第11話 統選者選抜開始
買いに行くなら早い時間でと服を長袖シャツとチノパンに着替え財布を持って家を出た。近所にコンビニがないので通学路の途中にあるコンビニまで自転車で向かう。
今日も暑い。時間は九時前にもかかわらず気温はすでに三十℃を超えていた。まだ大丈夫だろうと思って着てきた長袖シャツは間違いだったかと今になって後悔する。
コンビニに到着した。
コンビニ前のゴミ箱横には白のノースリーブに黒いボンタン姿をしたガラの悪いリーゼントの男がスマホで映画を見ていた。このガラの悪い男のせいかコンビニの前を避けている人がちらほらいる。他にもコンビニに来たのだろうという人がこの男を見ると体を一八〇度回転させてどこかに行く。
保はそんな男の事を気にすることもなくコンビニ脇に自転車を止めて店内に入る。
コンビニは冷房が効いていてまさに天国。
ここで涼んでから帰ろうとも思ったが帰りが遅いと有に何か言われそうと思い、適当なアイス五個とスポーツ飲料一本、ジュース二本をサッとかごに入れて会計を済ませた。
商品の入ったレジ袋を片手に天国から地獄への一歩を踏み出した時、スマホのメールの着信音が連続で鳴る。
前回のメールから一週間して政府から新しいメールが二通。
どちらも『統選者選抜の開始を知らせるメール』で一通は国民全員宛、もう一通は参加者宛。どちらのメールも内容が一部変更されていた。
変更内容は
・参加者へ参加者一覧を送ることができなかったため、体に埋め込まれているマイクロチップの犯罪用の音が鳴る機能を参加者が目視可能な二十メートル以内の距離に近づくと十秒間だけ音が鳴るように調整(犯罪時とは別の音に変更)
・統選者選抜の開始時刻を本日の九時からとする
・同時刻からマイクロチップの一部制限の解除
・統選者選抜の進捗状況により、途中ルール変更や政府が介入する場合あり
「これなら顔が分からなくても問題はないか」
保がスマホに表示されている時間を見ると、丁度時間が八時五十九分から九時へと変わるタイミングだった。
その瞬間、頭が一瞬ズキッとして脳裏に何かが浮かんだと思うと、ピピピという音が二カ所同時に鳴った。
音の発生源は一カ所は保。
そしてもう一カ所は……保が視線を向けた先、コンビニ前にいたガラの悪い男だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます