、幽体が自分の身体からス~ッと抜け出て、天井の辺りから自分の寝ている体を見下ろすような……


 だとしたら、今、僕の本当の身体は、下の方に有る状態……?


「そろそろ、幽体に慣れて、下界の様子が見えてきているんじゃないのかな? 君の体は、今、生死の境目にいる」


 シアニーに言われて、目を凝らして、下を見下ろすと、病院の白い部屋のベッドの上で、チューブが付いた状態で寝かされている僕の姿が見えて来た。


「あれが、僕……?」

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