あなたへインタビュー
藤間伊織
3…2…1…キュー
「大学入学おめでとう。」
「ありがとう。そっちも大学入学おめでとう」
「ふふ。ありがとう。えーと……今の夢はなんですか!」
「ええ?急になに~?」
「いいから。答えてください!」
「そりゃあデザイナーだけど」
「そのために大学入ったんだもんね」
「そうだよ。というか、何さっきから。ずーっとにやにやしちゃって」
「誤解されるから、にこにこって言ってほしいな」
「にやにやしてるじゃない」
「してないって~!……んん。えーでは、高校生のときの夢はなんでしたか」
「続けるのね……。今と同じデザイナーです」
「そのころから目指してたね」
「うん。……知ってるんだったら聞く意味ある?」
「あるよ。デザイナーに興味をもってからは、仕事のこととか学校のこととかたくさん調べて、服もずいぶんおしゃれになった」
「む。最後のは余計じゃない?」
「へへ、ごめん。では、中学生のときの夢は?」
「え、中学生……?なんだっけな……パティシエ?……ゲームクリエイター?……あふふ、女優さんとか?」
「素直に覚えてませんって言っていいよ?」
「ありゃ、ばれたか。」
「ばればれ。中学生のときは迷ってたね~。周りの子が将来に希望いっぱいって感じだったから、余計変に焦ってさ。」
「あ~、そうだったかも」
「なんとなく周りに合わせてることもあったっけ?『高校も同じところ行こう!』なんて」
「そういうお年頃だったね~」
「小学校の頃の夢はなんでしたか?入学頃と卒業の頃では変わってたけど」
「いつのまにか、そっちが主導権握ってない?小学校のとき……あ、確か天文学者だったかな。でもなんでだっけ?」
「それは、あなたが校外学習で見たプラネタリウムにつよーく影響されたからですよ。見終わった後、星に負けないくらい目がキラキラしてたっけ」
「あはは、言いすぎじゃない?そういえば、そうだったかも。で、小学校入学ぐらいは違う夢だったんだっけ?残念、もう覚えてない!」
「お嫁さん」
「へ?」
「まあ、これは幼稚園のときからだからちょっと難しかった?周りの子が具体的な職業出している手前、恥ずかしくなって誤魔化してたけど本当は変わってなくてさ。流されやすいのはそのときからあんまり変わってないよね~。」
「そんなことなかったと……」
「『お父さんと結婚するんだ!』とか『将来は先生のお嫁さんになるの!』とか。『大人になったら何になりたい?』って大人に聞かれるたび、自信満々に言っちゃってさ。今思えばちょっとおませさんだね。確か親戚のお姉さんの結婚式に出席してから一層あこがれて、絵もよく描いてなかった?」
「も、もう覚えてないよ!そんなこと言ってないし!」
「あ~その顔は絶対覚えてるでしょ。赤くなってるよ?」
「うるさい!」
「あはは。また赤くなった。面白い」
「もういいでしょ!いい加減止めてよー!」
バタバタ。画面の暗転。そこでビデオは終わっている。
ジー いう音とともにディスクが出てくる。「ホームビデオ ♯1」。
それを取り出し、
「ねえ、撮ってよかったでしょ?面白かった?」
と後ろの3人に問いかけた。さっきまでおとなしくしていた兄妹はきゃあきゃあと言い合い、その二人にはさまれた人物は少し顔を赤くしたまま何も言わない。
それでも満足そうに次のディスクに入れ替えた人物は、再び元の位置に座り、変わらぬ様子でテレビの方を見始めた。
「こっちばっかり問い詰められてるみたいでなんかやだな~。よし、では、あなたの夢はなんですか」
「え~なんだろうね~」
……幸せな家庭をつくること、かなあ。
へえ、意外……でもないかな なにそれ…… あれ、照れてる? いや?
そんな楽し気なやり取りが続いていく。
あなたへインタビュー 藤間伊織 @idks
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます