第2話 使用人の非現実視聴

今日もお嬢様の周りのことを完璧にこなす。

家事や話し相手など、すべてにおいてお任せくさだい。

私は白木美優様にお使いする使用人、佐藤瀬里。

お嬢様はもともと大きなお屋敷のお嬢様でしたが、海外組織の襲撃により小さなアパートで二人暮らし。

正確には、お隣さんとそのお隣さんとかなり情報や食事などを共有しているのですが、お嬢様のことを一番気にかけるのはこの私。

私は本当はお嬢様のことを一番に気にかけなければなりません。

しかし、最近お嬢様以上に気になってしまう人ができてしまいました。

窓から空を見ればほら。

火だるま状態で走り回るあぐらくん・・・。

あぐらくん今度は引火かしら。

この前は全身泡だらけでペンギン滑りしながら移動してましたし、あの子やはりおかしい。

あの子は同じ高校の後輩なのですが、学校では基本的にはおとなしい。まるで本人じゃないみたいに。

お嬢様が真似するわけないとは思っているのですが、正直教育に悪い行動しかしていません。

ここは、先輩として、お嬢様の使用人として注意をしなければ。

窓を開けて「あぐらくん、少々やんちゃすぎなのでは」話しかけると「水!みずぅぅぅ!」とこっち向いて叫び始めました。

事故引火みたいです。

お風呂場からシャワー引っ張ってきてお水をかけてあげると「いやーありがとう!助かったー!」とお礼。いい子みたいなのですが、野蛮にしか見えない。

「美優がさ、車用のガソリン俺にぶちまけちゃってさーそれで温めるためとか言ってガスカイロつけて引火。死ぬかと思ったー。」

・・・お嬢様。

お嬢様、私はどうすればいいのでしょうか。

取り返しのつかないことをご主人様がしている場合使用人の私はどう責任を取るのが正解なのでしょうか。

「あぐらく・・・あぐら様、この度は・・・まことに・・・」

「あーいや、俺がバイクに入れるガソリンを伊藤の車から吸い出してきてって頼んだのが原因だから。」

堂々と泥棒させてました。

こいつ堂々とお嬢様に泥棒させてました。

お嬢様がガソリン泥棒の実行犯になってました。

「あぐら・・・いえ、この状況は叱りにくいですね。」

泥棒させていたとはいえ、お嬢様があぐらくんに全身やけどを負わせたことには変わりありません。

「あぐらくん、今回の件はお互いなかったことにしましょう。」

「あ、うん。わかった。」

この子にはお嬢様と私を救っていただいた恩があるとはいえ、要注意でしかないです。

「じゃ、瀬里のバイクあと2時間で修理完了するからまた後で。」

ガソリン盗んだ理由私にありました。

そういえば・・・。

「あぐらくん。」

「はい?」

「なぜこの前あわあわでペンギン滑りしてたのですか?」

私の謎、どうせなら無くしておきたいところです。理由によってはあぐらくんへのイメージを改変しなければいけません。

しかし、あぐらくんは瞳孔を赤く光らせて言いました。

「・・・忘れろ。」

謎は増えるばかりです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る