第16話日の出テレビ局
日の出テレビ局からの提案
ー 千雪の家 ー
朝,8時半,リビングルームで全体会議が始まった。議題は,霊能力者竜姫とテレビ番組で対決する件だ。
ハルト「テレビ局からの提案では,一円玉を動かす念動力対決,相手の描いたものなどを言い当てる透視能力,そして,病院に移って,病人の病を言い当てる能力などです。放送日は3日後で,生放送の2時間番組です」
カロック「千幸は,1円玉くらいは動かせるかもしれませんが,透視能力なんかはありませんよ。ましてや病人の病気を言い当てることは絶対無理です」
千幸「千雪様,私は,火炎魔法,風魔法,水魔法,重力魔法,いくつかの防御結界しかできません。もし,私が千雪として出演すれば,千雪様に恥じをかかせてしまいます」
サルベラ「でも,それって,返っていいんじゃない?千雪は能なしだって,思わせるのもいい方法よ」
千幸「でも,透視などまったくできないのですよ,,,番組が成り立たないと思うのですが。事前に,簡単に予備テストをするはずです。すぐにバレます」
サルベラ「それもそうね,,,カロック,あなた,念話で千幸と交信できるわよね。透視は,カロックとの念話で対応してちょうだい。あと,病人だけど,,,失敗していいわ。適当にそれらしい病名を言えばいいでしょう。でも,状況から判断して,正解をいわないといけない場合もあるから,やっぱり,メーララも行ったほうがいいわね,,,」
千幸「千雪様?それでいいのですか?」
茜の霊体によって支配されたゴーレムである千幸は,最終確認を千雪に求めた。
千雪の答えは簡単だった。
千雪「適当にやってちょうだい。今日は,成美博士っていう人が来る予定だわ。いったい,何の用かしら,,,」
千雪は,この話にはまったく興味がなかった。
サルベラ「千雪,もう要件が住んだわ。2階に行っていいわよ。あとのことは,適用にやっておくから。あと,この宅急便で送られたお金は生活費に充てていいのね?」
千雪「あ?うん。適当にお願い」
千雪の頭の中は,今,別のことにあった。茜が不在のとき,亜空間にあった魔法書を読んでいると,精霊の指輪の記載があった。それによれば,リスベルが旅立った別次元の世界への扉が開くことができるのは,北東領主の持っている指輪だけではないらしいのだ。基本的にすべての精霊の指輪にその能力があるらしい,という内容だ。まだ,古代魔法語は,辞典を使わないと読めないのだが,さらに精読したかった。だが,全体会議には必ず出席しなさいとのサルベラの命令に近い口調の依頼があったので,しぶしぶ参加しているという状況だ。
サルベラたちにとっては,千雪が話の内容を理解しているかどうかはどうでもよく,ただ『適当にやって』という言葉を聞くことで安心できた。もし,『聞いていない』とか,『無断でやって』,などと千雪が怒ってしまっては,それこそ一大事だ。
テレビ出演の件は,予定通り,千幸が『千雪』として出演し,荷物持ちとしてカロックとメーララがそばにつく,ということにした。
ーーーー
明日の生放送のため,特別に,前日に,出演者による事前のテスト撮影があった。実質,その内容は,録画されて後日,編集されて放映される可能性がある。
千幸は,いつものように厚化粧をして,伊達めがねをしていた。『私が千雪です』ということを内外に示す意味もある。
霊能力者の竜姫とその女性マネージャーも姿を現した。竜姫は浅い色のサングラスをしていた。歳の頃は15歳くらいで,とても若そうだった。女性マネージャーは35歳くらいだ。竜姫の母親だろうとすぐに予想がついた。
竜姫側と千幸側は,今回が初対面なので,お互いが自己紹介した。プロデューサーは,髭を生やして,いかにもやり手風だ。名を太郎といった。
太郎「お互いが自己紹介も終わったようですし,明日の本番でお願いする超能力対決を今から,演じていただきます。では,この机にある1円玉を動かしてみてください。では,今回は,一応,竜姫さんが,千雪さんに対決を申し込んで,千雪さんがそれを受けた,という状況になっています。ですので,竜姫さんから,初めていただくことになります。よろしいですね?」
竜姫「わかりました。それで結構です。では,私から始めます」
竜姫は,机にある一円玉に両手をかざして,『えい!やーー!』と,なんども声をかけて,気持ちをたかぶらせていき,5分かかって,やっと5mmほど動いた。
それを見ていたカロックとメーララは,笑いをこらえるため,後ろを向いた。彼らは,念話で会話していた。
メーララ『ちょっと,見た?あれ!あんなの?魔界では,赤ちゃんでもできるわよ!!』
カロック『ああ,まったくだ。千幸には,同じように,5分かけて,気勢をもっとあげるように言っておくか』
千幸の番になった。千幸はカロックに言われた通り,同じように気勢を上げて,5分かかって同じく5mm動かした。5mmくらいなら,カロックをわずらさなくても,千幸でも問題なくできた。
パチパチパチーーー
太郎「すばらしいです。さすがですね。何のトリックもなく,動かせるなんて,すごいです。初めてみました。では,透視能力です。黒のカーテンの裏側に絵を置いておきます。その絵は,側面からは見ることができますが,正面からは見ることができません。ですから,視聴者には,その絵の内容が分かります。正面から見て,その絵を透視して,その絵と同じものを書いてもらう,というのが明日の本番です。今回は,書く必要はなく,何の絵か言い当てるだけでいいです。では,竜妃さんからお願いします」
竜姫は,黒いカーテンの正面側に立った。そして,アシスタントが絵をカーテンの裏側に設置した。
竜姫は,すぐに返答した。
竜姫「その絵は,コップの絵です」
それを受けて,アシスタントがその絵をカーテンの前に持ち出して,皆に示した。皆に示したと言っても,斜めから見えるので,竜姫のマネージャーは,その絵が何かを見ることができた。同様に,カロックもメーララも見ることができた。
カロック『どうも,竜姫のマネージャーと竜妃は,私たちと同じく,念話が使えるようだな』
メーララ『はじめは,ちょっと自信なかったけど,今,確信したわ。彼女たち,魔界から来た連中よ。それと,今,気がついたのだけど,茜の本体のオーラとそっくりなのよ』
カロック『それって,どういうことだ?』
メーララ『これだけ,そっくりなのは,親子以外に考えられないわ。もっとも,いまの千幸のオーラは,ゴーレムのそれだから,かなり異なっているけど,たぶん,間違いないわ。なんせ,茜のオーラは蘇生するために飽きるほど観察してきたから,ぜったい間違いないわ』
カロック『なんと,,,それって,竜妃たちにバレないのか?』
メーララ『バレないと思うわ。竜妃はたぶん,オーラを見ることができるはず。でも,ゴーレムのオーラしか見れないわ。バレたとしても,千幸が人間でないという程度ね』
カロック『そうか,,,どうするかは,あの,他人任せの千雪の判断に任すか,,,今は,黙っているしかあるまい』
メーララ『そうね,,,あの,竜妃の念動力だって,魔力を使ったものだわ。演技で苦労して動かしたという感じにしているだけよ』
メーララは,竜妃とその母親の魔力オーラを注視して観察した。
メーララ『ふふふ,,,やっぱりね。竜妃は上級魔法士よ。そして,その母親は,,,すごいわね。特急のSS級魔法士よ。カロックなみだわ。びっくり,,,この魔素のない月本国で,こんな魔力を維持できているなんて,かなり上質な魔鉱脈を見つけているわね』
カロック『母親の魔法特性はわかるか?』
メーララ『さらに注視してみるわ。待ってて』
メーララは,さらに母親のオーラを注意深く診た。すると,メーララの顔がだんだんと青くなってきた。
メーララ『カロック,,,や,やばいわ,,,あの母親,,,転移系魔法で突出した能力を持っているわ。もしかしたら,伝説の『超瞬間転移魔法』まで使えるかもしれないわよ』
カロック『何?カベール隊長が千雪対策で考え出した『超速転移魔法』の,さらに上をいくというのか??そんなことができたら,千雪でも勝てないぞ』
メーララ『そうよ。瞬時にわれわれを地中に転送されたら,それでわたしたち,一巻の終わりよ。最強の魔法だわ』
カロック『・・・,まだ,それができると決まったわけではないな,,,』
メーララ『でも,母親は,かなりわれわれを警戒しているわ。いつでも,魔法発動を準備しているわ。どうする?』
カロック『やばいな,,,まず,われわれの周囲に転移妨害結界を張ってもらうように千幸に指示しよう。千幸の膨大な魔力なら,2時間くらい持続できるはずだ。それから,ゆっくり考えよう』
カロックは,千幸に念話で以下の命令した。
カロック『千幸,私たちの体に転送妨害結界を張ってくれ。あの竜妃の母親は,転送魔法の天才らしい。われわれは,一瞬で殺されてしまうかもしれん。千幸は,もし自分の肉体が滅んだら,すぐに,元の肉体に戻れ。そして,千雪に報告してくれ』
千幸『わかりました。すぐに実施します』
千幸は,カロックとメーララの体に高出力の転送妨害結界を張った。
一方,竜姫と名乗っている龍子も母親のマリアに,頻繁に念話を送っていた。
龍子『ママ,この千雪,人間ではないわ。オーラが全然違う。でも,すごい魔力を持っているわ。ママよりも多いみたい』
マリア『もしかして,魔界からの追手かもしれないわ。あの付き人を診てちょうだい』
龍子は,カロックとメーララのオーラを凝視した。龍子の顔色から血の気が引いてきた。
龍子『ママ!!や,やばいわ!!やつら,魔界の人間よ!男はSS級,それも,超がつくほどの魔法士よ。たぶん,火炎系に強いわ。女は,,,回復系に強いわ。たぶんオーラを診ることもできると思う。わたしたちの素性がバレたかもしれない。あ!!やばい!!やつら転移妨害結界を張ったわ。ママの能力を見破っている!!千幸が張ったと思うわ。魔力の流れが千幸から出ているから,,,』
マリア『ほんとにやばいわね。まさか,千雪という呪詛使いが,魔界から追手を連れてきたとはね,,,マネージャーの太郎に,いろいろ条件を出しておくわ。ここでは,やつらは,手を出さないと思う。しばらく,適当に相手をしてやってちょうだい』
マリアは,プロデューサーの太郎のところに行って,小声で何かを言っていた。太郎は,驚きとの顔をして,うんうんと頷いた。
太郎は,テスト撮影を中止した。そして,カロックとメーララのところに来た。
太郎「千雪さんの付き人の方,すいませんが,竜妃側からクレームが出ました。あの千雪さんは,千雪本人ではないとのクレームです。もし,認めないないなら,それをこの場で証明するとまで言っております。どうですか?あの千雪さんは,本人ではないのですか?」
カロックとメーララは,念話で高速にやりとりをした。
カロック『やばいな。人間でないと見抜いたな。ということは,本人を出すか,茜を自分の肉体で出演してもらうかだが,,,』
メーララ『千雪が出てくるわけないでしょ。茜本人をだすか,サルベラを代役にしてしまうかね』
カロック『茜本人はまずい。やつらの家族だとバレてしまう。サルベラが引き受けるかどうかだが,,,竜姫たちは,オーラが見えるから,サルベラも魔界の人間だとばれてしまうぞ』
メーララ『やっぱり,千雪本人に出てもらわないとダメかもしれないけど,千雪を誰が説得できるのよ!!』
カロック『茜に説得してもらう。千雪が快く参加してもらうようなピロートークを茜に伝授するしかあるいまい』
メーララ『よけいな仕事,増えるわね,,,でも,それしかないわ。千雪なら,付き人は千幸でいいから楽だわ』
カロック『よし,それでいこう』
カロックは,メーララとの念話を終了し,太郎に言った。
カロック「太郎さん,さすがは竜姫さんですね。よく見破りました。実は,千雪本人は本日,体調が悪く参加できなかったのです。そこで,やむなく千雪の姉妹の千幸が代役で出てもらいました。彼女も霊能力者ですので,予備テスト程度であれば,務まると思ったのです。黙っていて申し訳ありません」
太郎「そうでしたか。まあ,しょうがないですね。千雪本人は,この千幸さん以上に霊能力が高いのですね?」
カロック「もちろんです。このままテスト撮影をしていただければ助かります。われわれのほうで,千雪本人に状況を正確に伝えておきますので」
太郎「そうですね。わかりました。明日は,竜姫側からクレームがでないように,くれぐれもお願いしますよ」
カロック「はい。ご安心ください」
その後,太郎は,竜妃側からテスト撮影を継続の了解を得た。そして,竜妃側とカロック側との一触即発の緊張の中で,テスト撮影が終了した。
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テスト撮影が終わって,千幸たちが千雪の家に戻ると,リビングルームで,千雪が千幸を待っていた。といっても,魔法書と辞典を片手に,魔法書を読んでいただけなのだが。千雪は,それらを亜空間に押し込んで,千幸を迎えた。千雪は千幸を連れて,そそくさと2階に上っていった。
カロックは,それを見てメーララに言った。
カロック「あの調子なら茜はうまくやるだろう。われわれが心配しても始まらん。なんと言っても,千雪が主演しないと違約料金1億円が発生するからな。千雪もいやとはいわんだろう」
メーララ「1億円か,,,そうね。その金額をだせば,茜がピロートークで甘い声を出す必要もないわね」
カロックは,今朝の千雪の言葉を思い出した。たしか,成美博士がどうのこうのと言っていたようだった。その内容をアカリに聞いた。
カロック「アカリ,千雪が成美博士と面談するとかどうとか言っていたが,どんな内容だった?」
アカリ「あ,それ?成美博士は呪詛の勉強したいから,千雪の弟子になりたいんだって。でも,今の業務は辞めたくないらしいわ。千雪様は,成美博士に教えることはできないけど,関係する書物は読んでいいっていったわ。ただし,千雪様が成美博士を性奴隷にしている間だけという条件よ」
カロック「なに,それって成美博士が千雪に抱かれている間しか,本を読めないのか?」
アカリ「原則はそうよ。でも,それだど,成美博士は何も読めないから,助手の葉月と葉衣も千雪に提供することになったの。千雪様は,それに同意したわ。ただし,助手の方たちが,千雪様の気に入るボディーラインになってから始めることになったの。ボディーラインの変更は,サルベルさんが担当する予定よ」
カロック「千雪は,着実にハーレムを作っているな。私も千雪にお願いしてハーレムを作ろうかな?」
アカリ「カロック!だめよ!カロックは私を選んだのよ。私の許可なくほかの女性を抱いたら,千雪様にお仕置きしてもらうわよ」
カロック「選んだ覚えはないのだけどなぁ,,,」
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翌日の夕方になった。
千雪と千幸が2階から降りてきた。テレビ局に行くためだ。
茜から,ピロートークを受けて,千雪は,いやいやながらも竜姫との霊能力対決に参加することにした。もっとも,ピロートークがなくても,違約金1億円なので,参加せざるを得ないのだが。
リビングルームには,一仕事終えた連中が戻ってきて,秘書の香奈子を除き,全員が揃っていた。
秘書の香奈子は,まだ警察超現象研究所で動物実験をする予定なので,この場にはいなかった。
全員が揃うと,広いリビングルームでも,少々手狭になってきている。というのも,千雪,千幸,メーララ,サルベラ,カロック,アカリ,美月,美桜,美沙,ハルトさらに,夕方5時からは,ボディーラインを修正する葉月と葉衣の2名も来る。彼女らも千雪邸で泊まるので,余計に手狭になってきた。
それでも2階には4部屋があるので,千雪,千幸,サルベラの3名で1室。メーララで1室。美月,美桜,美沙で1室。葉月,葉衣で1室。1階にも,リビングルーム以外に1部屋があるので,カロックとアカリで1室使うので,まあ,なんとかなっている。もし,ここに成美博士が来ると,もう限界を超えるだろう。尚,ハルトは,現在の中性化の状態なら千雪邸に泊まってもいいのだが,男性機能が復帰したら,千雪邸に泊まることは許されない。カロックはアカリ専用ということで,例外的に許可されている。
食事当番も,アカリひとりでは対応できず,かつ,危険な仕事をしている関係上,外注もできない。買い出しは,アカリとカロックの2名が毎回異なるスーパーで食材を調達することになっている。食事当番は,美月,美桜,美沙のうち2名が毎日担当する。そのため本来の仕事が手に着かないのが実情だ。
アカリが,千雪と千幸に手際よく顔に化粧を施し始めた。その間,メーララから千雪に注意事項を説明した。
メーララ「千雪,あの竜妃の母親は転移系の魔法では天才よ。速攻でどこかに転送されたら,手の足も出ないわ。それと,あの親子と茜は親戚か家族の可能性が高いわ。でも,今は,内緒にしているほうがいいわね。どうしてはぐれてしまったのか,その経緯もわからないわ。ともかく,彼女らはわれわれをかなり警戒しているわ」
千雪「彼女らって,魔族出身?」
メーララ「たぶん,違うわ。オーラが微妙に違うの。茜を見たときは分からなかったけど,彼女らを見たらだいたいわかったわ。彼女らは獣人族よ。魔族ではないわ」
千雪「獣人族って何?よくわからないわ」
メーララ「魔族領の東方面に獣人族が支配する領土があるの。以前は,魔族領の属国だったけど,今は独立しているわ。だから,文化は魔族とほとんど違わないわ」
千雪「じゃあ,その母親を警戒すればいいのね?」
メーララ「そうよ。竜姫はまだ15,16歳くらいよ。上級魔法士程度で,特に脅威にならないわ」
千雪「了解したわ。用は,先手必勝って感じね。それでいくわ」
アカリが,厚めの化粧を施して,千雪と千幸が双子の姉妹のような感じに見えるようにした。
さらに,服装も違った。千雪は男性機能を有しているので,それらを隠すためマタニティードレスに近い服装をした。
千雪の服装は,もちろん霊力による服装だ。色や柄を自由に変える事が可能だ。アカリに,OKサインが出るまで,服の色や柄をどんどん変えていった。
「うっそーー!」
「まじ???」
そう感嘆の声を上げたのは,葉月と葉衣だ。まだ,千雪の怪物ぶりがまったく理解していなかった。美月たち3名も初めて見るのだが,『千雪様なら,出来て当然ね』という感じで眺めていた。というのも,千雪の怪物ぶりは,いろいろと周囲から聞いていたからだ。日が経つに連れて,SARTを辞めて正解だったと思うようになった。
この千雪邸の会計関係は,自然とアカリが管理するようになった。金額の額が大きくなると,サルベラの了解を得るという感じだ。千雪はノータッチだ。それでも,金欠ぎみなのはよく知っている。なんせ教団の建設費用が膨大になるからだ。
今回のテレビ出演は,結局のところ,金のためだ。最近,金を稼ぐ方法がほとんどない状況だ。今回のテレビ出演はいい機会なので,千雪も,すこし真剣に金を稼ぐ方法を考えることにした。
やっとアカリのOKサインがでて,千雪の服装の色とデザインが決まった。色は,黒を基調にして,チョウチョのデザインを金色のラインであでやかにデザインしたものだ。テレビの映像映えする感じだ。髪型は,髪を肩まで伸ばして,神秘さをよりいっそう際立たせるようにした。
千雪「カロック,テレビ局の転移座標点はわかるでしょう?私と千幸を転移させてちょうだい。ついでに,格好よく霧を最初に発生させてから,転移させてね。神秘的だから」
カロック「注文が多いな。長官,霧を千雪の周囲に発生させてくれないか?」
サルベラ「おーけー,任せてちょうだい」
千雪と千幸は,転移してその場から消えた。
ー 日の出テレビ局 霊能力者対決特番放送室 ー
プロデューサーの太郎は焦っていた。竜妃側は,1時間前から来ているのに,千雪側は,出番10分前なのに,まったく音沙汰もないのだ。
太郎「千雪の情夫,なんていったっけ,あの,,,その,,ははは,ハルトに電話しろ!」
助手「はい,すぐに!!」
助手は,すぐにハルトに電話した。ハルト側からは,出番5分前には,必ず着くから安心してとの内容だった。助手は,その内容をすぐに太郎に伝えた。
太郎「5分前?玄関からここまで,10分はかかるぞ!!もう10分切っているぞ!!あーーー,くそ!!どうなっているんだ!!」
シューーー-!!
この特番放送室に,霧が発生した。それも,中空にだ。
助手「太郎さん,霧です霧!!」
太郎「それがどうしたんだ??こんなときに,,,」
それを見た龍子の母親であるマリアは,目を細めた。
マリア「龍子,あの霧,転移魔法で出現しているわよ」
龍子「え?ほんと?霧も転送できるの?」
マリア「かなりの術者ね,,,わたしたち,もう年貢の納め時かもしれないわ。千雪という呪詛師を当て馬にして,金儲けを企んだのが失敗だったようね」
龍子「でも,まだ,負けたわけじゃないし,魔界からの追手だと決まったわけでもないわ」
マリア「いまさら,ジタバタしてもだめね。なるようにしかならないわ」
霧がだんだんと晴れてくると,人影が見えるようになった。それも,女性2名だ。中空からゆっくりと降りてきて,床に着いた。
この時になって,初めてこの人影がはっきりと判明した。千雪と千幸だった。
太郎は,千幸を見て安心した。その隣にいるのが千雪に違いなかった。千雪は,すこし体に幾分フィットしたマタニティードレスのような服装をしていた。その豊満なボディラインは映像映えして,視聴率アップ請け合いだった。おまけに,美人の千幸よりも,さらに美人なのだ。霊能力対決などしなくても,千雪をテレビに映すだけで充分な感じだ。それだけでも,視聴率がかなり取れると太郎は確信した。
太郎は,千幸の元にかけよって,千雪に挨拶しようとした。だが,千幸が遮った。
千幸「プロデューサー,千雪様に1メートル以内に近づいてはなりません。千雪様の言葉は,すべて私が代弁します。よろしいですね?」
太郎は,千雪に近づくと,なぜか体が寒く感じた。というよりも,この放送室全体が3度くらい温度が下がったような感じがした。放送室の隅のほうでは,スタッフのひとりが気分が悪くなって,嘔吐を吐きたくなるほどの悪寒を感じるものも出た。
太郎「あああ,わ,わかりました。はい,はい,結構です」
太郎は,まともに千雪の顔を見ることができなかった。超美人なのはわかるのだが,心の奥底から,『近づいてはいけない,顔を見てはいけない』という危険信号が鳴っていた。
それは,カメラマンにとっては尚更だった。カメラマンたちは,1カメが顔面を,2カメが胸部分をとっていて,3カメが全身,4カメが竜妃を撮っていた。
その中で,一番不幸だったのは,1カメのカメラマンだった。どうしても,千雪の顔を続けて撮らなければならない。1分もしないうちに気分が悪くなり,その原因が千雪の顔を見るからだとわかった。
幸い,彼はベテランカメラマンだったので,1秒間モニターの画面をみては,視線をずらし,2,3秒経ってから,またモニターをちらっと見る,という方法で,なんとかこの嫌悪感を少しは緩和しようとした。
この悪寒,嫌悪感は,千雪からのパワーではなく,千雪の子分である悪霊大魔王のせいだ。彼は千雪から指令を受けていた。テレビカメラを通じて,ある人物を嫌いになる怨念を放つことだ。その人物とは,大統領と科学先端省長官だ。これは,香奈子の復讐の一環だ。
悪霊大魔法が,怨念を発するためには,一度,千雪の亜空間から出なければならない。悪霊大魔法が亜空間から出ると,千雪は悪霊大魔王の体全体に結界を張って,悪霊・怨霊のパワーを大幅に低減させたが,完全には低減できなかった。その余波によって,周囲の人間が気分を悪くしていった。
究極の不幸は,彼らスタッフではなかった。龍子とマリアだった。千雪が出現してから,その異様さに気がついて,龍子は,すぐにオーラで千雪の力量を探ろうとした。
だが,千雪のオーラを見ることはできなかった。それは,千雪がオーラを見せないようにしたわけではない。千雪にそこまでの器用なことはできない。
千雪がしたことはこの放送局の中空に出現したと同時に,透明の霊力を真下に流して,床を張って行き,龍子とマリアの体全体を超細かな網目状のネットのようなもので覆ってしまった。そして彼女らから魔力を吸収していった。
今の千雪の霊力は,相手の精気や寿命を吸収できるだけでなく,魔力さえも吸収できるようになった。魔力を吸収できる能力は,もともと千雪のしている精霊の指輪の能力だ。その能力を千雪が身につけたわけではない。
指輪に接触させると,その接触された相手が魔力を吸収されてしまう。そこで,霊力の層を介して,指輪と相手を間接的に接触させればいいのだ。
龍子とマリアは,千雪の霊力によって,精力を奪われ,かつ千雪の指輪によって,霊力の層による間接的接触によって,魔力をどんどんと吸収されていった。
龍子とマリアがその事実に気がついた時はもう遅かった。
龍子「ママ,なんか魔力が抜かれているわ。オーラを見る力も消滅している!え?これって,千雪がしたの??」
マリア「龍子,,,どうやら勝負あったって感じだわ。私の魔力も指輪の魔力も奪われてしまったわ」
龍子「それだけじゃない。体力も精力も奪われているわ。これでは,どうあがいても勝ち目はないわ。霊能力対抗試合をやり通す体力さえも,危ういわ。それに,なんか,怨霊の類いが強力パワーを放出しているみたい。千雪は,,,われわれとは,次元の違う怪物だわ。いま,分かったところで,もう遅いけど,,,」
放送管理室では,どのカメラ映像をテレビに流すかを決定する。この管理室も,陰湿で,かつ重い雰囲気が漂っていた。特に,千雪の超美人顔を映している映像に,その傾向が強かった。それは,室長でも充分にわかった。
職員A「室長,千雪さんが来てから,なんか,気分が悪いです。美人で,ボインで,もっと見たい気分なのに,でも,でも,なんか体が見るなと拒否している感じです」
室長「うーん,さすがは呪詛で500人以上も自殺においやったといわれる人物だ。半端な雰囲気ではないな。まあいい,裏チャンネルでは,千雪の顔と胸を半画面ずつにして,映像を流し続けなさい」
職員A「わかりました。気分が悪くなったら,他のスタッフに業務を引き継ぎます」
室長「よし,頼む」
この裏チャンネルとは,テレビのリモコンで,『副チャンネル』というボタンを押せば,同じ番組で別のカメラからの映像を楽しむことができるという優れた機能だ。もちろん,この映像はテレビだけでなくネットでも同時配信されていた。
この霊能力対決の番組がスタートしてから,まともに対決したのは1円玉の念動力と初回の透視実験だけだった。
その後,龍子は千雪に敗北を認めて,それ以降の対決を棄権した。体力がなくなったのと,魔力の極端な消耗で,下手すれば生命の危機に陥る可能性もあったからだ。
番組的には,対決というスタイルを撮る必要性はもうなかった。千雪の美貌,豊満なスタイル,そして,千雪の透視能力を徹底的に実証するだけで,番組的には充分に成り立った。
透視能力の実証方法は,いくらでもあった。例えば,黒のカーテンの裏側に,コインを数枚置いて,何枚あるかを答えるというものだ。千雪はそれをことごとく言い当てた。
極めつけは,ゲストに,10メートル離れたところから机の家に積み上げられた10円玉が何枚あるかを黒のカーテンなしで,その枚数を数えさせた。10メートルも離れていると,目視できていても,正確に数えることはできない。
そのゲストは,「これは,見えていても数えれないし,もしトリックで千雪さんに教えようとしても,正確な数は誰もわからない。絶対にトリックなんかでは無理ですよ」と,ゲスト自らが,トリックの可能性を否定した。
千雪邸では,リビングルームで,その映像を皆が見ていた。
アカリ「千雪様の能力はよく知りませんけど,これはいくら千雪様でも,まず無理でしょう。仮に透視できても遠すぎますから正確に数えれませんよ」
美月「まあ,神様ならわかるでしょうね。もし,千雪様が正解を当てたら,裸踊りでもしようかしら?」
ハルト「おお,いいね。じゃあ,千雪様が不正解だったら,私は裸踊りをしよう。でも,今,あそこがないから,見ても面白くないと思うけど」
カロック「いや,千雪は,正解を言い当てるだろうな。10メートルなんて,千雪にとっては意味が無い」
アカリ「え?それって,透視とは関係ないってこと?」
カロック「千雪は透視はできない。神様じゃないからな」
アカリ「じゃあ,なんでわかるの?」
カロック「ふふふ,,,そのうち教えてやるよ,千雪の恐ろしさをな」
サルベラ「霊力よ,霊力!千雪の半径10km範囲内は,千雪の霊力の攻撃領域よ。その範囲内にいるものは,すべて千雪の思いのままよ。今は,その攻撃範囲がもっと広がっているかもしれないわ」
メーララ「私が身をもって体験したわよ。私の能力すべてが,千雪の霊力によって封印させられたわ。竜妃が負けを認めてあとの試合を棄権したのも,霊力によって能力を封印させられたのでしょう」
アカリ「すごいですね,霊力って。でも,どうして,皆さん,はそのすごい霊力を習得しないの?」
カロック「いい質問だ。霊力には大きな欠点がある。習得が困難で,しかも,何十年とかかってしまう。今の魔界では,誰もそんな霊力など習得しようとするものはいない。千雪も尊師からその霊力を分け与えれたものだ。ハルトは,千雪から霊力を含んだ母乳を与えられて,擬似的に霊力を行使できるようにしている。まじめに時間を費やして霊力を獲得したのは尊師だけで,千雪もハルトも,チート霊力使いだ。もっとも,千雪は,その後,他の霊力を取り入れてパワーアップしたようだが,詳しくはよく知らん」
ハルト「なるほど,,,その説明でよくわかりました。私は,霊力の攻撃領域は2メートルに達しましたが,その範囲にあるものは,形,形状,色も含めて感知することができます。千雪様は10km先まで感知できるのでしたら,10メートル先のものなんて,手で触るような感じで詳細にわかると思います」
美月「テレビ見てくだい。千雪様が,カーテンの後ろにある積み上げられたコインの数を正確に当てました!!奇跡です!神様です!!」
美桜「美月,裸踊りは?しないの?」
美月「美桜,冗談よ,冗談!もっと胸を大きくしてもらってから,見せてあげるわ」
美桜「その言葉,忘れないでね。私,しっかり覚えておくわ。でも,今の霊力の説明を聞いてしまうと,分かって当然って感じがするわね」
美沙「私もあんな能力ほしいな。今度,千雪様に抱かれたら,お願いしようかな?」
ハルト「ダメダメ。私は,男性自身さえも無くして修行している身だ。千雪様の母乳は,私だけのものだ。誰にも分け与えることはできん」
美沙「ふん。千雪様がOKって言ったらそれでいいのよ。今の千雪様はマインドが『男性』なのよ。女性を抱きたいのよ。女性でないハルトに勝ち目はないわね」
アカリ「はいはい,口論はそこまで!!テレビに集中しましょう。今度は,ボックスの中にある物体を当てる内容よ」
一方,その頃,龍子とマリアはどうしたかというと,タクシーに乗っていた。
龍子とマリアは棄権したあと,すぐにタクシーを飛ばしてこのテレビ局から去った。これが幸いして,龍子とマリアは,千雪の攻撃領域から脱することができた。
タクシーの中で,マリアは龍子に言った。
マリア「龍子,よかったね。千雪の『攻撃領域』から抜け出せたわ。今,亜空間から予備の魔法石を取り出すわ。それで,魔力を補充しましょう」
マリアは,亜空間から予備の魔法石を出して,その魔力を龍子と分け与えた。こうすることで,少しは魔力が回復して,体力を戻す回復魔法も使えるようになった。やっと,マリアと龍子は,少し安心した気分になった。
龍子「ママ,千雪の『攻撃領域』は,20km以上もあったよ。いったい,どうなけ化け物なの,千雪って」
マリア「わけわかんないわ。もう,人間が行うレベルではないわ。精霊並の能力だわ。でも,私たちを無理矢理殺そうとしていたわけでもないわね。敵ではないのかしら?」
龍子「ママ!ママの胸になんか,細い糸のようなものが微かに見える,,,あ!なんかの魔法陣が植え付けられている,,,あ,私も同じものがある!!これ,何?」
マリア「龍子,もっと詳しく見てちょうだい。糸が見えるの?」
龍子「そうよ。糸が延々と繋がっているみたい。いったい,どうなっているのかしら?」
マリア「よくわからないけど,,,でも,千雪からはもう逃げれないことは確かね」
龍子「ママ,これからどうするの?千雪からまだ逃げ続けるの?」
マリアは,しばらく考えて,意を決したようにして言った。
マリア「・・・,いや,止めましょう。もし,千雪が敵なら,とっくに殺されているわ。それに,この糸がある以上,逃げたって無駄よ。思い切って千雪に会いに行きましょう。あの千雪の情夫に,後でいいから連絡してちょうだい。頭を下げて千雪の庇護下に入るわ。千雪の奴隷にはなってしまうけど,殺されることはないでしょう」
龍子「・・・・,わかった。ママの言う通りにする」
ー 日の出テレビ局 霊能力者対決特番放送室 ー
龍子たちが,棄権したことで,千雪のみの実演となった。
特に,透視実験では,千雪が透視した絵を描いていくという内容だ。そのため時間が結構かかった。
最初の透視では,黒いカーテンの後ろに絵を配置して,側面から絵の図柄が見える状態だった。その後,側面からでも絵の図柄が分からないように,絵自体にカーテンをかぶせる,という方法をとった。それでも,千雪は見破ってしまい,同じような絵を描いた。
そこで,ゲスト出演者が個室で絵を描いて,誰にも見せない状況でその絵を黒の布で覆っったものを千雪の前に置いた。
でも,千雪は,その条件でも,布で覆われた絵の図柄とまったく同じ絵を描くことに成功した。
この頃になると,番組のスタッフも気分の悪さに少しは慣れてきて,番組の進行が幾分スムーズに流れるようになった。
透視能力の次は,病人の病を当てるというものだ。だが,透視能力の実演で,かなり時間を潰してしまったので,病院に行く時間はなかった。
そこで,急遽,番組のスタッフの中から,持病のある連中をひっぱり出して,その持病を当てるという内容に変更した。
言葉を発するのは千雪ではない。すべて千幸が発する。千雪が念話で千幸に伝えるのだ。
というのも,千雪にとって念話のほうが楽だからだ。ただ,それだけの理由だ。ほかに理由はない。千雪からの念話を受けて,千幸は次のように話した。
千幸「はい,ただいま,千雪様から病巣の透視が完了したとの念話がありました。この者は,腰の骨の位置がずれていて,それによって,さまざまな病気が引き起こるとのことです。ごく最近,ギックリ腰になったのではありませんか?」
職員B「あ,当たっています。そうです。なりました。やっと,最近になって,少しましになったのですが,,,」
千幸「千雪様からのアドバイスがありました。今の病院では,あまり,改善しないとのことです。抜本的に,腰の骨の位置を矯正することを主眼とした治療に変えるべきとのアドバイスです」
職員B「えーー,そうなんですか??,,,ありがとうございます。ありがとうございます」
このような感じで,職員3名を使って,彼らの持病を言い当てていった。これは,決してやらせでも,なんでもないのだが,視聴者にとっては,手抜き放送のようなイメージを与えてしまい,この病名当ての部分については評判は良くなかった。それ以外の透視や念動力については評価は高かった。
この番組の視聴率は20%を超えており,総合的には好評だった。特に,裏チャンネルの千雪の顔のアップと爆乳のアップについては,常に視聴率が35%前後と非常に高かった。
このネット放送やテレビ放送を見たものは,多少気分が悪くなる程度で収まったようだった。
千雪が目的とした『潜在的に大統領が嫌い,科学先端省長官が嫌い』という潜在意識を植え付けるという点については大成功だった。というのも,このことがきっかけで,その後,すぐに,『大統領を弾劾する』,『科学先端省長官を弾劾する』というホームページが多数出現し,かつYoutubeも頻繁にアップロードされるようになっていったからだ。
この番組を見たものの反応は,さまざまだった。
千雪の能力は本物だ。だから500人以上もの集団自殺の呪詛をしたのは,やっぱり千雪だ!!
千雪の顔のアップの映像は,はっきりと映っているし,だれでもはっきりと見えるのだが,その動画の画面を印刷してしまうと,顔がなぜかはっきりと映らなかった。
異常性欲者は,その映像をプリントアウトして,ぼんやりとした千雪の顔や,千雪の胸部分を,自分の体に近づけて楽しんだ者もいた。だが,不幸なことに,そのような行為をしたものは3日後に自殺した。
そのようにして自殺したものは,全国で数百人に達したが,ニュースやネットでは,まったく公開されなかった。というのも,この月本国では,年間の自殺者総数は4万人に達しており,その総数からすれば,数百人程度では,その総数の中に埋もれてしまうだけだった。
ーーー
この特番が成功して,高視聴率を獲得したことで,太郎プロデューサーは,鼻高々になった。放送局内でも,ますますその発言力を強めていった。今回は,集団自殺事件とは関係ないものとして千雪が出演するという条件だったが,太郎は,なんとか,番組で自殺事件と千雪の関連を暴くような番組を放送したかった。その内容なら,今回以上に視聴率を確保できると踏んだ。
太郎は,触れてはならない部分を触れようとしていた,,,
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