第9話 不都合な事
その夢を見た朝、起きてすぐ忘れないように、お母さんに話したんだ。
「お母さん、知ってた? 彦星は、もう亡くなっていたんだよ! だから、お盆くらいの旧暦の七夕に織姫と会うんだって!」
あの時、お母さんは、唐突な僕の話に目を白黒させていた。
「大丈夫、
僕の頭がおかしくなったと思い込んでいるような目付きになって見ている、お母さん。
「本当だよ! 僕、夢の中で教えてもらったんだ!」
「バカらしい!
そんな風に僕の夢をすごく小馬鹿にしながらも、その時、何だか妙に、お母さんはうろたえていたんだ。
それはもう、今まで、そんなお母さんを見た事が無いくらいに……
まるで、僕が夢の中で、他に何かを伝えられると、都合悪い事でも有るかのような感じだった。
その時はまだ気付かなかったけど、お母さんは、多分、恐れていたんだ。
僕が、そういう変わった夢を見るような感じの子供だったら、もしかすると、本当の母親が夢に出て来る可能性も有り得るかもって、感じて恐れていたのかも知れない。
お母さんは、僕をあんなに冷遇するくせに、なぜか、僕が、本当のお母さんの存在に気付くのを恐れているような感じがするんだ。
そうじゃなかったら、お父さんの前だけじゃなくて、僕の前でも、僕が継子だっていうホントの事を話して、もっと蔑視していても不思議は無いのに。
お父さんならともかく、あのお母さんに限って、真実を話したら、僕が傷付くから可哀想だから隠しておこうとか、そういう気遣い出来るような人柄では全然ないと思うんだ。
だから、隠しておくべき別の理由が、きっと、お母さんには有るんだ!
その理由が何なのか、気になる事は気になるけど……
でも、もういいんだ!
どっちみち、もう僕は、この家で必要とされてないって分かったから!
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