第3話 マイクロチップ
翌日の朝。
保が学校までの道を自転車をこいで進んでいると、少し先の路地裏から焦った様子の男が飛び出してきた。男からはピーという甲高い大きな音と共に「離れてください」という機械音声が繰り返しずっと鳴っている。
その音と音声を聞いて幾人かの周辺住民が家の中から顔を覗かせている。
男の後ろには警察官と思われる二人組の人物が迫ってきていて、あっという間に男に追いつき男を後ろかろ路上に押し倒した。警察官が男に手錠をかけると男から鳴っていた音と音声は全て消えてなくなり、辺りに束の間の静寂が訪れる。
鳴っていた音と音声の発生源は、男の体に埋め込まれているマイクロチップからだ。
この国では法律で国民全員が赤子の頃にマイクロチップを体内に埋め込むことが義務付けられている。マイクロチップにはその人物の今までの会話内容や行動などの記録がすべて保存され、そのデータは国の監視省が管理している。蓄積されたデータからはその人物の思考や思想、行動が分析されていく。これにより将来的に犯罪を起こす可能性がある人物はあらかじめ候補として挙げられ、特に危険と思われる人物に対しては監視省内の実行部隊が対象人物を監視する。
チップには他にも様々な機能と役割がある。さっきの音と音声は犯罪を犯した人物が逃げ隠れできないように犯罪者と確定された時点で鳴る仕組みになっていて、犯罪発生からの迅速な犯人確保だけでなく犯罪の抑制にも一役買っている。
警察官が保に気付き通行の邪魔にならないように男を道の端に連れていく。
保はその横を何事もなかったように通り過ぎ学校へと向かった。
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