第二章 儚い国エデン
第一話
「おいおい、こんなことでばててたらこの先の旅も付いていけないぞ」
「いやいやおかしいでしょ! ざっと4時間は休まずに歩いてるじゃん!」
「大丈夫だって、もう少しでつくから」
「それ4時間前にも聞いたんですけど!」
俺等4人は勇の勝手な思い付きでとある国まで歩いていた。
一週間前、俺を含んだ4人の感情のないメンバーは、勇の「旅をしよう!」と、先のことを何も考えていなさそうな考えで、興味もない「旅」に強引に付き合わされることになった。
そして一週間たった今、こうして4人の初の旅が始まっていた。
「というかなんで4時間も休まずに歩かないといけないの……」
「旅楽しそう! って快離自身が言ってたじゃねぇか」
「旅は楽しそうだよ! けどこんなに歩くなんて聞いてないよ!?」
肩で息をして文句を言っているのは「快離」。
長い金髪に派手に着飾った魔法使いと思えない彼女は普段の性格とは一変してネガティブな言葉をツラツラと並べている。
普段の性格は明るく「疲れ知らずのムードメーカー」であるのに「辛さ」はここまで人を変えるのか……
「まぁいいじゃん、のんびり雑談なんて普段できないんだから」
「全く歩いてない和颯にだけは言われたくないんですけど!」
快離と違って疲れを出さず旅を謳歌している俺は「和颯」。
快離の言う通り、俺は道端に生えていた木を切り倒しそれを浮かせ跨っていた。
全く歩いておらず、しかも雑談を楽しんでおり旅をことごとく否定していた頃が懐かしくなる。確か一週間前のことか?
「いいなー、私も乗せてよ?」
「これはチートを持ってる俺の特権だ、って何回言えばわかる……」
「だって! そんなこと言いながら後ろにクズ乗せてんじゃん!」
「快離さん、騒がしいですよ。もう少し黙って歩くことできないんですか?」
「このクズ……っ! 次はあたしが乗せてもらうからね!」
「それは考え物だな……」
「理不尽じゃない!?」
俺の後ろで涼しい顔をして笑っているのは「葛楽」。
名前に「葛」が入っており「クズ」と呼ばれている。
そんな理由のほかに俺の名前が似ているというのもある。3文字中2文字も同じだと分かりにくい。
そもそも名前が似ているのは偶然とはいえ俺が感情のないメンバーに入るきっかけになった。そう思えばこの名前に不快感を覚えないと自分の中で唱える。
正直名前が似ているのは嫌だ……日本のように苗字があればいいのだが。
ちなみにクズは後ろに乗らせる代わりに持ち物を持ってもらうと交換条件を設けていた。
「どうせならあたしも乗せてよ!」
「どうせって……どう見てもお前が乗れる幅がないだろ」
「詰めたりもできないの?」
「無理だな、お前は歩け」
「無茶言わないでよ……」
「おいまて、俺だって4時間歩いてるんだぜ?快離ももう少し頑張ってみろよ」
「一緒にしないでくれるかな、あたしはこれでもか弱い乙女なんだけど」
快離と一緒に4時間歩いているにも関わらず平気な顔をしているこいつは「勇」。
橙色をした綺麗な髪を汗一つ付けずになびかせていた。
普段から動くことの多い勇は体力も多く快離とは違って涼しげな顔を見せた。
「やる気に男も女も関係ないぞ!」
「そーだそーだ、もっと動け」
「関係あるから! ジェンダーとかLGBTとか言ってるけど体は変えられないから! どう頑張っても男に勝てないから!」
「あ、目的地見えてきましたよ」
「ほんと?! ほらみんなもうちょっと! 男女言ってないで走ろ! やっぱり旅って楽しいね!」
そういうと快離はさっきまでの疲れをまったく感じさせないほど速く走っていった。
「あいつのキャラほんとにわかんねぇな」
「キャラというか、なんか無茶してる気がしますが……」
「まぁポジティブなだけましだな」
「それは俺に言ってるのか?」
「さぁ?」
「二人とも喧嘩してないで快離さんの後追いますよ!」
そういうとクズは丸太から降りて勇の腕を引いて走り出した。
「まてまて! 二人とも俺を置いていくんじゃない!」
俺も木から降り歩いて行った。
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