第6話 出逢った順序

 僕の実母の方が悪者……

 本当にそうなんだろうか……?


 継母が、勝手に自分にとって都合良く、話を持ったり、でっち上げているのでは?


 翌日、継母がのんびりとお風呂に入っていて、哲矢がゲームをしている時を狙って、お父さんに問い詰めた。


「お父さん、ちょっと聞きたい事が有るんだけど……」


 継母がお風呂から戻って来る前に、さっさと聞き出してしまわないと。


功薙いさなの方から、お父さんに話してくるのは珍しいな。一体、何だい?」


「昨日の夜の事なんだけど……僕、喉が渇いて、台所に行ったら、お母さんと話していた事、聞いてしまって……」


 僕の言葉に対して顔色が変わった、お父さん。


「お母さんとの話、聞いてしまったのか、功薙いさな?」


「あの話は、本当なの……? 僕にとって、お母さんは継母なの?」


「いや……それはな、功薙いさなが高校生くらいになったら、話そうとは思っていたんだよ……」


 慌てふためいた様子で、たどたどしく話し出したお父さん。


「そうなんだ……本当なんだね。じゃあ、僕の実のお母さんは、悪女っていうのも、本当なの?」


 それは、継母が、自分を正当化する為の方便だったって信じたい!


「悪女なんかじゃないよ! 功薙いさなのお母さんの由希は、とてもキレイで優しくて、お父さんにはもったいないくらいの素晴らしい人だった」


 初めて聞いた、お母さんの事……


 お母さんは、由希って名前なんだ……

 

 とてもキレイで、優しくて、もったいないくらいの素晴らしい人……

 お父さんが、こんなにも人を褒めるのを初めて聞いた!


「じゃあ、僕のお母さんは、お父さんを奪った悪女ではなかったんだね......」


 そんな素晴らしいお母さんを悪く言うなんて……

 やっぱり、継母こそ悪女だ!


「ただ、出逢った時期が遅過ぎたんだ。今のお母さんとお父さんの方が先に結婚していて、なかなか子供が出来なかった。お母さんもかなり神経質になっていたし、家にいる時はケンカばかりになった。ちょうど冷却期間と思って、半年の単身赴任期間中、お母さんと離れて暮らしている間に、由希と出逢ったんだ......」


 えっ……

 それって、やっぱり、不倫って事なんだよね……?

 僕は、お父さんの不倫相手の女の人から生まれた子供だったの......?

 

 そんなのって……


 お父さんは誤魔化そうとしていたけど、中3の僕にだって、ものの善悪くらい、もう分かるよ。

 

 悪いのは、お父さんとお母さん!

 継母は、悪く無かった!


 継母は、お母さんが亡くなって、身寄りが無くなった僕を仕方なしだったとしても、育ててくれた命の恩人だったんだ……


 今なら分かるよ。

 継母がどうして、僕をこんなに嫌っているのか……

 僕が継母の立場だったとしても、同じ事をしていたかも知れないのだから。

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