第8話1000万円の仕事,千雪能力開示


 ー 千雪の家 ー


 千雪のリビングルームでは,千雪,カロック,香奈子が座っていた。その向かい側には,治安特別捜査部α隊の隊長と2号,および茜が座っていた。


 この会談は,千雪にとっては,1000万円になる会談だ。最大限のもてなしをするようにとの命令が出た。カロックの愛人となったアカリは,今は,女中の身分だ。まだ,千雪に何のアドバイスもできない。父の言いつけで戦略関係の本を読んでいるが,まだまだ実践に移せるような段階ではない。


 アカリは,全員にコーヒーまたは紅茶を用意して,かつ,高給ブランドのケーキも出した。


 隊長「茜,トランクのお金を見せてあげなさい」

 茜「はい」


 茜は,ジュラルミンのトランクを机の上において,鞄を開けた。


 茜「ここに1000万円あります。どうぞ収めください」


 千雪「香奈子,確認しなさい」


 香奈子「わかりました」

 

 香奈子は,1000万円をテキパキと数えた。


 香奈子「はい,確かにあります」


 千雪「α隊隊長,確かに1000万円あります。事前の約束の通り,なんでも聞いてください。その内容は録画,録音は禁止。かつ,なんら犯罪等の証拠にはならないという点は,間違いありませんね?」


 隊長「ああ,間違いない。それに,千雪さんは,もともとこの国の人だから,知っていると思うが,死体がない以上,殺人を直接証明することはできない。今の制度では,千雪さんを逮捕,起訴することはできない」


 隊長「では,まず,千雪さんの能力について聞きたい。思いつく範囲でいいから,普通の人間にはできないような能力をあげてください」


 千雪「そうね。基本は,防御能力。拳銃でも,この体を貫くことは無理ね。でも,平日は,防御していないから,生身の人間と同じよ。あと,人の生命エネルギーを吸収できるわ。ミイラにしてしまうの。調子のいいとは,灰燼にまでできるわね。草木も同じよ。今では,それが基本かな。あとは,おまけみたいな能力よ。透明になる,加速200倍で動く,手刀の強度はダイヤモンド以上,精神支配をして5件の命令まで強制的にさせることができるくらいかな?空を飛べるのは,あたりまえでしょう?他に知りたいこと,聞いてちょうだい?」


 とても信じられない内容だが,その一部は現実に起きて,映像に撮られている。


 隊長「なるほど。担当直入に聞きます。半年前の6名が縛られて,木の葉会の組員が死亡した事件ですが,あれは誰が犯人ですか?」

 千雪「私の部下で,悪霊大魔王よ。わかりやすく言えば,怨霊が意識をもって,パワーを増したような怪物ね。ここに出現させてもいいけど,結界を張らないと,精神の弱い者は,即死するわ」

 隊長「それは,千雪さんが命令したのですか?」

 千雪「違うわね。当時は,私は意識障害があって,右も左もわからなかったの。その場で,組員6名に犯されそうになったわ。それに怒った悪霊大魔王が彼らに仕返しをしたの。彼は,人間の霊体を破損させることができるわ」

 隊長「なるほど。次に,一軒家での事件ですが,15名が失踪しました。彼らの衣服に落ちていた灰から,彼らのDNAが検出されました。1名は骸骨状態でした。あれは誰が犯人ですか?」

 千雪「あれは,私よ。生命エネルギーを吸収したわ。でも,彼らは私をレイプしようとしたわ。正当防衛ね」

 隊長「・・・,では,幽門館の近くで5名の灰燼になった事件は,千雪さんが行ったのですか?」

 千雪「そうよ。5名にレイプされそうになったわ。正当防衛ね」

 隊長「・・・,占いの店に来る客が10分ほどで出ていって,現金を鞄につめて持ってきて,またお店に入るのですが,彼らはどこにいったのですか?」

 千雪「彼らは,消滅したわ。蒸発したと言ってもいいわね。それも正当防衛ですか?」

 千雪「そうよ。そのお客は,私の服を脱がして,この胸を思いっきり握るのよ。3分間もね。正当防衛よ」


 2号は,隊長に小さい声で言った。


 2号「過剰防衛じゃないですか??」


 隊長「その客はお金を持ってくるのだけど,それは,どうしてですか?」

 千雪「精神支配よ。5つの命令を実行したの。家に帰れ,預金全額を引き落とせ,できるだけ多く借金して現金化しなさい,7日後のこの時間に身を隠してお金を持ってきなさい,私のことはいっさい口外するな,という感じの命令ね」


 隊長「今でも,行っているのですか?」

 千雪「50億貯まったらやめるわ。もうすぐ貯まるから,もう終わりね」


 隊長「このあとは,何をする予定ですか?」


 千雪「50億を元手に,お金を稼ぐ方法を考えるわ。今は,まだ,何もアイデアがないわ。いい商売があったら教えて?今は,魔界でやっていた宗教団体を創ることくらいしか思いつかないわ」


 隊長「わかりました。いろいろとありがとうございます。今後も,われわれα隊と千雪さんがよりよい関係を築きたいと思います。この茜ですが,用事がなくても週に何度か,この家に遊びに来てもいいでしょうか?」


 千雪「なるほど,,,いいわ。遊びに来てちょうだい。ここに来るときは,何か,おいしい食べ物を持ってくるのよ。それと,なにか,おもしろい商売のネタを持ってきてちょうだい」


 茜「はい,隊長にいろいろ聞いて,持ってきます。あの,ここに来るときは,事前に予約はいるでしょうか?」

 千雪「いらないわ。それに,アカリは,買い物以外は,家にいるから,私がいないときは,アカリの料理でも手伝ってちょうだい。毎日,来てもいいわよ。女中がもう一名増える感じだから」


 茜「ありがとうございます。では,早速,明日から来させていただきます。アカリさんのお手伝いをさせていただきます」

 千雪「それがいいわね。茜さんは,家はここから遠いの?もし,遠かったら,住み込みでもいいわよ。アカリは妊娠しているから,あまり無理はできない体なの。茜さんが,いいなら,ここに住んでもらっていいわ」


 茜は隊長の顔を見た。隊長は,頭を上下に動かした。


 茜「はい。では,そうさせていただきます。明日,身の周りの荷物を持って,また来させていただきます」


 千雪「あら,気が早いわね。でも,助かるわ」


 隊長らは,千雪らに別れの挨拶をして去った。


 ーーー

 カロック「千雪,正直に話して,よかったのか?まあ,あまり,正確な情報は与えなかったようだが」

 千雪「この国では,証拠主義だからね。精神支配とか,死体がないと,証拠がないのよ。だから私を起訴できないの」

 カロック「ということは,別の方法を取ることになるな」

 千雪「そうね。強行手段をそのうち取るでしょうね」

 カロック「例えば?」

 千雪「例えば,この家をまるごと破壊するとか,私がひとりでいるところを,最大火力で攻撃するとかでしょうね。香奈子,悪いけど,周囲に被害を与えずに,この家だけを破壊できる方法があるかを調査してちょうだい」

 香奈子「私は,軍隊所属ではないから,わからないわ。でも,同僚にいろいろ聞いてみる。軍事気狂いがるから,すぐに判明するかもしれない」

 千雪「じゃあ,お願いね。それと,今の話をそのまま上層部が真に受けて,強行出段を取るという決定がなされた場合,どのような作戦行動をとるかもシミュレーションしてちょうだい。それと,その時期も予想して」

 香奈子「千雪様は,意外と頭がまわりますね」

 カロック「当然ですよ。千雪は魔界でこんなこと何回もやってきた。バカでも予想できる」

 千雪「バカ,バカと言わないでよ。ほんとうにバカになってしまうわ」

 

 千雪は,アカリにも命令した。


 千雪「アカリ,あなたもネットか何かで,この国と麦国の軍事情報を調査してちょうだい。この家だけを破壊できる方法があるかどうかもね」

 

 アカリ「わかったわ。夕方は時間があるから,調べてみます」

 

 千雪「カロック,アカリの仕事の邪魔しちゃだめよ。この家は,防音処理なんてないんだから,ベッドがキシム音がすごいのよ。ひとり身のことを少し考えてよね」

 カロック「千雪が望むなら,いつでもいいぜ。でも,ミイラにしてくれるなよ」

 千雪「そんなことしたら,背後からアカリにナイフで殺されてしまうわ,,,冗談は以上よ。解散!」


 

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