第14話 力
「で? どうすんの? 逃げんのか?」
男は指の骨をポキポキと鳴らす。
「逃がしてくれないだろ」
「ああ」
「統選者には興味ないのか?」
男は帰らせるつもりがないのか、保に質問を投げかける。
「ないな今のところ。お前はあるのか?」
「はは、そういうところまで一緒なのかよ。運命さえ感じるな。俺も統選者なんていうものに興味はない」
「じゃあ、なんで俺を殴りにきた? 統選者を目指しているわけでもない、俺がお前に危害を加えたわけでもないのに」
「おいおい、この統選者選抜は殺し合いのゲームなんだぜ。自分を殺しにかかってくるかもしれない相手を野放しなんかにしないだろ。人を殺すことに抵抗のある奴か自殺志願者でもない限りな。目の前にいきなり参加者が現われたら牽制も兼ねて攻撃するだろ?」
「俺の記憶では、牽制というより仕留めに来ていたように見えたんだが」
「感じ方は人それぞれだろ?」
保は男の言うことを信じることはできなかった。
最初に飛んできたあの拳には間違いなく殺気が込められていた。
とても男の言う牽制のためなどとは思えない。
統選者選抜、殺し合いのゲーム。
相手の言うことを信じろという方が無理である。
そもそも男の目的がわからない。
男は保を帰らせる気はないと、すでに口にしている。
となるとこの場でやることは相手を殺すの一択。
なら会話などせず殺しにくればいい。
会話で隙を与えて反撃のチャンスを作らせるようなまねはしないだろう。
時間をかけることに意味があるのか?
相手を殺すという状況と男の行動に矛盾が生じている。
それにしても、
「よくしゃべるな。会話をしたいというのは本当らしい」
「会話してくれる気にでもなったか?」
「いや、まったく」
「あっ?」
「どうやったらあんたのダルがらみから抜けだせれるのか考えていた」
「ダルがらみってなんだよ。普通に会話楽しんでんだろ。さっきも言ったけどよ俺この見た目だから避けられることが多いんだよ。しかも力も強いってもんだから俺が触ったものはすぐ壊れる。わざとじゃないって謝るんだけど、信じてもらえず暴力振るってみんなから嫌われる。そんな人生なんだよ。だからお前のような奴と会えて俺は嬉しんだよ。もっと会話しようぜ」
「この場を見逃してくれるなら、会話に付き合ってやってもいい」
その言葉を聞いて男は黙考する。
「いやさ、話す方の会話もしたいんだけどよー、殴り合いも楽しみたいんだよ。俺が誰かと喧嘩しても相手はすぐ壊れる。つまんねんだよ。でもこの統選者選抜じゃマイクロチップによる制御がとれて力を使えるようになるだろ? そしたら少しは楽しめそうじゃんか。それにさっき頭の中に浮かんだこの力は俺にとってうってつけの力だ。だからさー帰らずに俺と付き合ってくれよ」
男が口にした力という言葉。
この世界の人間には生まれながらにして特別な力をもって生まれてくる。
しかし、その力は日常生活で使用することはできない。
なぜなら、赤子の頃に埋め込まれるマイクロチップにより常時使えない状態にされているからだ。
統選者選抜のルールにあるマイクロチップの一部制限の解除。統選者選抜の参加者は特別にその力を統選者選抜の期間中のみ使用することが許可されている。
同じ参加者を殺すことに対しての使用を。
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