第4話

 吹 雪  2


 「ホ、ホ、ホ、ホ、ホ、何をおどろいているの。わたしは、雪の精よ、一年に一度、わたしは良い子の家を訪れるのです。そうして、良い子の夢をかなえてあげるのです。健太くんはとっても良い子です。お父さんとお母さんはいないけれど、いつも元気に明るく学校に通っています。それに、健太くんは今夜も良いことをしたわね。疲れているおばあさんの肩を叩いてあげたでしょう。健太くんは、自分がとっても疲れているのに、それを我慢しておばあさんの肩を叩いてあげたわね。ほんとうに、健太くんはやさしい子。わたしは、雪の精よ。良い子の家を訪れて、良い子の夢をかなえてあげるのです。さあ、健太くん、何でもいいのよ。健太くんの夢をわたしに話してください。その夢を、わたしが必ずかなえてあげます。」


 しかし健太はまだビックリしたままでいました。それに、健太には、その声がどこかで聞いたような気がするのです。健太は思い出そうとつとめましたが、でも、やはりわかりませんでした。

 「なぜ、黙っているの?健太くんはたくさん夢があるでしょう。健太くんの一番大きな夢をわたしに話してください。わたしが、その夢をかなえてあげます。」


 雪の精は、そのように繰り返しました。健太は、雪の精をまじまじと見続けていましたが、雪の精の言うこともよくわかります。それで、

 「ほんとうに、ほんとうに、ぼくの夢をかなえてくれるの?」と訊き返しました。そうして、じっと、目の前の雪の精を見つめました。

 「ほんとうよ。良い子の夢をかなえてあげるのが私の使命なの。」と雪の精はこたえました。すると、突然、健太は大きな声で、

 「お父さんにあいたい、お母さんにあいたい。」と叫びました。それから、「お父さんとお母さんと一緒に遊びたい!」と訴えました。


 「やはり、そうなのね。」と雪の精がこたえました。

 「健太くんは、お父さんとお母さんが大好きなのね。わかったわ、それではこれからお父さんとお母さんのところに連れて行ってあげます。」

 「ほんとう?ほんとうに連れて行ってくれるの?」と健太はまた半信半疑で訊き返しました。

 「ほんとうよ。良い子の夢をかなえてあげるのがわたしの使命なの。」と雪の精は、繰り返しました。


 すると、雪の精は、健太の前の空中をゆっくりめぐって、健太が先程折ろうとしていた一枚の紙の上に止まりました。それから、「かぁーみよ、かぁーみ」と雪の精は、きれいな声でゆっくり唱えました。

 「この子ために、大きくなぁーれ、よい子のために、大きくなぁーれ。」

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