第12話香奈子の決意と潜入捜査,首になる

ー α隊の事務所 ー


 香奈子は,α隊の事務所に来ていた。タクシーで2時間以上もかかった。途中,渋滞にまきこまれてしまったことも要因だ。この間,重大な決定が大統領執務室でなされたのだが,そのことを香奈子は知る由もなかった。


 香奈子は,会議室に通された。しばらくして,インタビューすべきα隊の隊長が現れた。彼は,いやーな顔をしてした。なんか,いやな役目を仰せつかったような感じだ。


 香奈子は,椅子から立ち上がって,頭をペコリと下げてから,自己紹介を始めた。


 香奈子「あの,,,わたし,科学先端省の香奈子です。今日は,インタビューで,ここに,,,」


 香奈子が,ここまでしゃべったところで,隊長が口を挟んだ。


 隊長「ああ,もういい。不要だ。お前は,もう科学先端省の人間ではない。先ほど,お前の上司から連絡があって,急遽,お前の処分が決まったそうだ。この場で,お前は首だ。もう,自宅に帰っていいぞ。さっさと,次の仕事でも探せ」


 香奈子「え??えーーーー!!」


 香奈子は,首になることは覚悟していたが,こんなに急に首になるとは思わなかった。それに,本来は,香奈子の上司が首を言い渡すべきなのだが,なんで,α隊の隊長が言い渡すのかも理解できなかった。


 香奈子「あの,,なんで,上司でもないあなたがそんなこと言うのですか?」

 隊長「香奈子,お前は特例だ。お前の首を切ったのは,科学先端省の長官だが,それを決定したのは大統領だ。大統領命令で,お前は30分前に上級公務員としての資格を失った。やむなく,俺が,お前にそれを伝える役目を負ったというわけだ」


 香奈子「でも,決定が早すぎます。明日,科学先端省で上司から首を言い渡しても遅くはないのに,なんで,そんな急に,,,」

 

 隊長「お前は,今の身分は,千雪の秘書という身分だけになった。その意味では,私は,『お前』,という表現をもう使わない」


 隊長は,コホンと咳払いをして言葉を繋いだ。


 隊長「『秘書さん』,もう,薄々気づいているのではないかね?頭脳明晰な秘書さんなら?」

 

 香奈子「よくわかりませんが,大統領がからむ案件ということは,千雪様に対してなんらかの決定をした,ということでしょうか?それも,超法規的な手段ということになると思います。つまり,千雪様を殺す算段がついた,,,それも,ついさきほど,,,なるほど,,,25日に何かするのですね?アカリさんを千雪様から引き離す算段がついたので,大統領が決断した,という可能性が高いのではないでしょうか?」

 

 隊長「まあ,そういうことだ。私としては,千雪が多くの人を殺してきたとしても,正当防衛の可能性が高いから,超法規的な手段をとることには,あまり乗り気ではないのだけど,私の意見を挟むような状況でもなかった」


 香奈子「でも,そんなあからさまに,千雪の家を爆破するような対応をすれば,千雪様はその日に家から出て退避してしまいますよ」

 隊長「それは,織り込み済みだ。でも,千雪はそうしないだろう」

 香奈子「え?どうしてですか?」

 隊長「あそこには,アカリがいるだろう?彼女は誰だと思っている?」

 香奈子「陸奥星財閥の総裁のひとり娘ですが,,,」


 隊長「そうだ。アカリが調査依頼すれば,どんなことでもすぐに判明してしまう。今回の決定事項も,当然,すぐに千雪の耳にはいるだろう。つまり,確実に対策されるということだ。千雪側にアカリがいる以上,隠し事はまず無理だ」


 隊長は,珍しくため息をついた。


 隊長「俺も,千雪側につくかな,,,陸奥星財閥のバックアップがあれば,いくらでも仕事はあるだろうし,,,それに,魔法が使える連中が3名もいるんだぞ。それも,魔界でも超一流の使い手だそうだ。さらに,ハルトは,今,修行中で能力を増強しているらしい。もしかしたら,とんでもない化け物になるかもしれん。そうなったら,もう,,,誰もどうすることもできない。まあ,大統領側にはピアロビ顧問がいるからなんとか釣り合いがとれるかもしれんが,それでも,ピアロビ顧問ひとりでは,役不足かもしれん,,,」

 

 香奈子「あの,,,千雪様は,今でも,正当防衛を理由に人を殺しているのでしょうか?」

 隊長「今は,千雪の占い店に入ろうとしている連中を事前に阻止できているから,これ以上の被害はでないと思う。このままの状態が続くと,千雪もあの占いの店を閉めることになるだろう。上に政策あれば下に対策があるという感じだな,ふふふ」


 香奈子「なるほど,,,」


 香奈子は,何度か深呼吸をした。そして,目をキリッとして,隊長を凝視して,何かを悟って確認したような言葉を言った。


 香奈子「うん。はい,もう,いいいです。私,今から『千雪の秘書』として行動します。隊長,そこで,私の決心を見届けてください」


 隊長「ん?あ,うん,,,」


 隊長は,よくわからないまま,返事した。


 香奈子は,電話を取りだして,アカリに電話した。


 香奈子「アカリ,私,科学先端省が首になってしまったわ。千雪の秘書をしているのが理由だって」

 アカリ「えーー??ほんと??何それ??理由になってないわ!!」

 香奈子「そうよ!だんだんと腹がたってきたわ。アカリ,千雪様に伝言お願いできる?私,秘書としての仕事を専属で今からするわ。例の教団に潜入調査しにいく。私がきちんと仕事したら,千雪様にも私の願いを聞いてほしいの。半年以内に,私を首にした大統領と科学先端省長官を退陣に追いやってほしいの。わかった?ちゃんと伝言してね?」

 アカリ「なるほど,,,了解したわ。私も香奈子の決心を応援する。お父様にも香奈子の応援をお願いしてみるわ」

 香奈子「アカリ,ありがとう。じゃあ,電話切るわね」

 アカリ「うん,がんばってね」


 香奈子は電話を切って,隊長を睨み付けた。


 香奈子「隊長,今,言った通りです。私を首にした大統領と長官を後悔させてあげます。期間は半年です。半年以内に実行します。もし,彼らに会うことがあれば,首を洗って待っていていくださいとお伝えください」


 隊長「香奈子さん,なかなかの啖呵だな。その啖呵が空振りにならないように頑張ることだ」

 香奈子「はい。がんばります。では,失礼します」


 香奈子は,α隊の事務所を後にして,そこから直行で夢現幸福教の本部へとタクシーを飛ばした。


 

 ー 夢現幸福教の本部 ー


 夢現幸福教の本部は,富寺山の山麓にあり,周囲にはまったく民家がない。本部といっても,大きな倉庫のような構造で,外壁があるだけの単純な作りだ。カーテンの間仕切りで,会議室,崇拝室,初級奉仕室,中級奉仕室,上級奉仕室,超級奉仕室,教祖室,スタッフ室などなど,臨機応変に部屋を区画変更することができるようになっている。


 こんな辺鄙なところでも,最寄り駅から車で30分も飛ばせば到着する。


 香奈子は,夢現幸福教の入信希望者として会議室に通された。


 入信者は,無条件で入信できるわけではなかった。それなりに厳しい審査がある。審査員は,女性の場合,カエデが対応した。


 カエデが,香奈子の住所,氏名,年齢を聞いた後,職業を聞いた。

 

 香奈子「職業ですか,,,えーと,家事手伝いです」

 カエデ「つまり,無職ってことね。かまわないわよ。入信希望の動機は?」

 香奈子「えーと,なんか,教祖様の奇跡がすごいって聞いたので,それで,奇跡をこの目で見たくて入信したいと思います。自分の人生が変わるのではないかと期待したいのです」

 カエデ「なるほどね。じゃあ,入会金100万円支払ってちょうだい。それと月会費10万円も一緒にお願いします。合計110万円よ」

 

 香奈子「えーー?たかーい!!そんなお金,支払えないでーーす。なんか,支払わなくもいい方ってないですか?」

 

 カエデ「チェッ,また貧乏人がきたか,,,」

 

 カエデは,正直な印象を吐露した。


 カエデ「じゃあ,聞くけど,ほんとうに入会したいの?」

 

 香奈子「はい,なんとしも,教祖様の奇跡をこの目で見たいのです」


 カエデ「じゃあさ,この本部に入って,なにか気がついたことない?」


 香奈子「ええ,なんで,皆さん,水着を着ているのですか?夕方になると,肌寒いじゃないですか」


 カエデ「そうよ。ここの信者は,携帯持ち込み禁止なのよ。それに,教団で見知ったことは,決して口外してはいけないのよ」


 香奈子「でも,そんなことしたら,信者の勧誘できないじゃないですか?」

 

 カエデ「勧誘用の説明資料があるから,それに準じて説明すればいいのよ。ところで,あなたは,処女なの?処女なら,入会金100万円はすぐに手に入れることができるわ」


 香奈子「え?それって,売春するってことですか??」


 カエデ「バカね,ここは,教団よ!集団売春組織ではないのよ。もっとも,最近は,警察がそれを疑って潜入捜査を試みるているようだけどね。でも,皆,失敗するわ。なんせ,入会金100万円を支払うことができないからね,ふふふ」


 香奈子「ということは,それに近いことが??」


 カエデ「まあね,確かに,娼婦出身の女性は多いわ。美人でボインの女性は,上級奉仕室で男性信者を奉仕できるわ。45分で10万円になるわ。男性信者は20万円支払うのよ」


 香奈子「えーー??それって,奉仕に名を変えた売春そのものじゃないですか。それに,10万円も出すんだったら,ソープランドに行ったほうがいいんじゃないの?」


 カエデ「フフフ。でも,見てもわかるけど,若者の男性信者が多いのも分かるでしょう。どうしてだかわかる?」


 香奈子「わかりません」


 カエデ「金のない男性信者は,女性信者に奉仕することで,お金をもらえるのよ。ここではポイントと言っているけど,お金と同じ意味よ。女性信者にマッサージしてもいいし,いろいろなサービスをしてもいいのよ。45分で5000円が相場ね。女性信者は教団にも5000円支払うから合計1万円になるわ。それも,若くてハンサムなら,その倍額になるわ。需要と供給のバランスね。それ以外にも,男性信者がお金を稼ぐ方法として,しゃべり相手になること,悩みを聞いてもいいし,パソコンの使い方を教えてもいいし,奉仕できるものは何でもいいのよ。性的なものでなくてもね。もっともほとんどいないけどね,そんな例は」


 香奈子「なるほど,,,男性には,男性ホストとしての役割があるのね。教団は,つまり,その場所を提供しているから,場代を徴収するわけね?」


 カエデ「そう理解してもいいわ。あなた,体を売る気ある?」


 香奈子「いやです」


 カエデ「じゃあ,ボディタッチでもいいわよ。美女のボディータッチなら,2時間複数の男たちに体全体を触られるけど,2時間我慢すれば百万円になるわよ。男どもは,体の一部を10分間触って2千円をあなたにあげるわ。教団には千円支払うから3千円でいいの。だから,おおくの男性があなたを触りに来ると思うわ」


 香奈子「・・・・,もし,ここで,拒否すれば,入信できなくなるのですね?」


 カエデ「そうよ。ここで,体を売って金を稼いでもいいし,男どもに体を触らせてお金を稼いでもいいし,教祖の奇跡を信じて財産をすべて教団に寄付してもいいし,まったく自由なのよ」


 ここに来て,香奈子は体が少し火照ってきたと感じた。


 香奈子「なんか,体が少し火照ってきたのですけど,,,これって何かの薬か何かですか?」


 カエデ「簡単にいうと,幸せになる匂いね。弱〜い媚薬のようなものよ」


 香奈子「教祖様の奇跡を見るには,信者でないとダメなのですね?」


 カエデ「あたりまえじゃない,そんなの。毎月第1週の土曜日に行うから,3日後になるわね」


 香奈子は,経費の2千万円から支出することも考えた。だが,爆弾の費用や,奇跡をあばく優秀な人材を採用する経費などを考えると,1円も無駄にはできない。


 香奈子は決心して言った。


 香奈子「わかりました。ボディータッチでお願いします」


 カエデは,事務的に香奈子を更衣室に連れていき,全裸にさせて,サングラスをかけさせた。それに,もともと薄暗いので,相手の男性の顔がよくわからないほどだ。


 香奈子は,上級奉仕室に入って,床に横になった。媚薬の匂いのためか,金のあまりない男性たちは,彼女の体に触るという選択をした。


 乙女のボディータッチという奉仕をする女性信者は,香奈子が初めてだ。もともと,こんなことろに乙女が来ること自体がおかしい。娼婦か,娼婦くずれがほとんどで,ごく一部に,真に奇跡を信じて入信するものがいる程度だ。


 カエデは,香奈子が何か別の目的で来たのだとは思ったが,ひと目みて男慣れしていない乙女だと思ったので,入信させることにした。


 ・・・・

 5時間が経過した。


 カエデ「香奈子さん?大丈夫?まだ,媚薬の効果が効いているけど?」

 香奈子「全身が性感帯になってしまったけど,なんとか歩けるわ。それに,30分ごとに体の洗浄時間があるので,いい休息になって,なんとかやってこれたわ。

 私,,,もうまともな結婚もできないのね,,,あの怪物の秘書になった時点で,もう,私の人生は破滅の道を行く運命だったのね」


 カエデ「香奈子さん?ほんとうに大丈夫?頭,おかしくなっていない?あなた,まだ,乙女なのよ。ちゃんと,結婚もできるわよ。それに,今日のあなたの稼ぎは150万円にもなったわ。110万円を教団に支払っても,まだ40万円も残っているわよ。あとで,あなたの口座に送金しておくわね」


 香奈子は,シャワー室でカエデに体をきれいに洗ってもらってから,服を着て,タクシーで自宅に帰った。



 ー 翌日 ー


 翌日も,香奈子は,前日と同様のことを行った。ただ,今日は,男性信者があまりいなかった。奇異に感じたのは,香奈子だけではなかった。カエデもそう感じた。不思議なのは,昨日の信者がひとりも来ていないことだ。


 カエデは,全裸になった香奈子を上級奉仕室に連れていくときに,香奈子につぶやいた。


 カエデ「香奈子,今日は,あまり稼げないわよ。男性信者が50人いるかどうかよ。これでは,せいぜい20万円稼ぐのが精一杯だわ。それ以上に,娼婦出身の信者が稼げなくなってしまうわ。商売あがったりだわ。いったい,何が起こったのかしら?」


 そう言われても,香奈子にはさっぱり原因が分からなかった。


 香奈子「私にはさっぱりわかりません」


 カエデ「まあ,いいわ。男性信者50人なら,30分もすれば,終わってしまうわ」

 香奈子「はい,それで結構です。あの,教祖様に会いたいのですが」

 カエデ「そうね,あなたは,教団に貢献しているから,あとで,特別に会わせてあげるわ。悩み相談料は2万円よ。安いでしょう?」

 香奈子「はい,よろしくお願いします」

 カエデ「ふふふ。じゃあ,30分後にね」


 30分後,香奈子は,カエデにシャンプーと石鹸できれいに全身を洗われてから教祖に会いにいった。


 ー 教祖の部屋 ー


 教祖の部屋といっても,カーテンの間仕切りで仕切られているだけだ。徹底して節約主義の金もうけ主義まるだしだ。


 今の教祖は,メーララではない。キクが代理で行っている。キクもある程度はオーラを見ることができるので,奇跡をある程度示すことは可能だ。


 教祖の部屋には,テーブルがあって,椅子が4脚あるだけの部屋だ。香奈子が椅子に座ったのを見計らって,教祖のキクが口を開いた。


 キク「私が教祖です。今日は,何か悩み事の相談ですか?」

 香奈子「はい,私の将来を占ってほしいのです。結婚できるのか?幸せになれるのか?この教団にいて,ほんとうにいいのか?など,教祖様からのアドバイスがほしいと思います」


 キク「なるほどね。あなた,まだ,23歳でしょう?人生,これからですよ。それに,最近,あなたは,大きな変化がありましたね。気持ちの整理がまだできていないようです。自分の決心した気持ちと行動に矛盾が生じています。

 

 でも,数日もすれば落ち着くでしょう。それに,あなたの周囲の人たちは,すごい強運の持ち主のようですね」


 キクは,ここまで正直に言っあと,付け加えるように言った。


 キク「でも,その周囲の人たちの強運を香奈子さんにも伝わるためには,この教団の信者として,これまで以上に『奉仕』をしなければなりません。そうすることによって,強運があなたを早期に結婚へと導き,子供を得て,幸せな人生を送ることができるでしょう」


 香奈子「大変,貴重なアドバイス,ありがとうございます。それで,少しでもいいので,奇跡を見ることはできますか?」

 キク「そうですね,では,簡単な奇跡をお見せしましょう」


 キクは,10円玉を取り出した。


 キク「10円と書いてある方が裏で,鳳凰堂の図柄の方を裏としましょう。この10円玉を持ってください」


 香奈子は,言われた通りにした。


 キク「では,両手でよく10円玉を振って,左手の甲の上に置いて,それを右手で隠してください」


 香奈子は両手でよく振って,言われた通りにした。


 キク「自分だけが見えるようにして,10円玉が裏か表かを確認してください。


 キクは,隣のカエデにもわからないようにして,右手を少し開けて10円玉を見た。それは,『表』だった。香奈子は,すぐに,右手で再び覆って完全に見えなくした。


 香奈子「はい,確認しました」


 キク「では,私が正解を答えたら,香奈子さんは,それが奇跡だと信じますか?」

 香奈子「あの,確率5割では,ちょっと,,,4回連続で当てることができたら,奇跡だと信じましょう」


 キク「分かりました。まず,1回目です。それは,表です」

 香奈子「えーー??どうしてわかるのですか??」


 香奈子は,右手を広げて,表になった10円を見せた。


 香奈子「じゃあ,2回目です」


 香奈子は,そう言って,再び同じことを繰り返した。そして,キクは4回とも正解を言い当てた。


 香奈子は,絶対にトリックだと思った。でもその理由がわからない。


 香奈子「教祖様は,どうしてわかるのですか?」

 キク「簡単なことです。表とか裏とかという単純な思考なら,私はすぐに読み取ることができるのです。例えば,人を殺してしまったとかという強烈な思考なら,なおさら容易に読むことができます」

 香奈子「それって,有名な『サトリ』の能力ですよね?」

 キク「そうです。今日は,調子がよくありませんが,調子がいいときは,信者の亡くなった家族たちの気持ちまでも読むことができます」

 香奈子「調子がよくなるのは,いつですか?」

 キク「そうですね,,,財産がたくさんあるとかでしたら,急に調子がよくなります,ふふふ」


 香奈子「なるほど,,,私は財産がないから,教祖様は調子が悪いのですね?でも,教祖様の能力はほんものですね,,,ありがとうございました。また面談していただいていいですか?」


 キク「香奈子さんなら,いつでも歓迎よ。,いつでもどうぞ」


 かくして,香奈子は,教祖と面談することができ,教祖の『奇跡』を体験することができた。


 香奈子は,どうやって,その奇跡を暴くかを考えながら帰路についた。サトリ,もしくはサトリに匹敵する能力者を至急に探さなければならなかった。


ーーー

 香奈子を見送って戻ったカエデは,キクに賞賛の言葉を贈った。


 カエデ「キク,なかなか対したものね。その能力があるなら,メーララがいなくてもやっていけるんじゃないの?」

 

 キク「そうね。もともと私たちだけでする計画だったからね。別に,メーララがもどらなくても,うまく詐欺ができるわ。それに,今は,ビデオカメラの性能が優秀だから,10円玉の表と裏なんて,一発で認識できわ。表なら,白い旗が,裏なら赤い旗が後ろで立つから百発百中よ」


 カエデ「でも,メーララなら,そんなことしなくても,言い当てることができたのには,びっくりしたわ」

 

 キク「私もびっくりしたわ。しかも,一度も手を開けないよ!!手の平を透視でもできるかと思ってしまうわ」


 カエデ「でも,,,メーララって,怪物だとわかったわ。まさか,本当に私の両手を再生させてしまったのよ!!」


 キク「ハハハ!!それって,絶対にない,ない!!何度も言わせないでよ。夢でも見てたんじゃないの?」


 カエデは,この話題をするたびにキクに否定されてしまっていた。何度言っても無駄だった。


 カエデ「信じないならそれでいいけど,でも,メーララとは,距離を置いたほうがいいと思うの。危険な匂いがするわ。教団から追放しましょうよ。その方が安全だわ」


 キク「まあ,あなたがそう言うならそうしましょう。別にメーララがいなくてもやっていけるしね」


 この日,メーララは,『夢現幸福教』から追放となった。そして,教団のホームページから,教祖の名前が,メーララからキクに変更になった。メーララには,メーララの携帯に,教祖としての役職を解くとだけメール連絡があった。


 もっとも,当のメーララにとっては,それどころではなかった。


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