第3章 探偵業務
第37話 美咲探偵事務所(閑話1)
ー 月本国,千雪御殿 ー
千雪は,魔界で霊体を修復に成功して,3ヵ月ぶりに月本国の千雪御殿に戻ってきた。
千雪人形「千雪,戻ってきたのね。治ったのね。おめでとう。治ると思ってたわ。
千雪は,千雪のラブドールとして創られた人形が千雪とそっくりな声を出して話すのを聞いてびっくりした。
千雪「え,なんで人形がしゃっべてるの?え???それに,私の声にそっくりだわ」
千雪人形「ふふふ,そうよ。私は,千雪なのよ。あなたの霊体の一部と霊力から創られたの。まだ,霊力が少ないから,声帯くらいしか創れないの。千雪の声に似せたつもりだけど,まだちょっと違うと思うわ。これでも努力したのよ」
千雪人形の声は,千雪にとってはまったく区別がつかなった。
千雪「声のことはどうでもいいわ。それより,千雪の霊体が分離した時のこと,詳しく教えてちょうだい」
千雪人形「ふふ。そうね。詳しく教えてあげる。千雪がこの3ヵ月間,ここで何があったかもね」
千雪人形は,千雪の霊体がどうして分離したのか,そしてこの3ヵ月間の出来事を詳しく紹介した。
詳しくと言っても,結局のところ簡単にしか説明できないので,30分程度で説明が終わった。
千雪「そんなことがあったの。じゃあ,あなたが,300年後のホーカになるのね?
千雪人形「300年後のことはわからないわ。自分がどうなっているんだか。いや,知らなくていいわ。どうせ300年後にわかるからね。それと,あの霊媒師は,今,どこにいるの?」
あの霊媒師とは花子のことだ。自分の霊体に傷をつけた人物だ。
千雪人形「茜の事務所よ。茜の元で,ラブドール販売会社の営業兼モデルを担当をしてるわ。1000体の注文が来たんですって。これだけで粗利15億円よ。当面,霊媒師に復讐するのは止めたほうがいいわね。
というのも,今,彼女らは,警察に指名手配を受けているわ。呪詛で1000人が死亡してしまい,その容疑者として,花子と葉子が全国で指名手配を受けているわ。千雪が手を出すまでもなく,捕まって死刑になるわ」
千雪人形は,ここまで言って,溜息をついた。
千雪人形「でも,花子や葉子に植え付けた位置定位魔法陣,呪詛,反転呪詛は,ことごとく解除されてしまって,今,どこにいるのかわからなくなってしまったの。誰かが手助けしたとしか思えない」
そんな会話をしている時,千雪が戻ったと聞いて,リンリンが千雪の部屋に来た。
リンリンは,順調に営業を続けていて,何の不安もないのだが,千雪に新しい商売のネタがないか,さっそく尋ねることにした。
もっとも,リンリンは,茜やほかの皆と同じく,身重で,妊娠6カ月だ。でもつわりはまったくなく,いたって元気に仕事をしている。高級の社用車を準備したこともあり,移動などはスムーズで負担は軽い。新しく新人を採用すればいいのだが,仕事量がさほど増えないこともあり。控えていた。
リンリンは,千雪の部屋に顔を出した。
リンリン「千雪お姉さま。お帰りなさい。すっかり,元気になりましたね。嬉しいですー--」
千雪「リンリン,お腹の子は順調?商売も順調?」
リンリン「はい,どっちも順調ですー-。ですが,商売のほうでは,何か,あたらしいおもちゃがほしいです。千雪お姉様なら,なにか隠しだねを持っているのでしょう?」
今の千雪に,思考力などほとんどない。以前もなかったが,さらに輪を掛けてない。
千雪「人形はもう創ったし,,,,死霊体はだめだし,あとは,,,何にでも変身できるゴールデンドラゴンはだせるけど,もとになる霊体がないわ」
リンリン「じゃあその何にでも変身できるゴールデンドラゴンをお願いします。霊体なら,メーララさんが適当に捕まえてくれると思うわ。すぐにメーララさんにお願いしてきます」
リンリンは,教団に行ってメーララにお願いした。メーララはリンリンのお願いには,積極的に聞き入れている。というのも,メーララが得る報酬は,リンリンが稼ぐ営業利益の2割を受けとるという条件付きだ。
メーララにとって,浮かばれない霊体を確保することは,特に難しいことではない。なんせ,メーララの特殊能力,霊体を確保できる『魂奪の手』があるからだ。
千雪人形の周囲には,いくつかの霊体が浮遊していた。メーララは,若い女性の浮遊霊体を選んで,『魂奪の手』を発動させて,その霊体を確保した。
メーララ「リンリン,若い女性の霊体を確保したわよ。どこに収納すればいいの?」
リンリン「ありがとうございます!では,千雪お姉様に,すぐにゴールデンドラゴンを出してもらいます」
リンリンは,霊体を確保したので,ゴールデンドラゴンの肉体を出現してもらうように千雪に依頼した。
千雪は,メーララから霊体の浮遊している位置を聞いて,その霊体が,霊体収納核にうまく収まるように,ゴールデンドラゴンの肉体生成魔法陣を展開して肉体を生成させた。
ヒューーーー。
そこには,見かけが2mにもなる黄金のドラゴンだ。
千雪は,そのドラゴンに話かけた。
千雪「今,あなたはゴールデンドラゴンの肉体を得ました。まだ上手に操れないかと思いますが,このドラゴンの体なら,大きさを自由に変えることは可能です。さらに,訓練次第で,あなたの本来の人間の体に変身することも可能でしょう」
ゴールデンドラゴンの肉体を得た女性は,何がなんだかわからなかった。でも,とにかくも,現実の肉体をふたたび得たということは理解できた。
千雪「その体は,あなたの強いイメージで,少しくらいなら変身は可能です。痩せている体を太らすとか,おっぱいを大きくするくらいのことはすぐにできるでしょう」
若い女性のゴールデンドラゴンは,『はい』と小さく返事した。その後,彼女は,どこまで小さく変身できるのかを試してみた。すると,ゴールデンドラゴンの体は,だんだんと小さくなって,20㎝くらいになった。彼女が,実際にどこまで体を縮小できるか,試してみたかったからだ。
リンリン「きゃー-! 赤ちゃんドラゴンだわ。じゃあ,この大きさでパンダに変身できるの?パンダになってくれる?」
若い女性のドラゴンは,言われた通りパンダのイメージをした。しかし,まだ変身できなかった。
女性「まだ無理のようです」
千雪「練習すればできるようになると思うわ。これからは,リンリンと行動を共にしなさい。リンリン,彼女には,無理なお願いはしなしでね。どの体で商売するか,よく考えなさい」
その女性は,リンリンに従えと言われても,従う義理があるのかと疑問に思った。しかし,肉体をくれた恩義があるので,ここは黙って従うことにして軽く頷いた。
千雪はリンリンに貸与料について要求した。霊体が半分になって,知性が欠けたと言っても,金銭感覚についてはまったく衰えていない。
千雪「このゴールデンドラゴンの貸与料は高いわよ」
リンリン「大丈夫ですよ。千雪お姉さま。リンリンの体で払いますからねー-」
このリンリンの言葉に,千雪は返す言葉を失った。リンリンは,千雪のことをほっといて,若い女性のドラゴンを抱いて,部屋から出ていった。
千雪は,リンリンに取り残されてポカンとした。メーララは,千雪に苦言を呈した。
メーララ「千雪!リンリンにいいようにあしらわれてどうするのよ!!しっかりしなさい! 」
メーララは,千雪をたしなめたあと,あのゴールデンドラゴンの『リスク』について説明した。
メーララ「でも,まあ,そんなことより,霊体に肉体を与えるのは,リスクがあるのよ。生前やり残したこと,心残りなことなどの記憶が鮮明に蘇るわ。それがどう影響するのか,わからないわ」
千雪「そんなことどうでもいい」
メーララ「・・・」
ー---
それから,3日が経過した。
若い女性のドラゴンの霊体は,この肉体を完全に支配することができた。その結果,自分本体の若い女性の姿に変身することができた。
リンリンは,彼女にミサキと名付けた。その後,彼女をどう取り扱うか迷ったが,とりあえず,彼女の素性を聞くことにした。
ミサキは,生前,いわゆるキャリアウーマンで,バリバリ仕事をしていた。ところが,勤め先の社長に目をつけられて,社長の誘いを断ると,睡眠薬をもられて処女を奪われた。その後,薬中毒にさせられて,人生をはかなんで,社長を恨みながら自殺した。成仏などできるはずもない。
しかし,こんな悲しい過去をリンリンに言うつもりはない。せっかく手に入れた肉体だ。この体を使って,なんとかあの社長に復讐してやろうと考えた。
ミサキは,リンリンから,『どんな仕事がしたい?』と聞かれたので,しばらく考えてから言葉を口にした。
ミサキ「この体は,この人間の体を得ました。痩せる,太るとか,巨乳,貧乳程度の変身はなんとかできそうです。うまく化粧をすれば,完全に別人になりすますことも可能でしょう。そうなると,わたしに適する仕事は,私立探偵くらいでしょうか?」
ミサキの話を聞いて,確かに私立探偵に向いていると思ったが,仕事を見つけるのが問題だ。
リンリン「しかし,条件のいい顧客を見つけるのが問題ね」
ミサキは,リンリンのこの言葉を待っていた。
ミサキ「実は,いい得意先があります。私は,まだ死んで間もないので,まだこの世間のことはよく覚えています。ある医療機器専門商社ですが,そこは,あるライバル会社と争っていました。そこなら,ライバル会社の汚点を探せば,いいお金になるのではないでしょうか?」
リンリン「あらら? やけに具体的になってきたわね。まったく私の知らない世界だわ。でも,あなたの能力を見るいい機会かもしれないわね。じゃあ,あなたに秘書を1名つけましょう。即席で探偵会社を創ります。美崎探偵事務所としましょうか?」
ミサキ「秘書ですが,,,できれば,人間でないほうがいいのですが」
リンリン「え? だれのこと言ってるの?」
ミサキ「千雪さんの分身です。千雪人形です。本体の千雪さんが戻ったので,多分,暇かなって思いまして」
リンリン「また,それは,ちょっと問題よね。なんかあったら,大変よ。ただではすまわないわ」
そう思ったもも,それも面白いかもしれないと思った。リンリンとミサキは,千雪の部屋に来て交渉した。
リンリン「・・・というわけなの。ミサキの助手に,千雪人形にサポートしてほしいのだけど,,,だめかな?私の部下は,皆,妊娠6カ月で動けないのよ。誰かさんのせいでね」
千雪「面白い提案ね。千雪人形さん。サポートしてあげれる?」
千雪人形「いいわよ。今のわたしは,千雪本体よりも強いかもしれないわよ。ふふふ」
千雪「そう?じゃあ,お願い。名前は,,,そうねホーカでいいわ」
ホーカ「なんか,未来の名前をそのままつけられたわね」
かくして,千雪人形は,ホーカと命名されて,ミサキの助手となった。
ーハヤブサ医療機器専門商社の会議室ー
ミサキは,さっそくハヤブサ医療機器専門商社の社長とアポを取り付けて,その翌日,この会社を訪問した。
会議室で,ミサキとホーカは,社長が来るのを待った。その後,社長が秘書をつれて現れた。
社長「ああ,待たせたね。どうぞ,かけたまえ」
ミサキ「ありがとうございます。私,美咲探偵事務所のミサキと申します。隣の彼女は,助手のホーカです。よろしくお願いします」
社長「美咲探偵事務所の方ですか。それで要件とは?」
ミサキ「はい。率直に申し上げます。御社とライバル関係にあるハルカゼ医療商社を潰したいと考えたことはございませんか?もし,そのお気持ちがあるのでしたら,私たちは協力できるかと考えます」
この提案に,社長は少々びっくりした。まさか探偵事務所の者が,そんな提案をするとは思ってもみなかったからだ。
社長「ほうほう,これはこれは,,,この業界に詳しいのだね。そのことについては,考えたことは何度もあるが,,,それで? その対価は,どの程度かな?」
ミサキ「ハルカゼ医療商社を完全に社会から抹殺できた場合,報酬は2億円。商売の規模を大幅に縮小できた場合,1億円という感じでしょうか?」
社長は,ニヤッと笑った。なんか嘘くさい話にように感じた。
社長「ほう,大きく出たね。その額を提示する,ということは,われわれの裏の商売も把握しているとみていいのかな?」
ミサキ「ある程度は存じ上げております。ある特別な薬を扱っていらっしゃるようですので」
社長「なるほど。それで,私は,初対面のあなたがたをどう信じればいいのかな?」
ミサキ「何をすれば信じていただけますか?」
社長「あなたの助手の方は,超がつくほど美人だし,巨乳のようだ。どうだね。一晩,私に預けてはくれないかね」
ミサキ「一晩,預けるだけでよいのですか?それだけでよければいつでもどうぞ。ですが,その前に,先ほどの話を契約書でまとめたいのですが」
社長にとっては,まさか助手を預けるのに同意するとは,思っても見なかった。
社長「うううう,どうしようかな?」
社長は,戸惑ってしまった。いくらなんでも,社長ひとりで決めることができる問題でもない。
ミサキは,さらに説得にかかろうとしたが,社長秘書が小声で社長に提案した。
社長秘書「ハルカゼ医療商社が潰れるのであれば,われわれの商権は,2倍以上になります。利益も2倍になります。成功報酬の契約であればリスクはありませんし,重役の方々も納得すると思います。もし,彼らの行為によって当社に損害が出た場合は,彼らにその損害を補填するという契約にすればいいのです。契約書のひな形の5番あたりが,ちょうどそれに該当します。金額を記入するだけでいいでしょう」
社長は,社長秘書の言葉を信じて,契約書にサインすることにした。重役と言っても,ほとんど権限はないので,さほど気にする必要はなかった。
社長「そうか。じゃあ,それを持ってきてくれ」
秘書は,2枚の契約書を持ってきた。社長は依頼内容と金額を書いて,サインと押印をした。ミサキもサインと押印をして,契約書をかわした。
社長「これでよいかな。では,今晩10時に助手をこの住所,私のマンションだが,1人で来るようにしなさい。明日の朝には帰す」
ミサキ「はい,了解です。預けるだけですので,その意味をはき違えないようにお願いします」
社長「わかっとるわ。それで,いつ頃には結果ができるのかな?」
ミサキ「だいたい1,2ヵ月程度みてください。尚,言っておきますが,この契約書には,違約事項がありません。もし,違約した場合,最悪,社長の命で償ってもらいます」
社長「貴様,ゆする気か?」
ミサキ「いいえ。契約をきっちりと守ってもらうためです。われわれは命をかけて仕事しています。社長もかならず契約の履行をお願います。あとあと後悔をしないように」
社長は,あまり考えずに返事した。
社長「あー-,わかった,わかった,もう出ていきなさい」
ー---
ミサキとホーカは,この会社を去った。社長は,秘書に言った。
社長「秘書よ。どうして,すんなりとあの助手を提供したと思う?」
秘書「さあ,わかりません。初めからそのつもりだったのかもしれません」
社長「それもあると思うが,もう一つは,迫られても抵抗できるだけの腕力があるということだ。屈強な奴ら10名ほど,選んで私のマンションに来させなさい。念のためだ。用心に越したことはない。どうせ,注射一本で眠らせるだけだがな。ふふふふふ」
ー---
夜10時
ホーカは1人で,指定され住所にあるマンションに来た。そして,ドアチャイムを鳴らした。彼女は1人で行動するのは初めてだ。ちょっとスリル満点だ。
ピンポーン,ピンポーン。
ドアが開いた。そして,秘書がドアを開けた。
秘書「時間に正確ね。どうぞ,いらっしゃい」
ホーカ「秘書さんは,ここで何をするのですか?」
秘書「私は,まあ,見張り役みたいなもですね。あなたが逃げないように」
ホーカ「そうなですか? まあ,男性ばかり。大勢いますね。彼らはなにをしに来たのですか?」
秘書「あなたと一緒に一晩過ごすためですよ」
ホーカ「そうなんですか? じゃあ,私,寂しくないですね。ふふふ」
彼女は,ちょっとスリル満点な気分だった。これから,何が起きるのか,楽しみだった。
秘書「あなた,怖くないの?」
ホーカ「え,どうしてですか?こんな素敵な男性ばかりじゃないですか。社長はどちらに?」
秘書「今,風呂に入っているわ。あなたもあとで,入りなさい」
ホーカ「はい,そうします」
社長が全裸のまま風呂から出てきた。
社長「やあ,助手さん。時間通りだね。私が先に風呂に入った。あなたも風呂に入りなさい」
ホーカ「はい,ありがとございます。では,入らせていただきます」
彼女は,風呂場の更衣室のドアを閉じて,全裸になって風呂に入った。
社長「どうだ?ぜんぜん怖がらないようだが?頭がおかしいのか?天然ボケか?」
秘書「私もそれを感じていました。頭のネジが緩んでいるのか,それとも,もともと超変態スケベななのか?よくわかりません」
社長「まあいい,注射は用意してあるな?」
秘書「はい,即効性の睡眠薬です。すぐに意識が朦朧としてくるはずです」
社長「よし!」
ホーカは,風呂から上がって,服を丁寧に着て,リビングルームに来た。
ホーカ「風呂をいただきました。ありがとうございます。一晩,何をして過ごすのですか?」
社長「まあ,慌てないで,私の横に座りなさい」
ホーカ「そうですね。一晩,社長と過ごす約束でしたものね。そうします」
ホーカは,社長の隣に座った。
社長「君は大きなおっぱいしてるね。見せてくれるかな?」
ホーカ「見るだけならいいですよ。でも,さわったらだめです。私に触る人は,皆死ぬ,という決まりがありますから」
この言葉に社長は冗談だと思って馬鹿にした。
社長「ハハハ,そうか,面白いことを言うね。まあ,でもその裸を見せてくれないか」
ホーカ「わかりました」
ホーカは,上半身の服を脱いで,さらにブラジャーを脱いだ。片方で10kgにもなる胸が露わになった。Zカップと言ってもいいほどの胸だ。彼女は,その超巨乳の裸体を晒して,社長から少し離れて座り直した。
社長「気持ちのよくなる注射があるんだ。してもいいかい?」
ホーカ「飲み薬なら飲んでもいいです。注射は皮膚に穴があくのでだめです」
社長「秘書よ,飲み薬はあったかな?」
秘書「はいあります。薬量が多くなりますが」
社長「構わん,彼女に与えてくれ」
秘書は,飲み薬と水を持ってきた。ホーカは,霊力で,口の内部および食道そして胃袋までは構築できていた。だから,多少の食べ物や飲料も摂取が可能だ。ホーカは飲み薬と水を少し飲んだ。だが,5分経っても10分経っても彼女に変化はなかった。
社長「秘書よ,薬は間違ったのか?」
秘書「いいえ,間違ってはいませんけど」
ホーカ「社長さん,一晩は長いです。何をして過ごすのですか?」
社長「そうだな。まずは,エッチをしようか」
ホーカ「そうですね,,,他の男性はどうするのですか?」
社長「彼らは気にしなくていいよ。ベッドの部屋にいこか」
ホーカ「はい。でも恥ずかしいので,2人きりで内側から鍵をしてくれますか?」
社長「おお,そうだな」
ホーカは,脱いだ上半身の服を持って,社長の寝室に入った。社長は,部屋の内側から鍵をした。その瞬間,社長は意識を失った。彼女は,社長を霊力の腕で抱えて,ベットに運んで布団の中に入れた。そして,社長に偽の記憶を植え付けた。彼女との夢の世界だ。ただし,この記憶も2日間で消滅してしまうのだが。
一晩付き合うという約束なので,ホーカは,いったん転送して千雪御殿に戻った。千雪と愛を交わした後,翌朝,また,この部屋に転移した。
ホーカ「社長,起きてください。社長!!」
社長「お,そうか?もう朝か?」
ホーカ「昨晩はすごかったですー--。よかったですー--」
社長「いや,君の体は最高だった。ハハハ。よかった,よかった」
ホーカ「今から,会社に戻りますね。お先に失礼します」
社長「お,そうか。ちょっと待ってくれ」
社長は,ベッド横の引き出しから20万円を出して,彼女に渡した。
社長「これで服でも買いなさい」
ホーカ「ありがとうございます。社長はやさしいのですね。では,失礼します」
ホーカは,部屋のロックをはずして,部屋から出て,一晩中,座って待機していた秘書と男性スタッフに挨拶をして,マンションを後にした。
秘書は寝室に入って社長に言った。
秘書「あの助手,薬がまったく効いていないです。特異体質なんでしょうか?」
社長「わからん。でも,あっちのほうはよかったよ」
秘書は,ベッドがまったく乱れていないことに気がついたが,そのことには触れなかった。
秘書「そうでしたか。それならいいのですが,,,」
ー---
ミサキは,ネットで美人の写真を検索していた。今の自分の顔は,生前の顔だ。これでは仕事にならない。なんせ,生前,ミサキを自殺に追いやったハルカゼ医療商社の社長を誘惑するのが目的だ。遊びなれているだけあって,生半可な美人ではだめだ。少なくとも,今の自分よりも同等以上の美人が条件だ。しかし,なかなかいい写真が見つからない。
結局のところ,ハーフのような顔なら,美人っぽく見えるとおもい,鼻の部分を少し高くして,目の部分をさらにぱっちりさせることにした。この程度の変身なら,さほど苦労しなくても大丈夫だ。さらに,化粧をすることで,生前のミサキとはまったく別人のようになった。
ミサキが化粧をしている頃,ホーカが舞い戻って来た。
ミサキ「ホーカ,ご苦労さま。どうでした?」
ホーカ「裸は見せてあげました。でも触らなかったので死にませんでした。そのほうが,ミサキさんとしてはいいんでしょう?」
ミサキ「あなたに触るってことは,その相手は死ぬの?」
ミサキは,まだ千雪のスタッフが持つ常識を知らなかった。
ホーカ「そうですよ。ここのスタッフも全員そうですよ。スタッフの体に触るものに生きる資格はありません。これは鉄則です。よく覚えておいてください。ミサキさんは例外かな。でも,もし,千雪や私が知ったら,その相手を必ず殺します。私たちは,ある意味,暗殺者集団だと思ってもらって結構です。
その中でも,ミサキさん,あなたは,最高の暗殺者かもしれません。いくらでも間接的に手を下すことはできますから。間接的なら,事故ですませれますから」
ミサキは,なんとなく分かっていたが,はっきりと言葉にされると,さすがに気を引き締めた。
ミサキ「ふー-,私,とんでもない世界に迷い込んだのかもしれないわね」
ホーカ「そのうち,慣れますよ。どんどん命令を出してくださいね」
そんな会話をしていると,ミサキが化粧を終えた。そして,ホーカにその顔をしっかりと見せた。
ホーカは,ミサキを顔を見た。そこには,確かにミサキに似てはいるものの,少し外人っぽくなって,目鼻立ちがぱっちりとした美人がいた。
ホーカ「えー-,ミサキ!あなた,ミサキなの?めっちゃ美人。びっくり!」
ホーカは,ミサキが見事に美人に変身したことに少々驚いた。しかも,Bカップの胸は,Fカップ並みの胸にした。大きすぎない美乳だ。
ミサキ「どうやら美人に変身できたようですね。では,今から,私は,アキカゼ医療商社の近くにあるレストランでアルバイトをするわ。ホーカは,そこの社長の交友関係を調べてくれる?」
ホーカ「わかったわ。別の私立探偵会社に依頼するわ」
ミサキ「うちって,私立探偵会社でなかったのかしら?」
ホーカ「ほかの人ができることはしない主義なのよ。わかる?」
ミサキ「はいはい。ホーカは私の助手だけど,私のご主人様と同じだものね。扱いずらいわ」
ホーカ「まあ,そう言わないで,アルバイト頑張ってね」
ミサキは,ハルカゼ医療商社の近くにあるレストランで給仕のアルバイトを開始した。美人で巨乳ということで,すぐに噂が広まった。毎日,デートの誘いを断るのに大変だった。
そして,3日目が経過した。
ハルカゼ医療商社の社長,秋風社長が秘書を連れてこのレストランに来た。超人気なので,すべて予約制だ。だが,秋風社長は,予約なくても特別な部屋で食事ができた。いわゆるVIP特別待遇の部屋があった。
ー--
VIP特別待遇部屋
男性給仕「何かご注文は?」
秋風社長「あの噂の巨乳の給仕はいないのか?」
男性給仕「おりますが,ひっぱりだこで,ほかの部屋を担当しています」
秋風社長は,2万円を男性給仕に渡した。
秋風社長「これでその女性と変わってくれ」
男性給仕「あの,先ぽうのお客様にも多少渡したいので,もう少々,,,」
秋風社長は,さらに3万円を出して,男性給仕に渡した。
男性給仕「これくらあれば,先方のお客様も納得するでしょう。では,替わるようにします」
しばらくして,ミサキが給仕に来た。ミサキは,復讐のターゲットの秋風社長がこの部屋にいることはわかっていた。予想通り,ミサキに給仕をお願いしにきた。
ミサキ「あの,ご注文は,いかがいたしましょう?」
秋風社長「ほう,うわさ通りの美人だな。給仕はいいから,そこに座って,少しは時間があるんだろう?」
ミサキ「はい,1人1部屋を担当しますから,時間は大丈夫です。ですが,ここはレストランです。スナックではありません」
秋風社長「わかっている。レストラン側には損はさせない。私は,こういうものだ」
秋風社長は,名刺を出して,ミサキに渡した。ミサキは,名刺を受け取った。見なくても百も承知な内容だ。でも,ちょっとオーバーに反応して見せた。
ミサキ「まあ,社長さんなの?えらいのね。お金持ちなんでしょう?」
秋風社長「まあ,そうだな。どうだね。単刀直入にいう。月,100万円でどうだ?」
ミサキはこの意味が充分にわかった。生前は,まったく同じセリフに同意して,人生を棒に振ったからだ。
ミサキ「あの,私,そんなに軽い女ではありません。まだ乙女です。結婚願望があります。もし結婚を前提とするなら,少しは考えてみます」
秋風社長「そうか。結婚は無理だな。じゃあ,月200万だそう。どうだ?」
ミサキ「私の性格は,結構嫉妬深いほうです。一度,愛してしまうと,周りが見えなくなります。社長さんにもし他の愛人がいるってわかると,その女性を傷つけるかもしれません。結局,社長さんに申し訳ないことになってしまいます」
秋風社長「では,どうしたいのかね?」
ミサキ「ときどきデートするくらいでしたら,大丈夫です。まだ愛する,というところまではいかないと思うからです」
秋風社長「そうか。では,デートしよう。今晩はどうだ?」
ミサキ「親が里から来ているので,3日後なら大丈夫です。ここの仕事が午後10時に終わるので,それからだったら時間があります。でも,この3日間は,妻以外の人とは決して会わないでください。すごくつらい気持ちになってしまいますから」
この言葉に秋風社長は同意した。
秋風社長「わかった。約束しよう。じゃあ,3日後だ。電話番号を教えてくれ」
ミサキ「はい。これです」
ミサキは,秋風社長のアポを取り付けた。そして,すぐにこのバイトを止めた。
翌日,ミサキは,ホーカが依頼した私立探偵からの調査報告書を詳しく読んだ。秋風社長には,妻と愛人が3人いる。タマキ,スミレ,ナル子という女性だ。
ミサキは,ホーカに作戦実行を命じた。
翌日,
タマキは秋風社長にデート場所を指定した。帝法ホテルの313号室,午後10時半からだ。
その日の午後7時頃,ホーカはミサキの指示で,3人の愛人宅に向かった。ホーカは,タマキのドアの前に立ってドアを叩いた。
コンコンコン!
タマキはドアを開けた。そこには千雪の顔とそっくりの超巨乳のホーカが立っていた。
タマキ「あなた,誰? 何の用?」
ホーカ「あなたは,タマキさんですね?とっても大事な話があります。中にあがってもいいですか?」
そう言われて,タマキは断ることもできず,ホーカをリビングルームに通した。
ホーカは,スタンガンを取り出して,タマキの背後から襲い,首の部分にそれを当てて気絶させた。そして,手を頭の上において,3分間じっとした。そして,机の上に「帝法ホテルの313号室,午後10時,大きな旅行鞄を持参すること」というメモとカードキーを置いて,そのまま部屋を出た。
ホーカは,同様な作業をスミレとナル子にも行った。
午後10時0分。
帝法ホテルの313号室では,タマキ,スミレ,そしてナル子が,大きな旅行鞄を持参して部屋にいた。彼女らは,お互い面識はない。だが,何も語らなかった。その場で,ただ,何かを待っていた。
ただ,奇妙なことに,目が半分うつろな状態だった。夢遊病にでもなっているのかと思うほどだ。
午後10時15分。
ミサキが313号室に入っていった。すると,ここで惨劇が始まった。
まず,タマキが匕首を取り出し,そして,ミサキの腹部を刺した。
ズブッー-。
血が吹き出て,床がボタボタとなった。
次にスミレが同じく匕首を取り出し,そして,ミサキの腹部を刺した。さらに,ナル子も匕首を取り出し,そして,ミサキの腹部を刺した。ミサキは,ゆっくりとその場に倒れた。
ちょうどその時,秋風社長が,カードキーを使って部屋に入って来た。彼は,部屋に入るなり,ミサキが全身血まみれで倒れているのを発見した。
秋風社長「こ,これは?!! あ,お前たち???これはどういうことだ??」
この声を聞いて,タマキ,スミレとナル子は,はっと,我に返った。
タマキ「え?あ?何?なんで匕首持っているの??
スミレ「え?どうしたの?」
ナル子「あれ??」
秋風社長は,倒れているタマキの脈を診た。心臓の鼓動はなかった。
秋風社長「死んでる!お前たちが殺したんだな。何の恨みがあるんだ!」
タマキ「え? 殺してないわ。奥さんを殺すことなんて考えたこともないわ」
スミレ「私もそうよ。殺すだなんて,ありえないわ!」
ナル子「私もよ。殺すことなんて考えたこともないわ」
秋風社長「じゃあ,なんで匕首に血がついてる? 事実,この人は死んでしまった!お前たちは殺人の現行犯だ!すぐに警察を呼ぶ!」
タマキ「イヤーー! 社長,助けてよ。お願いだから。殺人なんてしてない!」
スミレ「警察なんて呼ばないで!」
ナル子「そうよ。なんかいい方法が絶対にあるわ!」
タマキたちは,その場で膝をついて,秋風社長に懇願した。
秋風社長「いや,無理だ。警察に連絡せざるをえない」
タマキ「イヤーー! 社長。私,帽子かぶってるの。監視カメラに顔は映っていないわ。それに,見て,なんでこんな大きな旅行鞄あるかわかんないけど,これなら,死体を隠せるわ」
スミレ「そうそう。社長は,ただ,わたしたちを連れて,どこか山奥に運んで,そこで鞄を捨てれば,絶対みつからないわ」
ナル子「社長は,ただ,私たちとドライブをした!それだけのことよ!」
タマキ「奥さんを鞄に詰めるわ。手伝ってちょうだい」
タマキは,旅行鞄をそばに持ってきて,ミサキをくの字型にして詰め込んだ。スミレとナル子も手伝った。床についた血は,濡らしたタオルで何度も拭いて,ほとんどわからなくした。たまたま非吸水面の床だったのが幸いした。
1時間程度で,床面が綺麗になった。タオルは全部ほかの旅行鞄に入れた。この部屋は,すべてミサキが予約したので,誰もチェックアウトする必要はない。
社長は,しぶしぶ同意した。全員が一度に出ていくと目立つため,10分おきに1人ずつ部屋からでて,パーキングの車に移動する方法を取った。社長は,死体の入った旅行鞄を運んだ。部屋のエレベーターから直接パーキングの地下2階にいけるので便利だった。
社長は,2時間かけて,人気のない山村の山奥に行った。そこの崖から旅行鞄を放り投げた。まず見つかる可能性はないだろと思った。
社長は,愛人たちをそれぞれのマンションに送り帰した。ドライブ中に,社長は,愛人たちに死んだ人は妻ではなく,近くのレストランでアルバイトをしていたミサキという女性であることを伝えた。
ー---
それから3日経った。
アキカゼ医療商社の事務所
秘書が,慌てて秋風社長のもとに駆け寄って来た。
秘書「大変です。このミーチューブ,見てください。ホテルの部屋で巨乳の女性が殺されてます。顔が隠されているけど,この巨乳は社長がナンパしたあの女性ですよ。それに,匕首でさしている女性たち,みんな顔がはっきりと映っています。これ,社長の愛人じゃないですか?それから,みてください。車から旅行鞄を捨てているの! これ社長ですよね。顔がはっきり映っていないけど,車のナンバーがはっきりと映っています。
見る人が見れば,社長だってすぐばれます。これは,何?ドラマの撮影ですか?ほんとうの事件ですか?それに,このミーチューブにリンクしたホームページでは,「XX医療商社の社長,愛人が殺害した女性を崖から廃棄!!」という見出しがでています。
愛人の顔写真は,少しだけ目に黒ラインがありますけど,ほとんどわかるレベルです。秋風社長の顔写真は,少しだけ,黒ラインが太いですけど。被害者の写真は,顔の目全体が潰されています。これでは,被害者がだれだか判別つきません」
秋風社長は,罠にはめられたと思った。
秋風社長「これは,どう解釈したらいいと思う?被害者は確実にあの部屋で殺された。私が確認した。心臓の鼓動はなかった。自分の命を賭してまで,私に復讐したかったとしか思えん。そんなことをする奴は誰だ?」
社長秘書は,少し考えてから返答した。
秘書「そう考えるのでしたら,1人だけ心当たりがあります」
秋風社長「もしかして,あの自殺した直子か?」
社長秘書は,軽く頷いて言葉を続けた。
秘書「あの,,,わたし,あのミサキって子を見たとき,なぜかあの直子のことを思い出しました。どこか面影が似ていると思います。巨乳はパットで誤魔化せますし,顔も整形すれば別人になれます」
秋風社長「じゃあ何か?1年前に自殺した彼女が蘇って,顔を整形して俺に近づいて復讐しに来たとでも言うのか?おまけに,自分の命を賭してまでか?」
秘書「はい。非現実的かもしれませんが,そう考えれば筋が通ります。でも,今はそんなことよりも,このミーチューブが公開された以上,すぐに対策をとることです!」
秋風社長「そうだな。ミサキが直子かどうかは,この際,後回した。この状況だと,まず,当社の顧客は離れるのは間違いないだろう。薬販売だって信用第一だ。半分以上は縁が切れることになる。そうなると,その顧客はライバル社,ハヤブサ医療機器専門商社に流れるだろうな」
秘書「そうです。私もそう思っていました。この件は,ハヤブサ医療機器専門商社がからんでいる可能性があります。あの会社の経理部門のスタッフを買収しましょう。どこかにこの件で依頼しているはずです。それをつきとめましょう。愛人たちには,変に動かないように命じてください」
秋風社長「とりあえずはそうするか,,,」
秘書「とにかく,冷静に情報分析して,的確な対策を取りましょう」
秘書は,早速,ハヤブサ医療機器専門商社の経理部門の社員を300万円で買収した。そして,2億円のお金が美崎探偵事務所に流れたことを突き止めた。次に,2社の別々の私立探偵事務所に,この美崎探偵事務所を至急調べてもらうことにした。
それぞれのAAとBBの私立探偵事務所は,この美崎探偵事務所に,架空の仕事を依頼するという形をとった。
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