第3話 条件。
今までであれば選択肢だけが現れるはずが、自宅の場合は違った。
『ここは賃貸物件です。どのような死に方を選んでも、必ず他者に迷惑をかけるということを念頭においてください』
「なるほど、そういうこともあるのか。じゃぁ、自宅でってのは考えられないな」
俺の条件には迷惑をかけないというのがある。
必ず迷惑をかけるのであれば、前提条件から外れてしまうわけで、この場所は完全に除外することになった。
このゲーム、単純なように見えて意外と難しい。
ただ死ねばいいだけならなんてことは無いのだろうが、条件付されていて、さらにロケーションが複雑になっているため、考えることが多い。
とにかく自宅での方法はどれも駄目なようなので、はじめの場所選択の画面に戻ってきた。
条件に照らし合わせると「人知れず」という条件に「街」は当てはまらないだろう。
更に、「ネット」は複数の死に関するサイトがある形だったが、殺人依頼をするにもお金がかかるし、集団でとなると余計に条件から外れているような気がする。何より、依頼を出したところでただのいたずらの可能性もあって、確実に死ねるかといえばわからないところが多い。
そうすると「海」か「山」になる。
とりあえず、先程は1箇所しか見なかったこともあり、「山」を選択した。
選択肢は「崖」「滝」「橋」「廃屋」「戻る」の5つ。
いくつか選択肢を選んでみると、方法が1つのものや数種類あるものがあり、1つの場所に1つの方法というわけではなさそうだった。
ただ、一体何処の山を参考にしているのかわからないが、そのどれもが、『入山記録により捜索隊が結成されます』とか、『有名なバーベキューエリアです』とか。とにかくロケーションの条件が非常に厳しい。
唯一大丈夫なように思われたのは「廃屋」だが、それも『このあたりの気温が低いため白骨化まで時間がかかり、その間に発見される可能性があります』と言われる始末。
「っていうか、これ、山で死ぬなって言われてるようなもんじゃないか? 条件付が厳しいな」
仕方なく、今度は「海」を選択した。
海は沖に流されてしまえば遺体は見つかりにくくなるし、地上に比べれば腐敗も早いだろう。ということは、条件に当てはまる可能性が高い。
とりあえず、「船」という選択肢を選んで見る。
「釣り船」「観光船」「手漕ぎ」等々の船の種類が現れた。
しかし、他の誰かがいる船だと迷惑がかかるし、自分一人でとなると船を調達するためにお金がかかってしまう。
「船はなしだな」
一度もどって選択肢を見直すが、「海小屋」も「浜辺」も条件にはきっと合わないだろう。
「条件付に合うとすれば、岸壁か」
「岸壁」を選ぶと「港」「岬」とあらわれた。
「港」を選ぶと『潮流の関係で遺体は必ず岸に到達します』といわれ、「岬」を選ぶと飛び降りる位置を選ぶ画面になる。
左側「1」から始まり、岬の先端が「6」、最後が「12」となっていた。
『飛び降りる場所により、流れが違うため、沖に流される場合と、岩場に流れ着く場合があります。沖に流されると海流に乗り、大海原へと旅立ちます』
「条件に当てはまるのはこれしかないよな。あとは飛び込む場所だ」
上空から眺めたような岬の海面部分に矢印が書いてある。
岬は尖ったほうが下で、一部矢印を除いて大半は右から左に流れていた。
「矢印的にこの岬の先、少し左側かな。流れとかよくわかってないけど、右側は全部岸に当たるし、左側も少しカーブして岸に向かってる気がするから違うと思うんだよな」
選択肢の「7」を選んで決定する。
『これでよろしいですか?』
少し迷ったが、色々見た中でおそらくこれが一番条件にあっているはずだと「はい」を選択した。
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