第2章 金儲け

第19話 リンリンの商売,金竜失敗

 リンリンは,警察の殺人課出身だ。商売など経験したことがない。リンリンと一緒に仕事をするのは葵だ。葵は,繁木会の会長のひとり娘だ。服飾デザイナーの専門学校を通っていたが,最近は休みがちだ。


 リンリンは,机の上に立っている体長10cmほどの,羽を生やしたトカゲのような恰好をした生物を見た。体表は金色だ。それは,名を金竜。魔界ではゴールデンドラゴンという種類の魔獣だ。


 リンリンは,葵と会話していた。


 リンリン「ねえ,葵。このドラゴンで,どうやって商売したらいいの?経費は1千万だって。何かアイデアある?」

 葵「今は,マスコットが流行っていますよ。マスコットとしてどこかの会社に採用してもらうのはどうでしょう?」

 リンリン「へえ。葵は,いいアイデアが思いつくのね。大したものだわ。じゃあ,それでいきましょうか。どこの窓口を叩くか,いろいろ調べましょう」


 リンリンと葵は,ネットでいろいろと調査して,訪問する会社のリスト表を作成していった。


 それと平行して,幼稚園とか老人ホームに出向いて,無料で金竜のお披露目を行った。


 ー ある幼稚園 ー


 保育士「じゃあ,今から,ドラゴンのお姉さんを紹介しまーす。お姉さーん,お願いしまーす」

 リンリン「はーーい。よい子のみなさーん。お元気ですかー?わたしは,ドラゴンのお姉さんで,リンリンといいまーす。よろしくね?」


 幼稚園児「はーーーい」


 リンリン「では,早速,ドラゴンの金竜ちゃーんを紹介しますね。では,金竜ちゃんをお披露目しまーーす」


 リンリンの司会で,葵が手持ちの駕籠から金竜を取り出した。金竜は,葵の手に平の上に立った。

 

 幼稚園児たち「うわーーーーー!!小さいゴジラのようだ!!」


 リンリン「この金竜ちゃんは,空を飛ぶことができます。では,飛んでもらいまーす」


 葵は,手の平の金竜にお願いした。


 葵「金竜様,すいませんが,ホバリングで,空中にしばらく浮遊していただけますか?」


 金竜は,軽く頷いた。


 パタパタパタパタパターー


 金竜は,ホバリングした。


 リンリン「はーーい。では,この金竜ちゃんに,皆さんの周囲を飛んでもらいまーす。もし,近くに来たら,手の平を出してくださいねーー。そこに止まってもらうこともできますよーー」


 幼稚園児たち「うわーーーい!!」


 金竜は,ホバリングの状態から,ゆっくりと移動して園児たちの周囲を2,3回旋回してから,一番,可愛い女の子の手の平に止まった。


 女の子「きゃーーー!!止まったわーー!!見て見てーー!!すっごーーい」


 ーーーー


 このようなドラゴンの披露会は,幼稚園の職員によってビデオ録画されて,そのデータは,youtubeやツイッターなどに公開された。


 ドラゴンは,この月本国には存在しない。そのため,このyoutubeやツイッターで公開された情報は,すぐにいろいろと議論を巻き込んだ。


 「これって,本物のドラゴンなの?」

 「偽物に決まっているでしょう。コンピューターグラフィックに決まっているわよ」


 などなどだ。


 リンリンは,youtubeの再生回数を見た。1万回を超え始めた。


 リンリン「葵,そろそろ本格的に営業をかけるわよ」

 葵「その件ですが,もう1人,営業員を採用してはどうですか?本格的な営業となると,わたしでは無理です。わたしは内勤に専念したいと思います」

 リンリン「そうね。1人くらいなら,なんとかなりそうね。早速,募集をかけましょう」


 リンリンは,求人広告をだした。採用の条件は,超美人で乙女というのが,隠れた条件だ。待遇条件がすごくいいので,多数の履歴書が集まった。でも,美人度のレベルに達していない女性がほとんどだった。選考に残ったのはたったの5名だった。その5名が面接に来た。面接官は,リンリンではない。メーララとサルベラだ。


 その結果,一名の女性を採用した。春美だ。彼女は応募はしたものの,何か違和感を感じて,採用を断ろうとした。だが,もう遅かった。メーララによって,軽く精神支配されてしまった。


 春美「あの,,,なんか違う感じがして,採用されても,ここで仕事するの,やめ,,,」


 春美は,『やめたい』と言いたかった。でも,なんか,ここでもいいのかな?と急に気が変わった。


 春美「あ,ごめんなさい。あの,,,ここで働かせてください。よろしくお願いします」

 サルベラ「はい。こちらこそよろしくね」


 5名の面接者の中で,乙女は彼女だけだった。それで採用されたことなど,春美は知るよしもなかった。だって,「乙女ですか?」とか,「彼氏はいますか?」などの質問はいっさいなかったからだ。


 乙女は千雪に献上される。それは,何も千雪がそう命じたわけではない。サルベラが率先して,ときどき千雪に乙女を与える。そうすることで,千雪が変なことをしないようにするためだ。


 でも,千雪に抱かれるなど,春美が同意するはずもない。でも,本人の同意など不要だ。


 サルベラは,春美に,この組織のトップに会わせるということで,千雪の部屋に連れてきた。


 千雪の部屋には,千雪と千幸がいた。


 サルベラ「千幸,悪いけど,しばらく席を外してくれる?」


 千幸は,その意味がわかった。だって,美人の女性が一緒にいるのだ。千幸は,春美を睨んで,その部屋から出ていった。


 サルベラは春美に言った。


 サルベラ「春美,彼女がボスよ。あとは,ボスの言うことを聞いてちょうだい」

 春美「はい」


 春美は千雪を見た。だが,その千雪の姿が,空中に舞った。そう,つまり,春美は,幻覚を見せられて,その場で意識を失った。


 千雪は,春美に言った。


 千雪「その体ではだめよ。巨乳にしてちょうだい。1時間後にまた来るわ」


 千雪は,さっさと亜空間に引きこもってしまった。


 サルベラ「まったく,千雪は新人に挨拶もできないのかしら」

 

 サルベラは,そうは言ったものの,かいがしく春美を巨乳にしていった。


 1時間後,Bカップだった春美の胸はGカップに変化させた。


 サルベラは,まだ意識を取り戻していない春美をその部屋においたまま出ていった。


 その後,千雪が亜空間から出て来た。千雪は春美に意識を取り戻させた。


 春美「あれ?わたし,,,どうしちゃったのかしら?あれ?なんでわたし,裸なの?え?え?このおっぱい??!!」


 春美は,自分が全裸で巨乳になっていることに驚いた。でも,目の前にいる女性も,自分と同じくらい巨乳なのに気がついた。


 千雪「あなた,少し混乱しているようね。でも,心配しないで。すぐに慣れるから。わたしが,ここのボスで千雪よ。よろしくね」

 春美「は,はい。春美です。よろしくお願いします」


 千雪は超美人だった。そんなことはどうでもよかった。春美の体全体から一瞬恐怖が走った。でも,その感覚はすぐに消えた。


 千雪「春美,わたしの手に触ってちょうだい」

 春美「はい」


 千雪の手を触った。千雪と春美は,亜空間に消えた。


 ーーー

 サルベラは,リンリンと会話していた。


 サルベラ「リンリン。春美は,かなりショックを受けるから,ちゃんとフォローしてよ。最悪,自殺したいなんて言うかもしれないのよ」

 リンリン「あの,もっと,時間をおいて,気持ちの整理がついてから千雪様に捧げてもよかったのでは?」

 サルベラ「ダメよ。もう限界よ。今にも,町に出て乙女狩りをする勢いだったわ。そんなことされたら,大騒動になってしまうわ。せっかく,政府側とそれなりにうまくいっているのに,またとんでもないことになってしまうわ。とにかく春美をなんとかなだめなさい。それがお前の役割よ!」


 しばらくして,放心状態になった春美が2階から1階に降りてきた。


 ダーン!


 春美は,最後の階段を踏み外して,転んでしまった。歩くことはできたものの,うまく階段を降りることはできなかった。


 Gカップの重さに,まだ体が慣れていなかった。


 リンリンは,慌てて春美を抱きかかえて,リンリンの自室に連れていった。


 春美は,顔を紅潮させていたが,リンリンやサルベラが心配するほどチョックを受けていなかった


 リンリン「春美,大丈夫?気をしっかり持ってちょうだい」

 春美「・・・,はい。大丈夫です。でも,わたし,,,妊娠したらどうしましょう?」

 リンリン「妊娠すれば,1億円もらえるって,知ってた?」

 春美「え?い,1億円?」

 リンリン「そうよ。だから,何も心配しなくていいのよ。それに,千雪様にもっともっと愛されれば,さらにお金がもらえるわよ。頑張って,千雪様の愛を勝ち取りなさい。千雪様のために,なんでもしなさい」


 その言葉に,春美はなんか嬉しくなってきた。


 リンリン「どう?元気出て来た?」

 春美「はい。1億円の話を聞いて,俄然,元気が出ました。早く,妊娠したくなりました」

 リンリン「ふふふ。まあ,それもひとつの生き方でしょう。じゃあ,明日から,仕事,がんばってね。それと,千雪様から声がかかったら,どんな仕事であれ,千雪様を優先してちょうだい。千雪様の言うことを聞くのよ」

 春美「はい。わかりました」


 リンリンは,まじまじと春美の体を見た。


 リンリン「春美,あなた,胸,大きくされたの?」

 春美「・・・,はい,いつの間にかこんなに大きくなってしまいました」


 リンリン「春美は,もしかしたら,千雪に愛さるかもしれないわね」


 ーーー

 翌日


 リンリンは,春美を連れて,某大手広告代理店の会議室で,営業部長と打ち合わせすることにした。その道すがら,リンリンは,春美に,いくつか注意事項を説明した。


 それは,セクハラは甘受するという内容だ。つまり,服の上から体を触れたくらいなら許容すること。ただし,素肌を触らせてはダメだと注意させた。だが,呪詛が施されていることは,知らされていなかった。


 リンリンはそれだけ注意して某大手広告代理店に着くと,春美をひとりで行かせることにした。どうせ,たいした話ではないと思ったからだ。リンリンは別件の案件のほうに行った。


 春美は広告代理店の会議室に通されて,そこでひとりでアポの相手を待った。


 しばらくすると,アポの相手が姿を現した。なんと,いきなり,営業部長が現れた。


 お互い自己紹介が終わったあと,春美が要件を行った。


 春美「すでに,上司のリンリンさんから話は伺っているかと思いますが,御社のほうで,『金竜ちゃん』をどこかの企業のマスコットとして採用していただきたくことで,ご協力をお願いしたいと思います。どうぞ,よろしくお願いします」

 営業部長「ああ,担当者から話しは伺っている。あいにく,担当者が別件で不在でね。わたし,自らこの案件を引き受けることになった」

 春美「そうでしたか。どうぞ,よろしくお願い申し上げます」

 営業部長「金竜ちゃんと言ったかな?それは,youtubeでも,なんども見せてもらっているよ。当社が推薦すれば,すぐにマスコットとして採用する企業があると思うよ」


 春美は,嬉しくなった。こんなにもスムーズにうまく行くなって,思ってもみなかった。


 営業部長「だから,わかっているね?」

 

 春美は,彼が何を言っているいのかわからなかった。


 営業部長は,ゆっくりと手を伸ばして,春美の手を触った。春美は,その時,リンリンが言った言葉を思い出した。


 「セクハラは甘受せよ」


 春美は,触られた手を引っ込めることはしなかった。ただ,顔を下に向けた。春美は,もちろん抜群の美人だ。しかも化粧術でさらに美人度が増している。どんな芸能人にもまけない美しさだ。


 営業部長は,拒否されないことをいいことに,席を立って,春美の背後に立ち,服の上からGカップにもなる春美の胸を触った。


 この行為をしても春美は拒否しなかった。リンリンから,服の上からのタッチはOKだと言われている。


 営業部長は,メモ用紙に,ホテル名と時間を指定したものを春美に渡した。


 営業部長「春美くん。わかっているね?金竜ちゃんは,わたしの一言で,マスコットに採用されるんだよ。うまくいけば,ゴールデンタイムの午後7時からの番組でレギュラー出演だって,CM契約だって,夢ではない。


 はい,これ,ホテルの玄関で待ってなさい。午後6時にはいくからね」


 春美は,その意味を理解した。


 春美「あの,私の会社では,そういうの,禁止されているんです。服の上から触られるのは,まだいいのですけど,,,」

 営業部長「だいじょうぶ。春美くんの会社にはだまっているからね。まだ,別の会議中なんだ。じゃあ,ホテルでね」


 営業部長は,春美のホッペにキスして,この会議室を去った。


 春美は,ホテルに行くことにした。体を触らせてはダメという注意事項よりも,いい成績をとって,リンリンや千雪様に褒めてもらうことを優先した。


 午後6時に営業部長が来た。


 営業部長「春美くん。待たせたね。ごめんごめん」


 彼は、予約した部屋にチェックインして、春美を連れて部屋に入った。


 営業部長「春美くんの胸は大きいね。乳首吸わせて」


 この依頼に春美は拒否しなかった。

 

 春美「どうぞ」


 営業部長は,春美の胸に触った。このとき、彼は、初めて春美の体を直に触った。そして、乳首を吸おうとした。しかし,すでに春美の体に触れて3分が経過した。


 彼は、その場で昏睡状態に陥ってしまった。


 春美「え?営業部長さん?部長さん?」


 春美は営業部長をなんども揺り動かしたが、彼は起きなかった。やむなく,春美は一人で千雪邸に戻った。


 リンリンがいなかったので,春美は,みんながいるリビングの片隅に座った。ソファーでは,葵とアカリが会話していて,春美はその会話を何気なく聞いていた。


 葵「先日なんだけど,,,リンリンさんには内緒にしていたんだけど、保育園のトイレで,男性の保育士にトイレに閉じ込められちゃったのよ。それで胸触られてしまったの。そしたら,彼,その場で寝てしまったのよ。なんかおかしいと思わない?」

 アカリ「それはきっと千雪様の呪詛よ。わたしは、千雪様とは肉体関係ないけど、他の人は皆,体に呪詛が施されているですって」


 春美は,よこから口を出した。


 春美「その話、ほんとう?私もリンリンさんには内緒なんだけど,さっき,営業部長とホテルにいってきたのよ。営業部長が私の胸触ったら,営業部長が寝てしまったの。これって、やっぱり呪詛なの?」


 葵「たぶん,間違いないわ。千雪は嫉妬の塊よ。絶対,私たちを他の男に触らせない気よ。春美は、これからも男どもの餌食になるでしょうね。でも、大丈夫! その呪詛があるなら,胸に触る男連中は,皆,寝てしまうはずよ」

 春美「そうですか,,,営業って,男どもの餌食になることなんですね,,,」

 葵「そうよ。それが世の中よ。わたしたち弱者は,男どもの餌食にされるしかないのよ」

 春美「だったら,はやく千雪様の子供を妊娠して,この仕事から足を洗いたい,,,」

 葵「でも,千雪様の愛を勝ち取るのは大変よ。今は、茜さんがダントツの寵愛No.1よ。No.2はいない感じ。もし、千雪様の寵愛が得られなければ、千雪様の子分どもの性奴隷に落とされるわ」

 アカリ「それはほんとうのことよ。カロックには、わたしがいるから、その可能性はないけど、ハルトさんは、今、禁欲されているけど、それが解禁されたら,2,3人はハルトさんの性奴隷に落とされるわ。今のうちに,どう生きるか考えたほうがいいわよ。千雪様の寵愛を受けれないのなら,仕事で成績を上げて,千雪様に認められるようにするのがいいわ。でも,それさえもできなかったら、ほんとうにハルトさんの性奴隷になるしかないわね」

 春美「・・・、この仕事を辞めればいいのではないの?」

 アカリ「ハハハ。あなた,何もわかっていないわね。この組織は,ヤクザの世界以上に抜けるのは困難よ。抜けたいのなら,ハルトの性奴隷になってから,捨てられるという形しかないわね。ポイ捨てね。でも,ハルトは律儀だから捨てられる可能性は低いわ」

 春美「でも,辞めたいって言えばいいだけじゃないの?」

 アカリ「それを千雪様に言ってごらんさない。それこそ,千雪様の思うツボよ。すぐに精神支配されて,自我が崩壊してしまうわ。どこかに売り飛ばされて人生の終わりよ」

 春美「要は,仕事を一生懸命頑張って,リンリンさんにも千雪様にも認めてもらえればいいわけでしょう?」

 葵「そうそう。わたしも仕事頑張るわ。お父様から,当分は帰ってくるなと言われたから,ここで仕事するしかないの」

 アカリ「でも,悲観することないわよ。みんないい人だし,不可能を可能にできるのも,この組織があるからよ。おいおいわかると思うわ」

 春美「はい,がんばります」

 葵「わたしもがんばります」


 春美は、少し吹っ切れたような感じがした。


 それから1週間後、、、


 春美は、例の営業部長とふたたび面談を持った。


 営業部長「春美くん。この間の件だけど,例のドラゴンを企業にマスコットとして推薦する件、中止になったから」

 春美「え?どうしてですか?ホテルまでいったのに,,,」

 営業部長「どうしてって,君!君のしたことわかってるの?」

 春美「え?何がですか?」

 営業部長「何がじゃないよ! あれから,あの部分が反応しなくなったんだ! まあ,君がやったという証拠もないから,これ以上追求しないが,でも,君はもう出入り禁止だ」

 春美「え?そうだったのですか? ほんとうにすいません,,,」


 春美は、頭を深々と下げて謝った。それしかできなかった。春美は、そっそくさと会議室から逃げるようにして去った。


 ーーー


 春美は,千雪邸に戻った。そこでは,葵が半泣きしていた。


 春美「葵さん?どうしたの?」

 葵「ううん。いいのよ。充分に報復できているから」

 春美」え?それって,どいいうこと?」

 

 葵は、春美を人気のない場所に引っ張っていって話を続けた。


 葵「千雪様の呪詛の効果がわかったの」


 春美は,その効能を今日,だいたい理解したが,話をさらに聞き出すため,知らないふりをした。

 

 春美「その呪詛の効果って,どんなものなの?」

 葵「体に触る男たちは,その場で寝るだけじゃないの。その日から7日目に死亡するのよ」


 春美「えーーー!!!」


 春美は,思わず大声を出してしまった!!


 葵は,言葉を続けた。


 葵「実は,幼稚園のトイレには,隠しカメラが設置されていて,わたしが体を触られるのを,園長が見ていたのよ。その保育士は,その7日後に,保育園で死亡したのよ。すぐに,警察の調査が行われたけど,事件性なしということになったらしいわ。

 園長は,わたしとその保育士が恋人だと勘違いして,保育士が死亡したことを電話で連絡してくれたの。もう,ビックリだったわ」


 その話を聞いて,春美は愕然とした。あの営業部長は,つまり,今日の午後6時ごろに死亡する!



 翌日


 春美は,例の営業部長が,昨日の午後6時ごろ,会社で急に倒れて死亡したことを知らされた。


 春美は,葵の言うことが正しかったことをまじまじと理解した。


 営業部長の死による波及効果は致命的だった。というのも,ドラゴンの『金竜ちゃん』を営業する春美と営業部長ができているという噂は,その広告代理店内では周知の事実だった。営業部長は,口が軽い男だったせいもあり,春美とホテルに行ったことを,部下たちにべらべらと言いふらした。


 その営業部長が死んだ。当然,噂は噂を呼び,春美の評判は,死に神という悪のレッテルを張られ,広告関係の業界で悪名が広がってしまった。


 それに伴って,ドラゴンの『金竜ちゃん』も,悪評に巻き込まれて,殺人ドラゴンと言われる始末だ。それが,youtubeでもツイッターでも広く拡散してしまい,金竜ちゃんの営業ができない状況に追い込まれてしまった。


 ーーー


 







 


 

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