第19話 夏休み


 統選者選抜の開始から約一か月。今後の戦いに備え必要なことをしに何度か外に出掛けたが男子児童との戦いの日から他の参加者とは誰一人として遭遇していない。人数は約千人まで減った。それ以外、特に変わったことはない。

 目の前で人体が爆発するところを見た保であったが、驚き以外の感情は不思議と湧いてこなかった。これも、あの男子児童が言っていたマイクロチップによる影響なのだろうか。

 力を使って男子児童を取り出しあの日の話の続きを聞くことはできるが、目の前で爆散した男子児童の姿が脳裏をよぎる。あれは外部からの攻撃。統選者選抜の参加者の可能性も捨てきれないが話していた内容とタイミングから政府関係者の可能性が高い。どこで誰がなにを聞いているのか分からず、下手に関わると今度は自分が狙われるかもしれない。なので保は男子児童を、秘密を訊く目的以外で一度だけしか取り出していない。あの日のことを思い出しあれこれと考えている間に学校に到着した。

 先ほど変わったことは特にないと言ったが、そういえば学校で変わったことが一つあった。一年生の人気者だった女の子が急に他の子からハブられるようになったみたいなことを風の噂で聞いた。

 本当かどうかは知らない。

 高校はもうすぐ夏休みに入る。

 うちの学校では夏休みの最初の二週間の間、各学年に対し大学受験用の特別授業が行われる。

 参加は自由で保は参加するつもりはない……そのつもりだったのだが、

「なー参加した方がいいって。ためになるって」

「他の奴、誘え」

「保がいいんだよー。お願いだよー」

 純水がクラス中に聞こえるくらい大きな声で言う。

 その声を聞いたクラスの一部の女子がなにやら盛り上がっている。

 純水が保の手を握る。それを見て一部の女子がさらに盛り上がる。

 純水があまりにもしつこく言ってくるので、保は結局特別授業に参加すること

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