第5話 哲矢との違い
さっき、お父さんが庇ってくれて、嬉し泣きしそうになっていた矢先、今度は、全く違う気持ちで、涙が手の甲に流れ落ちた。
哀しかった……
僕は、今まで、どんなに努力しても、決して好かれる可能性なんて無い中で、知らずにひたすら努力して来たんだ。
お母さんの関心を僕に少しでも向けてもらう事だけ考えて、こんなにも頑張って来たのに……
世の中には、どんなに頑張っても無駄な事って有るんだね。
だって、僕は、お母さんにとって、憎い女の産んだ子供だったんだから。
好いてもらおうと思うなんて、そんな望み自体が、そもそも間違えだったんだ!
継母が義理の息子を可愛がるわけがない。
それならば、僕の本当のお母さんはどこにいるのだろう?
心の中での疑問が伝わったかのように、お父さんの口が開いた。
「
僕のお母さんは、僕が小さい時に亡くなっていた。
それで、お父さんは、今のお母さんと再婚したんだ。
そして、2人の間に出来た子供が哲矢。
だから、2人は、哲矢が可愛くて、すごく大事なんだ!
だから、お母さんは、僕がキライで憎いんだ!
僕がどんなに差別を感じながら素直に応じても、どんなに勉強を頑張っても、お母さんは、今まで一度だって褒めてくれる事なんて無かった。
「どこが可哀想なのよ! いきなり現れて、私から、あなたを奪い取ったような悪女なんかの子が! あの女、きっと罰があたって、早死にしたんだわ! 当然の報いよね!」
悪女……?
僕の本当のお母さんは、継母から、お父さんを奪い取って、僕を産んだ。
罰があたって早死にした……?
それじゃあ……
悪いのは、継母ではなかったんだ……
悪者は、継母からお父さんを奪っていた僕の本当のお母さんの方だったなんて……
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