第12話 殺し合い
二人とも何が起きたのかすぐに理解できず、その場で数秒間固まっていた。
しばらくして状況を理解した男の視線がゆっくりと保に向けられる。
「おいおい、いきなりかよ」
男はそう言うと両手を自分の太ももに置き「よっこらせ」と言いながらその場から立ち上がり、いきなり保の顔めがけて右拳を振るってきた。
保は瞬時に後ろに跳び両手を顔の前にもってきて顔を守る。
男の拳が商品の入ったレジ袋に触れた。
後ろに跳んだ保はそのまま後ろに下がり男と距離をとる。
「……」
下がったところで保は気が付いた。
レジ袋の底が少し破れ、買ったいくつかの商品が保と男の間に落ちている。
保は残りの商品が落ちないようにレジ袋を持ち直す。
「逃げんなよ」
「いきなり殴りかかってこられたら、反射的に避けると思うが」
「なんだ? 俺と話せるのか?」
男は嬉しそうに言う。
「何言ってんだ?」
「俺を見て会話する奴は珍しいよ。大体の奴は黙るか無視してくるからな」
人を容姿で判断するなと言われても男の容姿を見ればそういった態度を取ってしまうのも分かる。
「俺だってしないで済むならしたくはないな」
「そう言わずに会話に付き合ってくれよ。会話なんて店の店員との業務的な会話しか最近してなくてよー」
「悪いが床に臥している妹に会いに行くから、無理だな」
「嘘を吐くならもっとまともな嘘言えよ。悲しくなるじゃねえか」
「とりあえず、落とした商品弁償してもらっていいか?」
男は足元の商品に目を落とす。
「落としただけだろ? まだ、食えるし飲める」
「人それぞれだろ? 俺は気にする」
男は少し微笑んだ後、次の言葉を吐いた。
「必要ないことにお金を使いたくないなー。だって──これからどうせ死ぬんだし」
統選者選抜における参加者の中から統選者をどのように決めるのか。
国民の多くはそのやり方に疑問を抱いていない。
それどころかお祭りのように楽しみにしている人物もいる。
『この参加者同士の合法的な殺し合いを』
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