第5話アカリ登場
ー 天翔屋敷 ー
アカリの住む屋敷は,天翔屋敷と呼ばれている。
会議室では,『マサ』と名付けられたカロックが,月本語の講師と会話練習をしていた。
講師「マサさん,かなり月本語がわかるようになりましたね。たいしたものです」
マサ「もう3ヶ月近くになりますから。日常会話は,ほぼ不自由しなくなりました。これも,美人先生のおかげです」
講師「うれしいこと言ってくれるわね。どう,アカリ様を出迎えるまで1時間あるわ。ちょっと,散歩でもしながら会話練習しませんか?」
マサ「喜んで」
女性講師は多麻里といった。多麻里は,マサに惚れていた。マサは,ハンサムで礼儀正しくて,なんか,とても頼りがいのある男性に思えた。
屋敷内の散歩道を歩きながら,話の内容は,アカリの話題になった。
多麻里「アカリさんが,歩けなくなってから,もう1ヶ月半も経ちますね。まだ原因がわからないのでしょうか?」
マサ「車椅子で送り迎えをするときに,執事の方と話をしたところでは,原因が不明のようです。医学的にはどこも異常はないそうです。何か,呪いかもしれないとのことで,高名な解呪師を呼ぶそうです」
多麻里「解呪師?そんな専門家がいるのですか?聞いたことありません」
マサ「私もよく知りません」
マサは,自分の能力を秘密にしていた。魔界出身であることも内緒だった。別に考えがあっての行動ではない。いつなんどき,千雪の元に戻らないとも限らないめ,自分の素性は隠すほうがいいと決めた。その意味では,千雪に忠実な奴隷といえよう。
アッ!!
多麻里が足を滑られて地面に倒れた。多麻里は,てっきり,マサが慌てて助けに来るものと思っていた。
だが,マサは,まったく動かなかった。
多麻里は,自分の美貌に自信があった。それに,胸だってCカップとそれなりに大きい。女性としての魅力は十分にあると自負していた。でも,マサは,多麻里を助けることはしなかった。
多麻里「マサさん,こんな時,男性は女性を助けるものですよ」
マサ「そうなのですか?ごめんなさい。私の常識では,むやみに男性であれ女性であれ,近いづいてはならなかったものですから。これからは,ちょっと改めたいと思います」
多麻里「今からでも,遅くはありませんよ」
マサは,多麻里に近づいて,彼女を支えて,起き上がらせた。
多麻里「そうそう,それでいいのです。その時,男性は,どうするか知っていますか?」
マサ「わかりません」
多麻里「女性をゆっくりと起き上がらせて,その際に,やさしく女性の唇にキスをするものですよ」
さすがに,マサでも多麻里の行動の意味が理解できた。
マサ「申し訳ありません。女性にキスをするのは,自分が妻にすると認めた女性にだけするものと決めておりましたので,,,」
多麻里「・・・・,そ,そうなのですね,,,」
マサ「そろそろ,アカリお嬢様を迎える時間です。ここで失礼します」
マサは,多麻里に軽く頭を下げて,その場から去った。
多麻里は,恥をかかされたと感じて,地面の砂を握りしめた。
その一部始終を見ていた庭師が多麻里に近づいてきた。
庭師「へへへ,先生,振られてしまいましたね。しかし,先生みたいなべっぴんさんを振るなんて,信じられませんね。どうです?あのマサにひと泡ふかせてあげましょうか?いまなら,お安くしてあげますよ」
多麻里「一泡? 二泡くらいにして。20万円でどう?」
庭師「それなら,野郎5人くらい雇えますわ。いいでしょう。早速,明日にでも対応しましょう」
多麻里「ちゃんと,ビデオは撮っておくのよ」
庭師「わかってますよ。へへへ」
ーーーーー
翌日の夕方
車椅子に乗ったアカリお嬢様を乗せた車は,帰路についた。しばらく走ると,一人の男が,急に道路から飛び出した。
キーーー!!(急ブレーキの音)
ドーーン!!(男と車がぶつかった音)
最近の高級車は,人とぶつかっても,相手への衝撃を和らげる機能がある。その分,フロント部分は,よけいに凹んでしまうのだが。
今回の衝突も,それなりに大きな音はしたのだが,ぶつかった人への損傷は,さほど大きなものではなかった。
運転手は,相手の怪我を気遣うことなく,急に飛び出してきた若者に罵倒を浴びせた。
運転手「こらーー!!急に飛び出しやがって!!当たり屋か!!その手には乗らんぞ!!」
ぶつかった若者には仲間がいた。4名が野球のバットを持っていた。ぶつかった若者は,打撲や外傷がないかのように起き上がり,携帯のカメラを起動して録画を始めた。
若者A「おっさんよ。仲間をぶつけといて,その言い草はないだろう。おい,野郎ども,運転手と助手席のやつを引っ張り出せ!!」
助手席のマサは冷静だった。
マサ「運転手さん,ここは,私が時間を稼ぎます。すぐに警察に連絡してください」
車椅子のアカリは心配そうな顔をしてマサに言葉をかけた。
アカリ「マサ。あなた,喧嘩できるの?無理はやめなさい」
マサ「お嬢様,大丈夫です。ご心配なく」
マサは黒のサングラスをしていた。車から降りたマサは,サングラスを外して,黒の上着を脱いでネクタイも外した。
マサは,魔法士であって剣士ではない。だが,衛兵隊の隊長である以上,一通りの体術は心得ている。剣士のように加速は使えないが,数秒だが,魔法によって2倍速までは可能だ。
果たして,月本国の若者4名に対して,マサはどの程度まで対処できるのか?マサもわからない。魔法を使わない限り,体術を披露しても問題ないとの判断だ。最悪,最低限の防御結界を少し構築すればいいだけのこと。それなら,肉眼で見ることはできないので,魔法を使ったこともバレないと思った。
若者A「こいつだ。全力でやっつけていい。やれ!」
若者B「よし,俺からいく」
若者Bは,マサに近づいて,全力でバットを斜め上方から降り折りした。
シューー!!
その速度は,確かに速いといえば速いのだが,マサは余裕で躱すことができた。そして,手のひらを手刀の形にして,若者Bの後頭部を強く打った。
ドサッ!!
若者Bは,その場で倒れた。
若者A「2人ががりで行け!!」
若者CとDは,マサの前後に陣取った。若者Cはマサの横っ腹に,Dはマサの膝を狙って,思い入りバットを同時に振った。
シュー!!シュー!!
だが,それらは空を切っただけだった。マサは,足を縮めてジャンプして,左足を若者Cの頭部にヒットさせて,右足を若者Dの頭部にヒットさせて気絶させた。
それを見た若者Aは,勝てないと判断した。
若者A「どうも,俺たちでは勝てないようだ。今回の件は,無かったことにしてやる。さっさと車に乗って帰れ」
マサ「それが賢明だと思う」
マサは車に戻ったと同時に,運転手が車を発車させて,この場を去った。
若者Aは,茂みに隠れていた庭師に声を掛けた。
若者A「庭師さんよ。話が違うじゃねえか。あの男,ただ者じゃねえ。空手ではないが,何かの体術をマスターしている。それも,半端ねえレベルだ。俺は空手3段だが,とてもあの男に勝てる気はしねえ」
庭師「そうか,,,でも,金で動く武道家はいないしな,,,」
若者A「そういえば,最近,木の葉会のある若者が,かなりの実践技を身につけているとの噂を聞いたことがある。なんでも,空手6段の師範代を一撃で倒したらしい。そいつなら,金で動くはずだ。だけど,少なくとも100万円は用意する必要があるだろう」
庭師「100万円か,,,,ちょっと,話が大きくなってしまったな。それでも,プライドの高い多麻里さんのことだ。多分,同意するに違いない。あとで,戦闘の動画を送ってくれ」
庭師は,多麻里を説得する方法を考えながら,天翔屋敷に戻った。
ー アカリを乗せた車の中 ー
アカリ「マサ,お前,何か武道を習っていたの?」
マサ「たまたま,護身用に体術を修めていただけです。たいしたことではありません。それに,相手が弱すぎました」
アカリ「弱すぎたって言っても,相手は2人がかりでバットも持っていたのよ。それを平気な顔して倒すのだもの,,,ほんと,びっくりだわ」
マサ「お嬢様,これで,少しは私が受けた恩を返すことができましたかね?」
アカリ「ふふふ,そうね。まだまだ足りないわ。この動かない足をマサが治してくれたら,恩を返したことにしてあげましょう」
マサ「これから,高名な呪詛を解除できるという解呪師に,その足を見てもらうのでしょう?治るといいですね」
アカリ「期待はしているのだけど,でも,そううまくいくのかしら?」
マサ「その足が治るまでは,私はお嬢様のおそばにおります。恩を返すまでは,おそばに仕えさせていただきます」
アカリ「うれしいこと言うわね。じゃあ,この足が動かないほうがいいわね。マサを私のそばに縛りつけられるから,ふふふ」
マサ「・・・」
ー 天翔屋敷,アカリの部屋 ー
車椅子のアカリが自分の部屋に戻ると同時に,執事が解呪師を連れてきた。解呪師は,まだ,16歳の少女だった。名を竜姫と言った。本名ではなく,仕事で使う名前だ。白色と赤色の巫女が着るような服装をしていた。少し色黒の美人女性だった。
マサは,ほかに女中3名と同じようにアカリの部屋の片隅で待機していた。
執事「お待ちかねの解呪師様をお連れしました。竜姫様です。まだ若いですが,その腕は本物と,非常に高い評価を受けております。では,竜姫様,お見立てをお願い申し上げます」
竜姫「私が竜姫です。よろしくお願います」
アカリ「こちらこそよろしくお願いします」
竜姫は,特殊能力を持っていた。それは,オーラを見ることができる能力だ。それさえ見ることができれば,大抵の状況は推定できた。
アカリの足の部分のオーラは,何かによって挟まれていた。その形状は,魔界でよく使われている呪詛魔法陣によるものだ。
竜姫は,魔界の呪詛魔法陣については,基礎的なことは知っている。ただし,魔力を使うので,その呪詛の有効期間は1週間程度ということも常識だ。しかし,アカリの場合,すでに足が動かなくなってから1ヶ月半が経過した。ちょっとおかしい。
竜姫は,さらにアカリの体全体のオーラをつぶさに観察した。その時,アカリは,部屋の背後に控えるマサのオーラも偶然見てしまった。
竜姫は,ハッとした。マサのオーラは,魔界の人間のものだった。それも,かなりレベルの高い魔法を扱えるもののオーラだ。
竜姫は,一瞬,背筋に悪寒が走った。
竜姫「お嬢様,大変,失礼ですが,後ろに控えている男性は,いつからここにいらっしゃるのですか?」
アカリ「え?マサが,私の足と何か関係があるのですか?」
竜姫「いえいえ,そうではありません。何か,特別なパワーを感じたので,ついつい尋ねたまでです」
アカリ「マサは,3ヶ月前から私に仕えるようになりました」
竜姫「そうですか,,,すいません。余計なことを聞いて。では,診察を続けます」
竜姫は,アカリのブレスレットに目が移った。
竜妃「お嬢様,そのブレスレットは,いつからしているのですか?」
アカリ「1ヶ月半くらいからよ,,,アッ,,,足が動かなくなったのと同じ時期だわ」
竜姫「そのブレスレットを外してもらえますか?」
アカリ「え?でも,これ,はずしたくないわ。これをしていると,すごく気持ちがいいのよ」
竜姫「そうですか。では,腕を机の上に置いて,私にブレスレットがよく見えるようにしてください」
アカリ「それならいいわ」
アカリは,言われた通り,ブレスレットをした手を机の上に置いた。
竜姫は,そのブレスレットを,オーラが見える目でつぶさに調査した。すると,非可視化魔法陣による魔法陣が2つ植え付けられているのが分かった。そのうちのひとつは,魔界で使われている呪詛魔法陣だ。もう一つのほうは,よくわからないが,多分,気分を幸せにするような作用を持つものだろうと予測した。
だが,一番問題なのは,この魔法陣は魔法で動いていないことだ。魔法でない以上,解除をすることはできない。
竜妃「お嬢様,原因はこのブレスレットです。しかも大変特殊な呪詛で組まれています。残念ですが,この呪詛を構築した本人以外,解除することは無理だと思われます。それに,,,その呪詛を構築した人は,私の直感で申し訳ないのですが,そこの男性と何らかの関係があるのではないかと感じています」
アカリ「え?マサと関係のある人??なんで,そんなことが分かるの?」
竜妃「直感ですので,説明はできません。当たらないかもしれません。とにかく,そのブレスレットを入手したルートを追ってください。犯人に辿り着くかもしれません」
アカリ「執事,私は,女中の亞里砂からこのブレスレットをもらったのよ。あとは,亞里砂から詳しく聞いてちょうだい」
執事「了解しました。すぐに対応させていただきます」
竜姫「では,私はもう用なしね。これで失礼しまします」
アカリ「ほんとうに,ありがとう。やっと,解決の方向性が見えたわ。執事,竜姫様を車で,最寄り駅まで見送ってあげて」
執事「了解しました。では,竜姫様,どうぞこちらに。わたくしどもの車で送らせていただきます」
竜姫「ありがとうございます。よろしくお願いするわ」
執事は,竜姫を連れてこの部屋から去った。
アカリは,少し怒った顔をしてマサに声をかけた。
アカリ「マサ!今の竜姫様の言葉に思い当たることは?」
マサ「・・・,はい,心当たりがないといえば,嘘になります。ですが,私もその者がどこにいるのか知りません。今は,ブレスレットの入手ルートの解明が先決だと思います」
アカリ「そう,心当たりがあるの? いったい,お前は,どこから来たの?」
マサ「お嬢様,落ち着いてください。私は,決してお嬢様を裏切るようなことはしません。信じてください。ですが,今は,まだ話す時ではありません。もう少々お待ちください。時がくれば,お嬢様が納得のいくまで,説明させていただきます」
アカリ「そう? わかったわ。マサを残して,他のものは出て行ってちょうだい」
女中たちは「失礼します」と返事して,アカリの部屋から出て行った。
ーーー
アカリの部屋には,アカリとマサしかいなくなった。
アカリ「パジャマに着替えさせてちょうだい」
アカリがマサにこのような命令をするのは,何も今日が初めてではない。最初は,1週間に1度程度だったが,いまでは,ほぼ毎日のように着替えを手伝わせた。着替えをするときは,アカリは全裸になる。自分の裸体をマサに見せて,マサの反応を見るのが,最近のアカリの少ない楽しみの一つになっていた。
アカリ「私の裸を見ても,顔色一つ変えないのね。私の胸が小さいから興味ないの?」
マサ「お嬢様の裸体は,とてもきれいですよ。胸は小さいと思いますが,でも,とてもきれいな形をしていらっしゃいます。私は,大きいほうよりも,お嬢様のような胸が好きです。私が護衛の職でなかっら,すぐにでも,お嬢様を抱くと思います」
アカリの胸はBカップだった。それなりにきれいな胸をしていた。
アカリ「じゃ,抱いてちょうだい。でも,最後まではだめよ。子供はまだ生みたくないから」
マサ「私は護衛です。そのようなことはできません」
アカリ「じゃあ,なんならいいの?恋人?愛人?家庭教師?」
マサ「お嬢様,ご冗談はおやめください。お嬢様は,この国の有数な財閥令嬢でございます。いずれは,どこかの財閥のお坊ちゃまと結婚する身でございます。とても,そのようなことはできません」
アカリ「ふん,何がお坊ちゃまよ,,,マサ,私を抱かなかったら,首よ。すぐに屋敷から出ていってちょうだい」
マサ「お嬢様,私も男です。抱く以上は,最後までいきたいと思います」
アカリ「避妊具はここにはないわね,,,いいわ。子供が生まれてもいいわ。決めた。マサ,最後までしていいわよ」
マサ「お嬢様は,犬猫ではないのですから,そんな軽々しいことはしないでください」
アカリ「マサ,最後までセックスしてちょうだい。足が動かなくても,感覚はあるのよ。抱かないと追放します」
マサ「追放されると私も困ります。わかりました。でも,妊娠しても知りませんよ」
アカリ「どうせ,勘当されるだけです。無一文になって,この屋敷から追放されるだけです。その時は,もう,マサは月本語が堪能になっている頃だし,ある程度は稼げるようになっているでしょう?私を養うくらいはできるでしょう?」
マサ「・・・・,お嬢様が妊娠しても,私は,お嬢様と結婚することはできません。それでもいいのですか?それに,一生お嬢様のそばにいることもできません。それでもいいのですか?」
アカリ「もう,先のことはいいのよ!!抱きなさい!!これから,毎日,私を抱くのよ!!」
マサ「・・・,わかりました。仰せのままに・・・」
ーーーー
数日後,会議室にて
マサは,多麻里と月本語の会話練習をしていた。多麻里は庭師からひと泡吹かせてやるという事の顛末を聞かされて逡巡していた。100万円ものお金を出してまでマサを痛めつける必要性を感じなかった。何か,別の方法がないかと思案中だった。
多麻里「それで,お嬢様に呪詛をした犯人は見つかったの?」
マサは一枚の写真を出した。
マサ「ええ,わかりました。この写真の人物です。コンビニで宅急便を出しているときの写真です。防犯カメラにしっかりと映っていました。犯人は別に顔を隠すようなことはしていなかったようです」
多麻里は,その写真を手にとって見た。ごく普通の男のようだった。
多麻里「この人物の素性は判明したの?」
マサ「ちょっと,厄介な人物のようです。木の葉会の東都支部長代理,ハルト。空席になっている東都支部長の席に一番近い人物です。めっぽう腕っ節がたつようです。噂では,拳銃で打たれても,その皮膚を貫通できないとの噂まであります。中には,人間ではないとのうわさまで出る始末です」
多麻里の目が光った。労せずして,ハルトとマサが衝突することになるのだ。ならば,ハルトに接触して,この情報を提供するだけでも充分ではないか?!
多麻里「もし,この人物と衝突したら,マサは勝てると思う?」
マサ「いえいえ,とても勝てる気はしません。私の体術なんて素人に気が生えたようなものですから」
多麻里は,その言葉がうそだと知っている。庭師からマサとバットを持った若者との格闘状況を動画で見ていたからだ。庭師の説明では,実践的格闘レベルでは超一流の部類に入るとのことだった。
多麻里「これからどうする予定なの?」
マサ「さあ??執事が決めることですから。でも,誰かが彼と接触しないといけないでしょうね。私でしたら,若いボインの女性に接触させるでしょうね。それで万事解決でしょう。ふふふ」
多麻里「・・・・」
ーーー
マサとの授業が終わった後,多麻里は庭師と接触した。そして,今,入手した情報を庭師に提供した。
庭師「なるほど,,,これはおもしろい,,,後は,私に任せてください。手数料として,5万円いただけませんか? なんとか,マサとあのハルトをぶつけてみますわ」
多麻里はその金額に同意した。
ー アカリの部屋 ー
夜は,マサはアカリのベッドで寝るようになった。両親から問い詰められると,マサがかなりの強者であることがわかったので,アカリの護衛として,就寝中も一緒にいるようしたと説明した。また,男女の関係ではないこともはっきりと明言した。
アカリの両親は,その言葉に疑問を持ちつつも,アカリの言葉を信じることにした。万一のことがあれば,マサを抹殺する手段をとるだけのことだ。
アカリの両親も闇の組織には,ある程度関係を持っているので,そのような荒仕事には,それなりに精通していた。
アカリは,完全にマサの虜になった。かつ,性の快楽に目覚めてしまったので,一日中,マサのことで頭がいっぱいだった。足が動かないということもあり,学校に行くのを止めて,ネット授業に切り替えた。これも,日中からマサとの逢瀬を楽しむためだ。
アカリの体が少し変化してきた。胸が少し大きく変化した。
アカリ「マサ,私の胸が大きくなったようだけど,そう思う?」
マサ「お嬢様,確かに大きくなったようです。お嬢様の希望の大きさに近くなりましたね」
アカリ「やっとマサの理想の体型に近づけるわね。マサの理想って,Fカップだったかしら? 今はまだCカップくらいだから,マサ,もっともっと,体の脂肪を胸の方に移動させるマッサージをしてちょうだい」
マサ「ですが,もう移動させるような脂肪はないと思いますよ」
アカリ「じゃあ,いっぱい甘いもの食べるわ。マサの理想の体になってあげる。マサ,一生,私のそばにいなさいよ」
マサ「最近,勉強した言葉で,『禍福は糾(あざな)える縄の如し』というものがあります。人生,いいこともあれば悪いこともあります。お嬢様との蜜月もいずれは終わる日が来ます。それも,そんなに遠い日ではないと思います」
アカリ「昨日,お母様には,マサとの肉体関係のこと,打ち明けたわ。もう,妊娠していることも説明したの。お母様は,真っ赤な顔をしていたわ。だって,私,一人っ子でしょう。だから,私を捨てるなら,捨てる準備を今からしてもらうと思って」
マサ「そうですか,,,」
アカリ「ところで,犯人のハルトとの接触はどうなったの?」
マサ「・・・,それが,,,執事が言うには,私が交渉に出でくるのが条件だということです。どうしてハルトは,私のことを知ったのでしょう?わけがわかりません」
アカリ「何それ? どうして?」
マサ「どうしてそうなったのかわかりません。1週間後には,そのハルトと交渉に行かなくてはなりません。打ち合わせ場所は追って連絡するそうです」
アカリ「そうなの?じゃあ,1週間後には,私の足が治るわけね?マサ,じゃあ,しっかりと交渉してきてちょうだい。でも,マサ,うれしい!やっと,足が動けるようになるのね。
マサ,私を抱いて。私をイカしてちょうだい。もっと幸せな気持ち,与えてちょうだい」
マサ「かしこまりました」
ーーーーー
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