第4話 俺は知る

 学校に到着するとすでに登校していた生徒たちの話題は近いうちに行われるであろう統選者選抜でもちきりだった。

「次の統選者様はどんな人だろう」とか、「統選者様の選抜初めて見る楽しみー」といったどこかで聞いたような内容の会話が聞こえてくる。

「統選者選抜、楽しみだなー」

「お前もか」

「え?」

 数少ない友人の純水が話しかけてきた。

「みんな同じような会話しているなーと思って」

「そりゃーそーでしょ。統選者様決めるイベントなんだから」

「他に話す話題いくらでもあるだろ?」

「例えば?」

「昨日見たテレビ番組とか、最近あった面白い話とか」

「昨日テレビなに見た?」

「ニュースだけ」

「最近面白いことあった?」

「ないな」

「……」

「……」

「とうせ……」

「聞き飽きた」

 保は顔を机に突っ伏す。純水は保の話したくない空気を悟りどこかに立ち去って行った。時間が経つにつれ登校してきた生徒の数も増えてきて、教室内の話し声はどんどん大きくなっていく。

「うるさい……」

 時間は間もなく八時三十分。

 チャイム音が鳴るのと同時にガラガラと教室のドアを開ける音を立てながら先生が入ってくる。朝のホームルームが始まったと思ったら一限目、二限目と、授業が始まっては終わりを繰り返す。昼休み、純水と机を合わせて昼食をとる。さすがに昼休みになると純水も含め生徒たちの会話内容はたわいもない話に戻っている。三、四限目が終わりトイレに行って教室に戻る最中、何やら各教室が賑わっていることに気が付く。

 ケンカか? 告白か? よく観察すると、どの生徒もスマホを見ている。

 保は教室に戻り机の横に掛けてある学校指定のカバンの中から自分のスマホを取り出す。スマホの電源を入れロック画面のパスワードを打ち込みスマホを開くと、メールが二通、数分遅れで届いていた。送信者は政府。

 一番新しいメールから確認すると、メールの題名は【国民の皆様へ 統選者選抜の開始について】とあった。

 メール内容にざっと目を通す。

 内容は統選者選抜についての一般的なルールと概要みたいな感じだった。


 

 内容をまとめると


・統選者選抜の開始は明日午前零時から開始

・統選者選抜は毎日、二十四時間とする

・同時刻から統選者選抜参加者のマイクロチップによる一部制限の解除

・犯罪行為の禁止

・統選者選抜への非参加者の参加は禁止

・終了は統選者選抜参加者が最後の一人となり統選者が確定した時点とする

・詳細やQ&Aは特別サイトに掲載


 と大きくまとめるとこんな感じだ。

 Q&A特別サイトへのURLはメールには貼り付けられていない。自分で検索しろということか。

 続いて、先に届いていた方のメールに目を通すと、題名は【統選者選抜参加者様へ】と書いてあった。

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